医療法人・クリニックの解散・廃業手続き
医療法人の解散(閉院・廃院)手続きのポイント
医療法人の解散手続きは行政書士への依頼が簡単・スピーディーです。
医療法人の解散を考えられている医療法人の先生向けに、医療法人の解散に必要な「手続き」と「注意点」、そしてM&Aという「解散しない選択肢」について解説していきます。
◆もくじ◆
医療法人の解散手続き
まず、解散手続きを開始する前に、理事会の決議が必要です。
理事会で解散の決議がなされると、次に登記の申請や税務手続きが必要になります。
また、解散の際には、法人の財産の分配方法や未処理の債務の対応方法など、詳細な計画と対応が求められます。
この過程では、税理士との連携も不可欠です。
さらに、解散しない選択肢としてM&Aがあります。M&Aは、法人の活動を継続し、従業員や関係者への影響を最小限に抑えることができます。
解散原因によって必要な手続きは「認可」「届出」に分かれます
医療法人の解散はさまざまな理由によってなされますが、手続きは「認可」と「届出」に分かれます。
それぞれの手続きには異なる要求事項があり、正確な手順を踏むことが重要です。
解散事由は7つに分類でき、その中で必要な手続きは以下の通りです。
① 定款で定める解散事由の発生 | 都道府県知事への届出 |
② 目的たる業務の成功の不能 | 医療審議会の意見を聞いたうえで、 都道府県知事の認可が必要 |
③ 社員総会での4分の3以上の賛成による決議 | 医療審議会の意見を聞いたうえで、 都道府県知事の認可が必要 |
④ 他の医療法人との合併 | |
⑤ 社員の欠乏(社員の辞任・死亡による不足) | 都道府県知事への届出 |
⑥ 破産手続開始の決定 | |
⑦ 設立認可の取消 |
上の表を見ていただくと分かる通り、手続きには「認可」と「届出」という2つのパターンがあります。
それぞれの内容を見ていきましょう。
解散の「認可」の場合
認可までの流れ
まずは、解散の理由を明確にすることが大切です。
法律に基づいた解散理由を説明する必要がありますが、特に強制的な解散の場合は、違反に関する詳細な説明が求められます。
次に、解散計画をしっかりと策定します。
この計画の中には、解散後の財産処分、職員の配置転換、そして患者の対応について、具体的に記載する必要があります。
そして、計画が完成したら、所轄庁へ解散認可申請書を提出します。
審査に問題がなければ、所轄庁から解散の認可が下りることになります。
必要書類
- 医療法人解散認可申請書
- 添付書類
2-1. 解散理由書:法律に基づいて解散理由を詳細に記載します。
2-2. 解散を決議した社員総会(理事会)の議事録:解散の決議が行われた会議の議事録を提出します。
2-3. 財産目録:解散時点での財産の詳細なリストを作成します。
2-4. 貸借対照表:最新の貸借対照表を添付します。
2-5. 残余財産の処分方法を記載した書類:処分方法について具体的に記述します。
2-6. 登記事項証明書(履歴事項全部証明書):最新の証明書を取得し、添付します。
2-7. 医療法人の概要など(状況により書類の増減があります):法人の基本情報をまとめた書類を用意します。
申請時期
解散計画が完成したら、できるだけ早く認可申請を行うことが大切です。
所轄庁の審査には一定の期間がかかるため、余裕を持って手続きを進めることが重要です。
急ぎの解散が必要な場合でも、計画策定と必要書類の準備はしっかりと行いましょう。
解散の「届出」の場合
届出までの流れ
解散の届出が求められる場合、主に自発的な解散が該当します。
まず、理事会および総会で解散案を承認する必要があります。総会では、多数決による決議が行われます。
次に、解散届を作成し、届出書に解散理由、解散日、財産の処分方法を具体的に記載します。
この解散届は所轄庁に提出され、必要な添付書類(例えば議事録や財産目録など)も同時に提出されます。
所轄庁が提出内容を確認し、問題がなければ正式に解散が承認されます。承認後、解散手続きが実施されます。
必要書類
