内部通報制度とは?導入のポイントを徹底解説!
企業内での不正や違法行為を早期に発見し、適切に対処することは、企業の健全な運営には欠かせない課題です。
「通報」と聞くだけで少し怖いなと思う方もいるかもしれませんが、内部通報制度を適切に活用することで、企業運営のリスクを減らすことができます。
この記事では、内部通報制度の基本から導入のメリット・デメリット、具体的な導入ステップ、実際の事例、継続運用のポイントまで、専門家の視点から解説します。
内部通報制度の基本
内部通報制度の目的は、企業や組織において発生している不正行為や法令違反を、従業員などが匿名または実名で相談・通報できる仕組みを整えることです。
この制度は、企業のコンプライアンス強化やリスク管理において重要な役割を果たします。
企業が自社の不祥事を早期に発見し、適切に対応するための手段となるだけでなく、従業員からの信頼感・安心感を高めることにもつながります。
なお、内部通報制度では、通報者を保護するための法的な枠組み(公益通報者保護法)も整備されており、企業はこれに基づいて制度を設計・運用することが求められます。
公益通報者保護法
公益通報者保護法は、内部通報を行った従業員が不利益を受けないよう保護するための法律です。
この法律により、通報者は解雇や降格などの報復措置から守られることが保障されています
公益通報者保護法の導入により、従業員が安心して不正行為を報告できる環境を整備することができます。
2022年6月には公益通報者保護法の改正があり、従業員数301人以上の企業や組織では、内部通報制度の導入が義務化されました(従業員数300人以下は努力義務)。
内部告発と内部通報の違い
ちなみに、内部告発とは、企業の「外部」(マスコミ等)に対して、従業員などが違反行為を通報することを指します。
一方、内部通報では企業の「内部」での対応に留まり、社外に隠蔽等の問題行為が流出しません。
通報と聞くと、告げ口をするイメージであまり、ポジティブな印象はないかもしれませんが、アメリカではホイッスルブロワーと言われ、笛を吹いて注意喚起をしてくれる人といった、企業にとっても社員にとっても、ポジティブなイメージです。
違反行為、特に法令違反などの内部告発が起きた場合、企業ダメージは膨大なものになります。
ひとたび内部告発が起きると、社員のモチベーションの減少、ブランドのイメージダウンにつながり、企業のダメージ回復に時間を費やすことになります。
そんな危険が組織内には、たくさん身を潜めているかもしれません。
「会社に行ってみたら、会社の前にはマスコミだらけに!!」
このようなことにならないよう、内部通報制度の整備の効果を知り、活用していきましょう。
内部通報制度のメリットとデメリット
内部通報制度のメリットについて、いくつか簡単に触れましたが、ここで内部通報制度のメリット・デメリットを整理してご紹介します。
制度導入のメリット
1.不祥事の予防
内部通報制度の導入でもっとも効果が高いといわれているのは、不祥事の予防です。
内部通報制度を導入すると、企業は内部通報を通じて早期に不正行為を発見し、迅速に対応することができます。
また、「誰かがこのハラスメントを会社に通報するかもしれない」と考える社員が増え、不正行為等の抑制につながります。
2.不正行為の早期発見
不正行為が起こったとしても、その行為をすぐに会社に伝えることができれば、内部告発が起こる前に早期に調査を実施し、社内で改善ができます。
また匿名で通報できるだけでなく、通報者保護の仕組みが整備されており、通報後に人事評価などで不利益のある取り扱いを受ける恐れもないため、通報者は報復を恐れずに不正行為を通報することができます。
3.信頼性の獲得
最近は、コンプライアンスを重視している企業や取引先が多く、内部通報制度を導入していることで、社外からの信頼性が高まります。
不正や問題行為に巻き込まれることを懸念し、内部通報制度を整備しているかなども、提携するかしないかの判断材料の一つになっています。
4.社員との関係構築
職場の透明性が向上し、「不正などが未然に防がれている」「早期発見し改善につながっている」ことが分かれば、企業に対する社員の信頼が得られ、企業と社員の間の良好な関係構築につながります。
