プロ向け投資運用業
「投資運用業」登録にあたっては、金融商品取引法の核となる「投資家保護」の観点に基づき、資本金及び純財産規制(5,000万円)といった財産基盤の他、取締役会設置の株式会社であること(最低、取締役3名+監査役1名以上が必要)等の組織体制、人的構成等、証券会社(第1種金融商品取引業者)に匹敵するような厳格な要件が課せられています。
ただ、一言に「投資運用」といっても、その内容はケースによって大きく異なるのが実態です。投資家の属性(投資経験豊富なプロかそれ以外のアマか)や運用規模等に関わらず、ほぼ一律に厳格な登録要件が課せられることが、投資運用業の立ち上げを制約し、日本の金融市場の成長の歯止めになってしまっていることが指摘されていました。
そこで、「顧客を適格投資家に限定」した上で、比較的小規模な財産の運用を行う投資運用業については、登録要件を一部緩和することが、平成23年の金融商品取引法の改正で決定しました(平成24年4月より施行)。
これが、平成24年4月より施行した「プロ向け投資運用業(適格投資家向け投資運用業)」です。
「プロ向け投資運用業(適格投資家向け投資運用業)」の登録にあたっては、資本金及び純財産規制が1,000万円(投資運用業は5,000万円)とされていたり、監査役設置会社(又は委員会設置会社)であれば取締役会非設置の会社でも登録申請ができる等、資産・組織・人などの部分で、通常の投資運用業に比べるとかなり小規模な所からスタートができるように要件が緩和されました。
「プロ向け投資運用業」が活用できる場面として、以下のいずれも満たす必要があります。
①全ての運用資産に係る権利者(出資者)等が「適格投資家」のみであること
②全ての運用資産の総額が200億円を超えないこと
ここで注意をしたいのが、「全ての運用資産」というキーワードです。
「全ての運用資産」とは、当該者がプロ向け投資運用業として行う運用資産の他に、例えば適格機関投資家等特例業務届出で対応している案件の運用資産等も含む「全ての運用資産」を指すとされています。
年金基金等を相手に運用を行っている投資運用会社にとっては、200億円という額はそれ程大きくないため、「プロ向け投資運用業」とは、比較的小規模な運用を行うケースにおいて活用できる区分と考えられます。
通常の投資運用業に比べて、要件が緩和された部分が複数ありますが、その一方で、行える業務・規模が限定されてしまう側面があるのが実際のところです。
また、通常の投資運用業登録の際に焦点となる「兼業規制」や「主要株主規制」等については、「プロ向け投資運用業」の場合でも今まで通りクリアする必要がありますので、ご注意下さい。
プロ向け投資運用業の登録要件
組織要件 |
○株式会社であること(目的欄に「投資運用業」等の記載も必要となります)
○監査役設置会社であること
※通常の投資運用業では、取締役会設置が要件ですが、プロ向け投資運用業では、取締役会がなくとも、監査役が居れば組織要件を満たすことができます。 |
財産要件 |
○資本金及び純財産額が1,000万円以上
※その他、既存法人の場合、過去の決算状況を提示する必要がありますが、その中で、債務超過・連続赤字決算など金融商品取引業者の財産基盤としてふさわしくない要素が出てくると、申請が難しくなる場合があります。 |
人的構成要件 |
○経営者(常務に従事する役員等も含む)等に、金融商品取引業者の経営者としての資質等がある ○運用担当者(運用を行う資産に関する知識および経験を有する者)が、1~2名以上確保されている。 (少なくとも1年以上、運用を行おうとする資産に関する助言や運用業務に従事していた者が必要となり、また、投資判断を行う担当者と注文を発注する担当者は、分離するよう求められる可能性があります。
○コンプライアンス担当者が、1~2名以上確保されている (少なくとも1年以上、金融商品取引業に関する法令等遵守指導等に関する業務に従事している者が必要となり、また、ケースによっては、外部委託が認められる可能性もあります)
○業務の適確な遂行に向けて必要な要因が、1~2名以上確保されている |