- 医療法人解散届
- 添付書類
2-1. 解散を決議した社員総会(理事会)の議事録(社員の欠亡の場合を除く)
2-2. 財産目録
2-3. 貸借対照表
2-4. 残余財産の処分方法を記載した書類
2-5. 解散及び清算人就任を登記した登記事項証明書(履歴事項全部証明書)
これらの書類は、解散手続きをスムーズに進行させるために欠かせません。
特に財産目録と貸借対照表は、解散時の財務状況を正確に把握するために重要です。
届出時期
届出のタイミングにも注意が必要です。
解散決議が成立したら、速やかに解散届を提出することが求められます。
所轄庁は、届出内容を確認し、正式に承認を行います。
解散に伴う法的手続きや実務的な対応が必要な場合も多いため、専門家に相談することをお勧めします。
適切な手続きを踏むことで、スムーズに解散を遂行することが可能です。
解散認可後、または解散届提出後の手続き
医療法人の解散は、単なる解散届の提出だけでは完了しません。
解散の認可または解散届の提出後には、法的および実務的手続きを進める必要があります。
解散手続きには、解散認可後に必要な資産の処分や債務の清算、従業員の対応など、詳細な手続きが含まれます。
これらの手続きは、法律や規則に基づいて確実に行う必要があり、専門知識が求められます。
解散認可書受領後または解散届の届出後は、次の手続きを行う必要があります。
① 解散の登記(組合等登記令第7条)
② 清算人就任の登記(法第43条第1項)
③ 医療法人解散登記完了届、清算人の就任登記届の届け出(医療法施行令第5条の12)
④ 清算手続(法第56条の8第1項、第4項)
⑤ 清算結了の登記(法第43条第1項、組合等登記令第10条、第11条第3項)
⑥ 清算結了届の届け出(法第56条の11、医療法施行令第5条の12)
➀解散の登記
医療法人が解散する際には、解散届を提出し、認可が下りた後、速やかに解散の登記を行うことが必要です。
これにより、医療法人が正式に解散したことが法的に認識されます。
解散の登記が完了すると、登記事項証明書に「解散」と明示され、第三者に対しても法人の解散が明確に示されます。
特に合併や破産手続きの開始決定による場合を除き、解散の登記を行うことが法律で義務付けられています(組合等登記令第7条)。
この手続きを適切に行うためには、専門の法律事務所に相談することをお勧めします。
解散登記が遅れると、余分な法的問題や費用が発生する可能性がありますので、速やかに対応することが重要です。
②清算人就任の登記
解散と同時に、清算人を選任する必要があります。
通常、法人の代表者が清算人として選任されますが、場合によっては外部の専門家を任命することも可能です。
法的手続きを円滑に進めるため、清算人の選任は早めに行うべきです。
選任された清算人は、登記を通じてその地位を公式に認められる必要があります。
具体的には、法第43条第1項に基づいて手続きを行い、必要な書類を準備し、所定の期間内に管轄の法務局に提出します。
これにより、清算人は正式にその資格を得ることとなります。
清算人の登記は、法人の解散登記と同時に行うと一連の手続きがスムーズに進み、事務処理も効率的です。
また、登記が完了することで、清算人の権限が正式に発揮されるため、迅速かつ円滑な解散手続きを進めることができます。
③医療法人解散登記完了届、清算人の就任登記届の届け出
解散登記および清算人就任の登記が完了したら、その旨を所轄の行政機関に報告する必要があります。
この報告は、医療法人の統制と透明性を確保するために重要です。
医療法人解散登記完了届ならびに清算人の就任登記届を提出することで、行政側も公式に解散と清算人就任を認識し、以降の手続きに反映することができます。
具体的には、医療法施行令第5条の12に基づき、解散登記および清算人就任登記の完了後すぐにこれらの届け出を行う必要があります。
この手続きは、行政機関が解散状況を正式に把握し、今後の清算業務が円滑に進行するための基礎作業となります。
