資金移動業者登録

履行保証金の供託とは?資金移動業者への規制について

更新日:2025年1月21日


資金移動業者には、利用者の資金を安全に保全するための規制として履行保証金の供託が義務付けられています。
本記事では、履行保証金の供託等、資金移動業者に課される規制について詳しく解説します。

資金移動業者は、利用者から預かり滞留している資金の100%以上の額を、履行保証金として供託等によって保全する義務があります。
これは、万が一資金移動業者が破綻した場合でも、利用者の資金が保護されることを目的としています。

「各営業日における未達債務(※)の額」と、「還付手続に関する費用の額」を合算したものを要履行保証額といいます。
資金移動業者は、各営業日ごとにこの要履行保証額を把握する必要があります。
実際に保全すべき金額の算出方法は、資金移動業の種別によって異なりますが、第二種の場合を例に挙げて説明します。


(※)未達債務とは、一般に、資金移動業者が利用者から受け取ってまだ送金が完了していない資金のことを指します。ただし、未達債務の捉え方も事業者によって異なります。

算出例(第二種資金移動業の場合)

営業日を月曜日から金曜日、未達債務算出時点を18時、一定期間を1週間と定めているとき:
①各営業日の18時時点での未達債務の額を算出する
②下記の方法で「還付手続に関する費用の額」を計算し、未達債務の額と合算する(要履行保証額の算出)

  • 未達債務の額が1億円以下であるとき、未達債務の額×5%
  • 未達債務の額が1億円超であるとき、(未達債務の額-1億円)×1%+500万円

③上記のうち最も高い額

【実例】

  • 月曜日:未達債務の額>1,500万円⇒要履行保証額>1,575万円
  • 火曜日:未達債務の額>2,500万円⇒要履行保証額>2,625万円
  • 水曜日:未達債務の額>2,000万円⇒要履行保証額>2,100万円
  • 木曜日:未達債務の額>1,800万円⇒要履行保証額>1,890万円
  • 金曜日:未達債務の額>1,000万円⇒要履行保証額>1,050万円

この場合、最も高い火曜日の2,625万円が保全に必要な金額となります。

なお、要履行保証金額には下限があります(最低要履行保証額)。
これも資金移動業の種別ごとに決まっていますが、第二種だと1,000万円になります。
未達債務の額が500万円だとすると、要履行保証額は525万円となりますが、実際には1,000万円となります。

供託期限について

供託期限は法令で以下のように定められています:

  • 第一種:基準日から2営業日以内
  • 第二種及び第三種:基準日から3営業日以内

基準日は資金移動業者が任意で設定できます。
例えば、基準日を日曜日とした場合、上記の例では水曜日までに2,625万円を保全する必要があります。

なお、既に保全している金額が2,625万円を超えている場合は、追加の保全は不要です。

履行保証金の保全方法として、資金移動業者は以下のいずれか、または複数の方法を選択できます。

保全の方法説明供託所等
金銭による供託現金を供託します。資金移動業者の最寄りの供託所(法務局)
債権による供託国債証券、地方債証券等を供託します。  
保全契約の締結金融機関と履行保証金保全契約を締結し、その旨を財務(支)局長等に届け出ることによって、履行保証金の供託に代えます。(保全契約締結先) 一定の要件を満たした ・銀行等 (外国銀行支店を含む) ・生命保険会社 ・損害保険会社
信託契約の締結信託会社等履行保証金保全契約を締結し、財務(支)局長等の承認を受け、財産を信託し、その旨を財務(支)局長等に届け出ることによって、履行保証金の供託に代えます。信託契約締結先は ・信託会社、外国信託会社(日本で免許を受けた会社に限る) ・信託銀行

なお、第三種資金移動業については、預貯金管理という資金管理も認められています。

利用者保護措置

資金移動業者は利用者の保護等を図るため、次のような措置を講じるように定められています。

(1)顧客が銀行等が行う為替取引と誤認することを防止する措置を講ずること。
(2)手数料その他の契約内容等利用者に対する情報を提供すること。
(3)送金額等の資金を受領した時は受取証書を交付すること。
(4)社内規則等を定め、従業者に研修等を行うこと。 等

金融ADR制度への対応

資金移動業者は、裁判外紛争解決制度(金融ADR制度)の対象になっているため、法に基づいて資金移動業に関連する以下2つの措置を講じなければなりません。


(1)苦情処理措置
(2)紛争解決措置


一般的には、認定資金決済事業者協会である「一般社団法人日本資金決済業協会」に加入し、規程に従うことで、苦情処理措置、紛争解決措置の対応をしているケースが多いです。


「一般社団法人日本資金決済業協会」に加入した場合、以下のような対応を受けることが可能です。


(1)協会が行う苦情解決により、資金移動業関連苦情の処理を図ることができます。
(2)協会と東京の三つの弁護士会との間で締結した資金移動業関連紛争の解決を図る旨の協定を利用することにより、資金移動業関連紛争の解決を図ることができます。

  • 資金移動業者は、最低1,000万円の履行保証金を保全する必要がある。
  • 履行保証金の供託方法は、金銭や債権による供託、保全契約や信託契約の締結がある。
  • 資金移動業者は、様々な利用者保護措置を取る必要がある。
  • 資金移動業者は、苦情処理措置、紛争解決措置を講じる必要がある。
  • 苦情処理措置、紛争解決措置は、「一般社団法人日本資金決済業協会」への加入によって対応としている場合が多い。

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清水さん
行政書士 主任コンサルタント
公認AMLスペシャリスト
清水 侑