旅行業登録

旅行業登録とは?旅行業の登録が必要になる場合と不要な場合

旅行業法では、旅行業とは以下のように定義されています。

第2条 この法律で「旅行業」とは、報酬を得て、次に掲げる行為を行う事業(専ら運送サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送サービスの提供について、代理して契約を締結する行為を行うものを除く。)をいう。

したがって、次の3つの要件の全てが該当する場合、その行為は旅行業であるということになります。


①報酬を得ている
②次に掲げる行為(法第2条第1項に掲げる行為)を行う
③事業として行う


この3つの要件について、詳しく説明します。

①報酬を得ている

「報酬」について、旅行業法施行要領の中では、以下のように記載されています。

  1. 事業者が法第2条第1項各号に掲げる行為を行うことによって、経済的収入を得ていれば報酬となる。

  2. 旅行者からの金員の徴収がない場合や、行為と収入との間には直接的な対価関係がない場合でも、以下に示すような相当の関係があれば、報酬を得ていると認められる。
    a. 旅行者の依頼により無料で宿を手配したが、後にこれによる割戻し(いわゆるキックバック等)を旅館から受けている場合
    b. 留学あっせん事業において、留学あっせんと運送又は宿泊のサービスに係る対価を包括して徴収している等、旅行業以外のサービスに係る対価を支払う契約の相手方に対し、不可分一体のものとして運送又は宿泊のサービスを手配している場合

  3. 企画旅行のように包括料金で取引されるもので、収支の内訳が明確でなく、法第2条第1項各号に掲げる行為を行うことにより得た経済的収入によって支出を償うことができていないことが明らかでない場合は、旅行業務に関し取引をする者から得た報酬により利益が出ているものとみなされる。

「報酬を得ている」とは?

「報酬を得ている」とは、主に金銭その他の経済的な利益を受領することを指します。
報酬という言葉には利益や収益が伴うイメージが一般的にありますが、必ずしも利益が出ている場合に限られるわけではありません。
業務を遂行した結果として何らかの金銭や経済的な利益を受け取れば、それは報酬を得ているとみなされます。したがって、金銭を受け取る行為そのものが報酬の受領に該当するのです。

具体例:利益を含まない場合でも報酬とみなされるケース

例えば、ある業務を行う際に依頼者から費用を受領した場合、その金額に利益が含まれていなくても、業務を遂行して金銭を得たという事実から、受け取った金銭は報酬にあたります。
この場合、業務の実施に直接関連して支出した費用が報酬の中に含まれているかどうか、利益が発生しているかどうかにかかわらず、金銭を受け取った時点で報酬を得ているとされます。
業務に対する対価として金銭を受け取った以上、その金銭が単なる費用回収であっても、報酬を得ていると認められるのです。

間接的な形で報酬を得るケース

直接的に依頼者から金銭を受け取るだけではなく、間接的な形でも報酬を得ているとみなされる場合があります。
例えば、第三者を紹介した結果、その第三者から紹介料やキックバックを受け取った場合も、報酬を得ていると判断されます。
この場合、直接的に業務を遂行した依頼者からではなく、運送事業者や宿泊事業者といった第三者から金銭を受け取ることになりますが、紹介という行為が業務に該当し、その対価として金銭を受領している以上、これは報酬として扱われます。
金銭の流れが業務の遂行と関連している場合には、対価関係が間接的であっても報酬とみなされるのが一般的です。

包括的な金銭の受領について

受け取る金銭が包括的なものの場合、その中に業務に該当する費用が含まれているかどうかが明確でない場合も報酬を得ていると見なされることがあります。
例えば、旅行業において旅行者から支払われる金額の中に、旅行業務に関連する費用が明確に区別されていない場合、その金額全体が報酬として扱われる可能性があります。
この場合も、金額の一部が業務に対する対価として受け取られているため、報酬の一部として認定されることがあるのです。