また、コンプライアンス意識が高まることで、社員の士気向上や企業の健全な運営が期待できます。
上記に挙げた効果以外にも、企業への効果はたくさんあり、社員、チーム一丸となって、いい会社づくりをする第一歩になるかもしれません。
制度導入のデメリット
内部通報制度にはいくつかのデメリットも存在します。
まず、通報内容の真偽を確認するための調査に時間とコストがかかることがあります。
また、匿名通報の場合、具体的な情報が得られにくく、調査が難航することもあります。
さらに、通報制度が悪用され、無実の従業員が不当な疑いをかけられるリスクも考えられます。
制度導入のための具体的なステップ
内部通報制度を導入するためには、まず制度の設計と準備を行います。
次に、内部通報の受付窓口を設置し、担当者を選定して役割分担を明確化します。
その後、通報方法とフローを策定し、内部通報制度運用規程を作成します。
最後に、通報者の保護と不利益取り扱いの禁止を徹底するための体制を整えます。
内部通報制度の設計と準備
内部通報制度を効果的に運用するためには、まず制度の設計と準備が重要です。
具体的には、通報の受付窓口や担当者の選定、通報方法やフローの策定、内部通報制度運用規程の作成が含まれます。
内部通報の受付窓口の設置
内部通報の受付窓口を設置することで、従業員が通報しやすい環境を整えることが重要です。
この窓口は、内部の担当者だけでなく、外部の専門機関や士業(弁護士や行政書士など)に委託することも可能です。
社外窓口を設置することで、制度の公平さに関する従業員の信頼性が高まり、通報への心理的ハードルが下がることが期待されます。
担当者選定と役割分担の明確化
内部通報制度を運用するためには、担当者の選定と役割分担の明確化が不可欠です。
通報の受付から調査、対応までの一連の流れをスムーズに進めるためには、各担当者の役割を明確にし、適切な指示を出すことが重要です。
また、担当者には法律やコンプライアンスに関する専門知識が求められるため、定期的な研修も必要です。
通報方法とフローの策定
内部通報制度を効果的に運用するためには、通報方法とフローの策定が必要です。
具体的には、通報の受付方法(電話、メール、専用ウェブサイトなど)や通報後の調査・対応の流れを明確にすることが重要です。
また、通報者が匿名で通報できるような仕組みを整えることで、通報のハードルを下げることができます。
内部通報制度運用規程の作成
内部通報制度を運用するためには、運用規程(マニュアル)の作成が欠かせません。
この規程には、通報の受付方法、調査・対応の流れ、通報者の保護措置などが含まれます。
運用規程を作成することで、内部通報制度の運用が円滑に進み、適切な対応が可能となります。
通報者の保護(不利益取り扱いの禁止)
通報者の保護と不利益取り扱いの禁止は、内部通報制度の運用において非常に重要な要素です。
公益通報者保護法に基づき、通報者が不利益を受けないようにするための仕組みを整備することが求められます。
具体的には、通報者の匿名性を確保し、報復措置が行われないようにするための監視体制を整えることが重要です。
制度運用の継続と改善
内部通報制度は、一度導入したら終わりではありません。
制度を効果的に運用し続けるためには、定期的な内部調査と対応、フォローアップ、再発防止策の実施が必要です。
また、従業員に対する定期的な研修と周知活動を行い、制度の認知度と理解を深めることが重要です。
法務担当者は、法改正や社内の状況に応じて制度を見直し、常に最新の状態を維持する役割を担います。
実際の内部通報への対応
内部通報を受けた後の調査と対応の流れは、制度運用の要となります。
まず、通報を受けた担当者は速やかに調査を開始し、事実関係を確認します。
この際、調査の独立性と透明性を確保するために、外部の専門家や弁護士を活用することも有効です。
調査結果に基づき、必要に応じて適切な是正措置を講じ、問題を迅速に解決することが求められます。
フォローアップと再発防止策の徹底
調査と対応が完了した後は、フォローアップと再発防止策を徹底することが重要です。
通報者に対しては、調査結果と対応内容を適切にフィードバックし、通報が適切に扱われたことを確認します。
また、再発防止策として、必要な改善措置を講じるとともに、社内規程や手順の見直しを行います。