また、報告が遅れると罰則が科される可能性もあるため、速やかな対応が求められます。
必要書類の準備や届出フォームの詳細な記載案内についても事前に確認しておくと、手続きがスムーズになります。
④清算手続
解散後には、清算手続きを進めることが不可欠です。
まず、清算人が選任され、その清算人が法人の財産を整理し、債務の返済や残余財産の処分を行います。
具体的には、債権者への通知や官報による公告を行う必要があります。
この公告は法的に規定されており、通常2か月以内に3回以上官報に公告を掲載することが求められます(法第56条の8第1項、第4項)。
通知を受けた債権者は、請求に基づき債務の返済を依頼されます。
清算手続きは法的な手続きを厳守することで、トラブルを未然に防ぐことができます。
さらに、残余財産が存在する場合は、定款や法律に従い処分を行います。
⑤清算結了の登記
全ての清算手続きが完了したら、清算結了の登記を行います。
これは法人の解散が正式に認められるための最終ステップです。
清算結了の登記を行うことにより、法人の清算が公的に認識され、法人は正式にその存在を終えることとなります。
清算結了の登記を行う前には、全ての財務処理が終了している必要があります。
財産の分配から債務の返済に至るまで、すべての財務的な義務が滞りなく実施されたことを確認した上で進めます。
特に、債務は全額が返済されたことを確実に確認し、記録に残しておくことが重要です。
この登記手続きは法律に基づいて厳格に行われる必要があります。
具体的には、法第43条第1項、組合等登記令第10条、第11条第3項に従って進行します。
これにより、清算人が法的な手続きを正確に行ったことが公的に証明されます。
以上の手続きを経て、初めて法人は正式に解散されたと見なされます。
したがって、登記の各ステップを正確に行い、法に則った操作を徹底することが求められます。
⑥清算結了届の届け出
清算結了が正式に登記された後、速やかにその旨を所轄の行政機関に報告することは、医療法人の解散手続きにおいて重要なステップです。
医療法施行令第5条の12に基づき、清算結了届を所轄の行政機関に提出することで、すべての清算手続きが法的に完了したことを証明します。
所轄の行政機関に適切に報告するためには、必要な書類を正確に揃え、提出することが不可欠です。
具体的には、清算人による財務状況報告書や解散登記の写しなどが含まれます。
これにより、法人の解散手続きが正式に終了し、行政機関の確認を受けることができます。
この一連の手続きを確実に行うことで、トラブルを未然に防ぎ、法的リスクを最小限に抑えることができます。
適切な時期に清算結了届を提出し、確実に手続きを完了させることが重要です。
残余財産の帰属先の制限
医療法人の解散に際して特に注意すべきポイントの一つが、残余財産の処理です。
これは、法律や規則に従って適切に処理しなければなりません。
まず、解散した医療法人がその債務を完済した後に残っている財産のことを「残余財産」と呼びます。
出資持分のない医療法人の場合、残余財産は国、地方公共団体、医療法人、その他の医療提供者(厚生労働省令で定めるもの)に帰属します。
このため、解散時には具体的な帰属先を慎重に決定することが求められます。
一方、出資持分のある医療法人の場合は、その処理が異なります。
残余財産は定款に従い、出資者の出資額に応じて分配されます。
定款の規定が不明確だったり、紛争が発生しそうな場合は、専門家の助言を求めることが重要です。
以上のように、医療法人の解散手続きにおける残余財産の処理は、法律に基づいて適切に行う必要があります。
<出資持分のない医療法人の場合>
出資持分のない医療法人の残余財産は、国、地方公共団体、医療法人その他の医療を提供する者であって厚生労働省令で定めるものから選定するものに帰属することになります。
<出資持分のある医療法人の場合>
出資持分のある医療法人の残余財産は定款に従い、他の出資者の出資額との割合に応じて分配されることになります。
医療法人の解散を考えるときに考えるべき選択肢は?
