防火防災

【消防法令】違反するとどうなる?事例をご紹介

更新日:2025年2月26日


事務所、飲食店、宿泊施設、共同住宅、老人ホーム、学校、倉庫等、ほぼすべての建物を使用・管理する場合には、消防法が関わってきます。

消防法に適した使用・管理等を行わない場合、違反となり是正を求められます。

この記事では、違反から是正までの事例をご紹介します。

コンサルタント 塚本 純平

●休止中の建物を改装して物品販売店舗の営業を開始したことから防火管理者の選任指導を行ったが従わなかったため、違反処理をした平成16(2004)年の事例です(命令・4項・特定一階段)。

① 違反処理の概要

(1)違反覚知の端緒

平成15年9月5日、休止中の建物に改装して貴金属店が入居し、新たに自動火災報知設備が設置されたことから設置検査を兼ねて立入検査を実施した。

なお、この際、防火管理者が選任されていなかったため、防火管理者未選任及び消防計画未作成・未届について立入検査結果通知書を交付して指導した。

(2)違反処理の経過

ア 指導書の郵送(1回目)

立入検査結果通知書の指摘内容(防火管理者未選任及び消防計画未作成・未届)に対し、改修(計画)報告書が提出されないため、平成15年11月14日に電話で再指導したが提出されなかった。
そのため、平成16年1月23日付けで関係者あてに指導書を郵送した。

イ 立入検査結果通知書(2回目)

指導書に対する改修(計画)報告書も提出されず、同年4月19日に再指導したがその後も提出されず、指摘事項も未是正のままであるため、警告へ移行する前に再度立入検査を平成16年5月11日に実施した。
その際に、3階に設置すべき避難器具(はしご)が1階の倉庫内に移動されていたため、避難器具の管理不適を追加し、再度立入検査結果通知書を交付した。

ウ 警告書の交付

防火管理者未選任と消防計画未作成・未届について警告書を交付するため、平成16年5月26日に来署するよう「来署要請書」を経営者に送付したが来署しなかったため、警告書を配達証明にて郵送した(履行期限は同年8月31日)。

エ 指導書の交付(2回目)

平成16年5月11日の立入検査時に指摘した避難器具(避難はしご)の管理不適について、同年9月21日に指導書を郵送した。

オ 立入検査結果通知書(3回目)

度重なる立入検査結果通知書、指導書及び警告書の交付等による指導にも関わらず、指摘事項が何一つ改善されないことから、命令移行を視野に入れて平成16年11月26日に立入検査を実施した。
入居から1年以上経過したため、新たに防火対象物定期点検及び消防用設備等の点検未実施・未報告を指摘事項に加え、立入検査結果通知書を交付した。

カ 命令書の交付及び公示・公表

平成16年12月6日、消防法第8条第3項の規定に基づき、平成16年12月16日までに防火管理者を選任するよう命令書を交付するとともに、当該対象物入口に標識を設置し、公示・公表した。

(3)命令の移行理由

ア 当該対象物は立入検査を実施するごとに、指摘事項が増える一方で、関係者に是正の意思がみられなかった。

イ 避難器具(避難はしご)の管理不適を指導したが、見栄えが悪いとの理由で、本来3階に設置すべき避難はしごを1階の倉庫にしまい込む等、防火管理意識が非常に希薄であった。

ウ 当該対象物は貴金属販売店舗で、12月はクリスマスシーズンと年末商戦を控え1年中で一番来客の多い時期であった。このような時期に重大な消防法違反を見逃す訳にはいかないとの理由で改善を迫り、命令内容を記載した標識を店舗入口に設置することにより、関係者に是正を強く促した。

エ あらかじめ防火管理講習の受講枠を確保しておき、防火管理講習開催の一週間前に命令書を交付し、この講習を受講させることを前提に履行期限を設定した。

② 違反処理の完結

(1) 命令書を交付した日に、店長が平成16年12月13日、14日の両日に開催する防火管理講習の受講を申し込み、講習終了後の12月14日に防火管理者選任届及び消防計画書が提出され、履行期限内に命令事項は改善された。
 
(2) 防火対象物定期点検及び消防用設備等の点検結果は翌年の1月下旬に報告され、避難器具の管理不適も含め、違反事項は全て改善された。

まとめ:命令違反で罰則を受けないために…

事務所を引っ越す場合、テナント入居のタイミング、飲食店の開業など、既存の建物から別の建物への移転や建物を使用した新規事業の開業等の場合は、防火管理者の選任が必要になるケースがあります。

命令違反になると、罰金・拘留・懲役等の罰則が適用される恐れもあります。

不安のある方は、ぜひ一度弊社へご相談ください。