定期的なモニタリングと評価を通じて、制度の運用状況を確認し、必要に応じて改善を行うことが求められます。
定期的な社員研修と周知活動
内部通報制度を効果的に運用するためには、定期的な研修と周知活動が欠かせません。
従業員に対しては、制度の目的や重要性、通報方法について理解を深めてもらうための研修を実施します。
また、新入社員や異動者にも制度について周知し、常に最新の情報を共有することが重要です。
これにより、全従業員が内部通報制度を適切に活用できるようになります。
法務担当者の役割
法務担当者は、内部通報制度の運用において中心的な役割を果たします。
通報の受付から調査、対応までの一連のプロセスを管理し、法的な観点からのアドバイスを提供します。
また、法改正や規程の見直しが必要な場合には、迅速に対応し、制度の運用をサポートします。
法務担当者の専門知識と経験を活かし、内部通報制度の信頼性と有効性を高めることが求められます。
ガイドラインと認証制度
消費者庁のガイドラインは、内部通報制度の設計や運用に関する具体的な指針を提供しています。
企業はこのガイドラインに基づき、自社の内部通報制度を整備し、適切に運用することが求められます。
また、内部通報制度の認証制度を活用することで、制度の信頼性と透明性を高めることができます。
認証を受けることで、従業員や取引先からの信頼を得るとともに、企業のコンプライアンス体制を強化することができます。
消費者庁のガイドライン
消費者庁は、内部通報制度の運用に関するガイドラインを提供しています。
このガイドラインには、制度設計や運用の具体的な手順、通報者保護の方法などが詳細に記載されています。
内部通報制度の認証制度
内部通報制度の認証制度は、制度の信頼性と透明性を高めるための仕組みです。
認証を受けることで、企業は制度の運用が適切であることを第三者に証明することができます。
認証制度のメリットとデメリット
認証制度のメリットとしては、制度の信頼性向上や外部からの評価が得られる点が挙げられます。
また、認証を取得することで、制度運用の透明性が確保され、従業員からの信頼も高まります。
一方で、認証取得には一定の費用と時間がかかることがデメリットとして考えられます。
まとめ
内部通報制度は、企業が不正行為を早期に発見し、適切に対応するための重要な仕組みです。
本記事では、内部通報制度の基本から導入のメリット・デメリット、具体的な導入ステップ、実際の事例、継続運用のポイントまで、詳しく解説しました。
制度を効果的に運用するためには、適切な制度設計と運用体制の整備が不可欠です。
企業は内部通報制度を導入することで、コンプライアンスを強化し、健全な経営を維持することが期待されます。
この記事を通じて、内部通報制度の導入や運用に関する具体的な手順や注意点を理解いただけたと思います。
内部通報制度の導入・運用は弊社にお任せください!
内部通報制度の導入・運用には専門的な知識と経験が必要です。
サポート行政書士法人では、内部通報制度の導入支援や運用サポートを行っております。
これから新たに内部通報制度を構築する企業向けに、貴社にあった内部通報制度の構築コンサルティング、社内規定や対応マニュアルの作成、内部通報専用窓口の設置等、一連のフローを支援。
専門家である行政書士が、貴社のニーズに合わせた最適な解決策をご提供いたします。
サポート内容
① 貴社にあった内部通報制度診断・コンサルティング
御社の現状(事業内容、組織体制、業務分掌、拠点数、従業員数、社内規定等)を確認・ヒアリングし、御社の実態にあった内部通報制度構築に向けた現状診断コンサルティングを行います。
② 具体的な対応フローの構築
具体的な対応部門・対応フロー・その他制度を機能させる為の対策を決定し、社内規定や対応マニュアルとして、明文化して定める。
③ 内部通報専用窓口の設置支援
上記ステップを通じて決定した内部通報制度に従って、社内内部通報専用窓口を設置します。
例)専用部門の設置、専用の通報フォームの作成、専用メールアドレスの開設、専用電話回線の開設等
➃ 周知徹底策の実施(社内研修開催、社内掲示版への掲載 等)
具体的な対応方法・マニュアル完成後、社内への周知徹底を図る為、全役職員への通知(掲示等掲載)、社内対応窓口の担当者への研修等により、周知徹底を図ります。