②法第2条第1項に掲げる行為を行う

旅行業法第2条第1項には、旅行業に該当する行為として、以下の9つの行為が挙げられています。

  1. 旅行の目的地及び日程、旅行者が提供を受けることができる運送又は宿泊のサービス(以下「運送等サービス」という。)の内容並びに旅行者が支払うべき対価に関する事項を定めた旅行に関する計画を、旅行者の募集のためにあらかじめ、又は旅行者からの依頼により作成するとともに、当該計画に定める運送等サービスを旅行者に確実に提供するために必要と見込まれる運送等サービスの提供に係る契約を、自己の計算において、運送等サービスを提供する者との間で締結する行為

  2. 前号に掲げる行為に付随して、運送及び宿泊のサービス以外の旅行に関するサービス(以下「運送等関連サービス」という。)を旅行者に確実に提供するために必要と見込まれる運送等関連サービスの提供に係る契約を、自己の計算において、運送等関連サービスを提供する者との間で締結する行為

  3. 旅行者のため、運送等サービスの提供を受けることについて、代理して契約を締結し、媒介をし、又は取次ぎをする行為

  4. 運送等サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送等サービスの提供について、代理して契約を締結し、又は媒介をする行為

  5. 他人の経営する運送機関又は宿泊施設を利用して、旅行者に対して運送等サービスを提供する行為

  6. 前三号に掲げる行為に付随して、旅行者のため、運送等関連サービスの提供を受けることについて、代理して契約を締結し、媒介をし、又は取次ぎをする行為

  7. 第三号から第五号までに掲げる行為に付随して、運送等関連サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送等関連サービスの提供について、代理して契約を締結し、又は媒介をする行為

  8. 第一号及び第三号から第五号までに掲げる行為に付随して、旅行者の案内、旅券の受給のための行政庁等に対する手続の代行その他旅行者の便宜となるサービスを提供する行為

  9. 旅行に関する相談に応ずる行為

つまり、運送や宿泊サービスを自ら契約して旅行者に提供する場合や、旅行者のために運送・宿泊サービスの仲介や取次ぎを行う場合は、旅行業に該当するということになります。

運送や宿泊が含まれているかどうかが、判断の基準の一つとなります。

③事業として行う

「事業として行う」とは、特定の基準を満たし、反復的かつ継続的に利益を目的として行う活動を指します。
旅行業法では、事業として行われるかどうかは「営利性」「募集の不特定多数性」「反復継続性」という3つの要件に基づいて総合的に判断されます。
これらの要件がすべて揃っていれば事業と認められやすく、1つまたは2つの要件のみでも事例によっては事業として行っていると認められる可能性があります。

  1. 営利性
    営利性とは、旅行業務を行うことで利益が発生することを指します。
    直接的に旅行業務で利益を得ていなくても、付随するサービスで利益が生じている場合、全体として営利性があると判断されることがあります。
    一方で、例えば旅行業務が無料で提供され、利益が発生していない場合には、営利性が低いとみなされる可能性があります。

  2. 募集の不特定多数性
    募集の不特定多数性とは、サービスの募集対象が広範な消費者に向けられているかどうかを判断する基準です。
    例えば、特定の社員向けの社員旅行では、不特定多数性は低いと判断されます。
    しかし、一般の消費者や多様な業界に向けて行われる募集は、不特定多数性が高いとみなされます。

  3. 反復継続性
    反復継続性は、同様の活動が一度きりではなく、継続して行われる意思があることを意味します。
    例えば、旅行業務の宣伝を継続的に行っている場合や、看板を掲げて営業を行っている場合は、反復継続性が認められることがあります。
    この意思が確認されれば、一度だけの活動でも将来的に継続されると見なされる可能性があります。