ここまで見てきたように、医療法人の解散は、単なる事業終了だけでなく、さまざまな法的・実務的な手続きが必要となるため、詳細な計画が不可欠です。
解散を進める前に、いくつかの選択肢を慎重に検討することが重要です。
特に以下の2つのポイントを中心に考えてみてください。
ポイント①:医療に詳しい行政書士に依頼する
「解散手続きを顧問税理士に依頼したら、予想外に時間がかかって大変だった。」
こういう話は多く聞かれます。
よくある原因として「顧問税理士の先生が医療に詳しくない」ということが挙げられます。
医療法人の解散手続きでは、個人医院や一般企業の解散手続きと比較して、多くの書類が必要になります。
準備が必要な書類は40種類以上になることもあり、それらを複数の行政機関に提出しなければなりません。
もしも担当税理士が不慣れな場合、必要情報を調べるだけでも時間がかかってしまいます。
医療法人の解散の代理手続きには「行政書士」または「弁護士」の国家資格が不可欠です。
行政書士は書類作成のスペシャリストですが、医療法人は特別に複雑なため、専門的に扱っている行政書士は多くありません。
弊社は業界最大規模の行政書士法人であり、医療法人の「開設・解散・移譲」と全ての手続きを網羅的に代行しています。
貴法人の顧問税理士の先生と連携し、最速での手続きを行います。
ポイント②:M&Aという「解散しない選択肢」
近年増加しているのが「解散」ではなく「第三者への承継(M&A)」という選択をされる医療法人です。
医療法人の場合、個人の開業医と違い、経営者を交代させるだけで運営が可能になるので、スムーズな引き継ぎが可能です。
事業承継が医療法人化のきっかけとなった医院もたくさんあります。
こういったことを踏まえれば、ぜひ後継者を紹介してもらうなど売却を検討したいところです。
以下に売り手・買い手それぞれのメリットをまとめてみました。
(より詳細な情報は弊社M&Aページをご覧ください。)
●売り手のメリット
スタッフの雇用をそのまま維持できる
後継者問題が解消する
医院の譲渡金としてまとまった資金を得られる
借入金の個人保証や担保を解消できる
●買い手のメリット
医師・看護師等の人材を一括で確保できる
病院立地と認可ベッド数を獲得できる
事業基盤の拡大によりスケールメリットを享受できる
まとめ
医療法人の解散手続きは、法的手続きや実務的な対応がたくさんあって大変ですよね。
この記事では、医療法人の解散を検討している管理者や経営者の皆様に、解散手続きをスムーズに進めるための情報をお伝えしました。
解散手続きを成功させるには事前の準備がとても大切です。
各種届出の期限や財産処理の方法など、細かな規定がたくさんあります。
さらに、医療法人の財産処理についても法律に従った適切な手続きが必要です。
法的手続きを怠ると、後々トラブルに発展する可能性があるため、専門家の助言を受けながら丁寧に進めることが求められます。
最終的には、関係者全員が納得する形で解散手続きを完了させられるといいですね。
医療法人の手続きはサポート行政書士法人にお任せください!
医療法人を解散することは、とても大きな決断です。
しかも、法的手続きや財務管理など、多岐にわたるタスクが待ち受けています。
このプロセスを円滑に進めるためには、専門知識と経験豊富なサポートが不可欠です。
私たちサポート行政書士法人は、医療法人関連の手続きに関する豊富な経験と専門知識を持っています。
お客様が手続きに不安を感じることなく、一貫して安心して進められるよう、徹底したサポートを提供します。
具体的な事例や成功例を基に、お客様のニーズに合わせた最適な解決策を提案します。
まずはお気軽にご相談ください。