⑤ 通報者への回答
通報後、弊社の対策、対処を通報者へ直接回答します。
不祥事、不正行為の対策、対処を明確にすることができ、通報者(社員)との関係構築につながります。
また、多言語の対応ができるため、翻訳のサポートもいたします。
依頼するメリット
サポート行政書士法人を活用することで、内部通報制度の導入と運用において多くのメリットが得られます。
➀ 専門知識と経験の活用
行政書士は内部通報制度の導入から運用までの豊富な経験を持ち、最新の法令やガイドラインにも精通しています。その専門知識を活用することで、法的なリスクを最小限に抑えながら、効果的な制度を構築できます。
② 多言語での通報窓口の設置
多国籍企業や外国人従業員が多い企業では、主要な言語に対応した通報窓口の設置が必要です。
サポート行政書士法人は、英語や中国語など主要言語に対応した通報窓口を設けることで、異なる言語での通報を受け付けます。
③ 信頼性と透明性の向上
外部の専門家による制度設計と運用は、企業内部での信頼性と透明性を高めます。
従業員や取引先は、独立した第三者が関与することで、公正かつ客観的な対応が期待できると感じます。
担当スタッフからのひと言
弊社で内部通報制度をご利用頂いてる企業様は、外国人スタッフが多く、外国人スタッフからの通報も取り入れていきたいとの要望でした。
弊社も、外国人スタッフが多いため、英語、中国語、韓国語、ベトナム語、の外国語にも対応したフォームの作成や、フォームを通しての回答を行うフローを構築しています。
内部通報制度を導入してみたい、サービス内容を詳しく知りたい方は、ぜひお問合せ下さい。
一緒に、素敵な会社づくりを目指していきましょう!
よくある質問
内部通報制度の導入にはどのくらいの費用がかかりますか?
内部通報制度の導入費用は、企業の規模や導入内容によって異なります。
一般的には、制度設計や規程作成、担当者の研修、外部窓口の設置などに費用がかかります。
また、認証制度の取得を検討する場合は、認証費用も発生します。
具体的な費用については、専門家にご相談いただくと良いでしょう。
内部通報者の匿名性はどのように確保されますか?
内部通報者の匿名性を確保するためには、通報窓口の設置や通報方法の工夫が重要です。
例えば、外部の専門機関や弁護士を通じて通報を受け付けることで、通報者の匿名性を高めることができます。
また、内部の担当者にも通報者の情報が漏れないよう、厳重な管理体制を整えることが求められます。
内部通報制度を導入する際の注意点は何ですか?
内部通報制度を導入する際には、以下の点に注意する必要があります。
まず、通報者保護の仕組みを整え、通報者が不利益を受けないようにすることが重要です。
また、通報内容の真偽を適切に確認するための調査体制を整備し、迅速かつ公正な対応を行うことが求められます。
さらに、従業員に対して制度の目的や重要性を理解してもらうための周知活動も欠かせません。
内部通報制度の認証を受けるメリットは何ですか?
内部通報制度の認証を受けることで、制度の信頼性と透明性が向上します。
認証を取得することで、従業員や取引先からの信頼を得ることができ、企業のコンプライアンス体制が強化されます。
また、認証を受けることで外部からの評価が得られ、企業の信用力向上につながります。
小規模企業でも内部通報制度を導入する必要がありますか?
内部通報制度は、企業の規模に関わらず導入することが推奨されます。
小規模企業でも、不正行為やコンプライアンス違反のリスクは存在します。
内部通報制度を導入することで、早期に問題を発見し、適切に対応することができ、企業の健全な運営が期待されます。
また、従業員の信頼を得るためにも、内部通報制度の導入は重要です。
内部通報制度を導入した場合、どのように従業員に周知すれば良いですか?
内部通報制度を従業員に周知するためには、以下の方法が効果的です。
まず、社内研修やセミナーを通じて、制度の目的や重要性、通報方法について説明します。
また、社内イントラネットや掲示板、社内メールなどを活用して、定期的に制度に関する情報を提供します。
さらに、新入社員や異動者に対しても、制度についての説明を行い、全従業員に制度を理解してもらうことが重要です。