特定貨物自動車運送事業
貨物自動車運送事業には、「一般貨物自動車運送事業」と「特定貨物自動車運送事業」、「貨物軽自動車運送事業」の3つの事業があります。
ここでは、「特定貨物自動車運送事業」についてわかりやすく解説します。
特定貨物自動車運送事業とは
特定貨物自動車運送事業とは、単一特定の荷主から運送の依頼を受け、荷物を運送し、運賃を受ける事業です。
特定貨物自動車運送事業の運送に使用するトラックは、小型貨物車(4ナンバーのトラック)、普通貨物車(1ナンバーのトラック)、冷凍食品、石油類などの運送に使用する特種車(8ナンバーのトラック)などがあります。
一般貨物自動車運送事業との違い
「一般貨物自動車運送事業」とは、トラックを使用して不特定多数の依頼者から荷物の運送依頼を受け、運賃を受け取る事業です。
一方で、「特定貨物自動車運送事業」は、特定の荷主からのみ運送依頼を受ける事業です。
以下のような条件がある場合にのみ、「特定貨物」の許可を取ることができます。
- 単数の荷主に特定され、その荷主の輸送量の大部分を確保できる場合
- 運送契約の締結および運送の指示を直接行い、第三者を介入させない場合
一般貨物自動車運送事業と特定貨物自動車運送事業は、どちらも許可制になります。
事業を始めるには、各地の運輸局への申請が必要です。
特定貨物自動車運送事業の要件
特定貨物自動車運送事業の許可要件について、以前は一般貨物と特定貨物で許可要件に違いがありましたが、現在では両者の要件はほぼ同じです。
特定貨物自動車運送事業の許可は、特定の運送需要者に対して付与されるものです。
そのため、既にこの許可を取得した事業者が、新たな特定の運送需要者を追加する場合、特定貨物自動車運送事業の廃止申請と一般貨物自動車運送事業の許可申請手続きが必要になります。
そのような場合が生じると、時間もお金も無駄になってしまいます。
近年は「特定」で許可を取らずに「一般」で申請する方が多くなっています。
許可を取得するためには、以下の要件を満たす必要があります。
営業所 | 建物が農地法や都市計画法に違反していないことが必要です。建物が借入の場合、賃貸借契約で建物が使えることを証明する必要があります。 |
車庫 | 営業所に併設することが原則です。 しかし、営業所に併設できない場合は直線距離で5~10キロ以内(地域によるため、運輸局で確認が必要です)に車庫をおくことができます。 車庫に使用する土地が農地法や都市計画法に違反していないことが必要であり、車庫内で全ての車両が50センチメートル以上の間隔で止められること、車庫前の道路の幅員が一般的に6.5メートル必要です。 ※こうした条件を満たしていれば、一般的な駐車場でも車庫として認められる可能性があります。 |
車両数 | 営業所毎に配置する事業用自動車の数は、5両以上です。トレーラー、トラクターは、セットで1両と計算します。 |
休憩・睡眠施設 | 原則として営業所又は車庫に併設していることが必要です。睡眠施設を必要とする場合は1人当たり2.5平方メートル以上の広さが必要です。建物が借入の場合、賃貸借契約で建物が使えることを証明する必要があります。 |
運転者及び運行管理者・ 整備管理者 | 一般貨物自動車運送事業を始めるのに十分な数の運転者や運行管理者(運行管理資格者証の取得者)、整備管理者(車両整備の実務が2年以上、自動車整備士3級以上など)の確保されることが必要で、これらは採用予定者も含みます。 |
法令試験 | 申請人本人(法人の場合、代表者と事業に専従する業務を執行する常勤役員)は、省令試験を受験し、合格する必要があります。 試験は、原則として許可申請書が受理された月の翌奇数月に行われます。試験問題は貨物自動車運送事業法などの関係法令についての30問で、試験時間50分間で行われます。自動車六法等の持ち込みはできますが、パソコンなどの情報通信機器はもちこめません。合格基準は8割以上で、基準に達しない場合は再試験を受けることになります。 |
その他 | 輸送の安全管理体制の整備、必要な資金計画、車両の自賠責保険・任意保険の加入などが必要です。 |
特定貨物自動車運送事業許可を取得するメリット
特定貨物自動車運送事業には、以下のような手続きの負担軽減が見込めるメリットがあります。
①運送約款の作成が不要
特定貨物自動車運送事業は、荷主が特定の1社または1名に限られるため、運送約款を一般的に明示する必要がありません。
取引の安全については、特定の荷主との間で貨物運送に関する請負契約内で示せば十分です。
そのため、運送約款を作成する手間が省け、営業所に掲示する必要もありません。
②営業所での運賃・料金掲示も不要
特定貨物の場合、特定の荷主に対して運賃および料金を明示しておけば、取引の安全は確保できます。
契約内で明示すればよく、営業所に掲示して誰もが見れる状態にする必要はありません。
③合併等の場合は事後届出で対応可能
一般貨物の場合、事前の認可が必要ですが、特定貨物の場合は荷主が単一特定であるため、事後30日以内の届出で取引の安全が確保されると解されています。
これにより、合併等が生じた場合の手続きが容易です。
④事業報告書の提出が不要
一般貨物の場合、毎事業年度終了後100日以内に事業概況報告書、人件費明細書、損益計算書、貸借対照表、注記表といった事業報告書を提出する必要があります。
しかし、特定貨物の場合、事業実績報告書のみで足りるため、報告書作成の手間が軽減されます。
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