これら3つの要件が揃っているかどうかを総合的に勘案し、事業として行っているかが判断されます。

以下のような場合には、報酬を得ていても旅行業登録が不要である可能性が高いです。

  • 旅行者に同行する添乗員を派遣する事業で、旅行者との直接取引がない場合。
  • イベントチケットの手配やレストラン予約の手配のみを行う場合。
  • 日帰りの現地集合・現地解散ツアーで、道中の運送サービスの手配を行わない場合。
  • 運送事業者や宿泊事業者が自社の業務範囲内で行う行為。
  • バスの回数券販売所や代理発券業務のみを行う場合。

現在取り扱っているサービスが、日帰りで徒歩を主体とした移動を伴うものであれば、旅行業登録は不要である可能性が高いですし、宿泊を伴うサービスや移動手段の手配が必要な場合には、旅行業登録が必要である可能性が高いです。

第3条 旅行業又は旅行業者代理業を営もうとする者は、観光庁長官の行う登録を受けなければならない。

以上のように、旅行業法においては、旅行業を営むためには旅行業者として登録を受けなければならないとされています。
もし、登録を受けないまま旅行業の営業活動を行うと、無登録営業として法律によって罰せられます。


旅行業登録の申請を行う場合、第1種旅行業であれば観光庁、第2種旅行業、第3種旅行業なら登記上の本店に限らず、旅行業を行う主たる営業所を管轄する各都道府県に対して申請を行います。


また、登録の有効期間は、登録の日から5年となっており、登録の有効期間の満了後も引き続いて旅行業を営もうとするときは、有効期限の2ヶ月前までに更新申請をする必要があります。


加えて、録事項に変更があったときは、その日から30日以内に届け出なければなりません。

旅行業の種類

旅行業の業務範囲要件
企画旅行契約手配旅行契約旅行相談契約渡航手続代行契約他社実施の代理締結営業保証金基準資産額
募集型
企画旅行契約(海外)
募集型
企画旅行契約(国内)
受注型
企画旅行契約
募集型企画旅行契約受注型企画旅行契約手配旅行契約
第1種旅行業××7,000万円3,000万円
第2種旅行業×××1,100万円700万円
第3種旅行業×
※1
××300万円300万円
地域
限定
×
※1

※1

※1
××××100万円100万円
旅行業者代理業
※2

※2

※2

※2
×

××なしなし

※1:国内の旅行のうち、当該事業者の営業所が存する市町村及び隣接する市町村に限定されます。

※2:範囲は所属する旅行会社業務に限定されます。

上記の表の用語は以下のように定義されます。

企画旅行旅行会社が旅行の目的地・日程・運送・宿泊などの旅行計画を立て、自らの計算において運送機関等のサービス提供者と契約を締結して旅行商品を作成し、販売する旅行のことをいいます。パッケージツアーがこれに該当します。
募集型企画旅行旅行会社があらかじめ旅行計画を作成する企画旅行をいいます。旅行業登録では、海外旅行の取扱いと国内旅行の取扱いで区分されます。
受注型企画旅行旅行者の依頼により旅行会社が旅行計画を作成する企画旅行をいいます。旅行業登録では、海外旅行の取扱いと国内旅行の取扱いで区分されていません。
手配旅行契約旅行会社が旅行者のために運送・宿泊機関等などの契約を手配し、販売する旅行のことをいいます。乗車券、航空券、宿泊券等の予約・手配・販売などがこれに該当します。
旅行相談旅行者の委託により、次に掲げる業務を行うことを引き受ける契約をいいます。
①旅行者が旅行の計画を作成するために必要な助言
②旅行の計画の作成
③旅行に必要な経費の見積もり
④旅行地及び運送・宿泊機関等に関する情報提供
⑤その他旅行に必要な助言及び情報提供
渡航手続代行旅行者の委託により、次に掲げる業務を行うことを引き受ける契約をいいます。
①旅券、査証、再入国許可及び各種証明書の取得に関する手続
②出入国手続書類の作成
③その他前各号に関連する業務

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