第一種金融商品取引業

ST業務

更新日:2025年3月5日


■ セキュリティ・トークン(ST)

ブロックチェーン等の技術を活用して発行・管理される “デジタル化された有価証券” を「セキュリティ・トークン(Security Token /略してST)」といい、このSTを発行して行う資金調達手法を「Security Token Offering(略してSTO)」といいます。

通常の上場株式や債券等の有価証券は、「社債、株式等の振替に関する法律(振替法)」に基づき指定を受けた証券保管振替機構(通称「ほふり」)にて一元管理されますが、STの場合は、振替法の適用を受けず、ほふりも利用されず、ブロックチェーン技術等を活用した電子基盤上で発行・管理等が行われることになります。

最近では、現物不動産や不動産信託受益権を裏付資産とするST社債STが発行され、いずれも個人投資家でも小口投資が可能で、原資産によっては市場や相場の影響を受けにくいことから、新しい投資対象として注目されています。

なお、ブロックチェーン等の技術により移転等ができる ”財産的価値” のことを「トークン」と総称しますが、発行されるトークンが、暗号資産前払支払手段に該当する場合は、金融商品取引法ではなく、「資金決済に関する法律(資金決済法)」の適用を受けることになりますので、注意してください。

トークンの該当区分主な規制法令
セキュリティ・トークン金融商品取引法
暗号資産資金決済法
前払支払手段資金決済法

■ 金融商品取引法におけるST

金融商品取引法では、STは「電子記録移転有価証券表示権利等」と定義されています。

(金商法第29条の2第1項第8号/内閣府令第1条第4項第17号/内閣府令第6条の3)

【 電子記録移転有価証券表示権利等 】

 ① 金商法第2条第2項の規定により有価証券とみなされる権利

 ② 電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値(※)に表示されるもの
  (※)電子機器その他の物に電子的方法により記録されるものに限る

更に、この「電子記録移転有価証券表示権利等」は、その裏付となる原資産の種類によって、以下3種類に整理されます。

STの裏付となる原資産の種類分類
株式等の1項有価証券の場合
(金商法第2条第2項柱書の有価証券表示権利)
トークン化有価証券
集団投資スキーム持分等の2項有価証券の場合電子記録移転権利
(金商法第2条第3項)
取得者制限や譲渡制限を技術的に行うことで
電子記録移転権利から除かれたもの
適用除外電子記録移転権利
(定義府令第9条の2)

トークン化有価証券は、「金商法第2条第1項各号に規定される株式や社債等の有価証券に表示されるべき権利(有価証券表示権利)」をトークン化したものを意味します。

(「トークン化有価証券」自体は、金商法上の用語ではありません)

もともとの権利が、株式や社債等のいわゆる “1項有価証券” に該当している為、トークン化された場合も、1項有価証券としての扱いとなります。

具体的には、トークン化有価証券の売買等を行う場合は、第一種金融商品取引業の登録が必要です。

また、基本的に、開示規制(発行開示制度及び継続開示制度)の対象にもなってきます。

電子記録移転権利は、「金商法第2条第2項各号に規定される集団投資スキーム持分や信託受益権等の権利」をトークン化したものを意味します。(金商法第2条第3項)

もともとの権利が、集団投資スキーム持分等のいわゆる “2項有価証券” に該当している為、従前は2項有価証券としての扱いでしたが、トークン化により1項有価証券と同様の流動性をもつことから、法改正で、1項有価証券としての扱いとなっています。

具体的には、電子記録移転権利の売買等を行う場合は、第一種金融商品取引業の登録が必要です。

また、基本的に、開示規制(発行開示制度及び継続開示制度)の対象にもなってきます。

上記「電子記録移転権利」の内、以下の措置が講じられているものは、同権利から除外され、「適用除外電子記録移転権利」として別途の規制を受ける形になります。(定義府令第9条の2)

【 適用除外電子記録移転権利 】

 ①次に掲げる両措置がとられている場合

  (1)取得者制限

    当該財産的価値を適格機関投資家等以外の者に取得・移転できない技術的措置

  (2)譲渡制限

    都度、権利者の申出及び発行者の承諾がなければ当該財産的価値を移転できない技術的措置

 ②法第2条第2項第3号に掲げる権利(合同会社等の社員権)が当該財産的価値に表示される場合

   業務執行社員以外の者に取得・移転できない技術的措置がとられていること等、

   定義府令第9条の2第1項第2号に列挙される要件に該当するとき

適用除外電子記録移転権利の場合、流動性の低い ”2項有価証券” としての扱いになります。

具体的には、適用除外電子記録移転権利の売買等を行う場合は、第二種金融商品取引業の登録が必要です。

また、基本的に、開示規制(発行開示制度及び継続開示制度)の対象外になります。

■ 主な自主規制機関

主な自主規制機関についても、対象STがどの分類に該当するかによって変わります。

分類主な自主規制機関
トークン化有価証券日本証券業協会
電子記録移転権利
(金商法第2条第3項)
日本STO協会
適用除外電子記録移転権利
(定義府令第9条の2)
日本STO協会

「日本STO協会(一般社団法人日本STO協会)」は、2019年10月設立後、2020年5月に、金商法第78条第1項に基づく認定を受けた認定金融商品取引業協会です。

電子記録移転権利等の取引等に関する規則」をはじめ、様々な自主規制規則を定めています。

例えば、外務員資格については、 ”日本証券業協会「外務員等資格試験に関する規則」による一種外務員資格試験の合格者” に加え、日本STO協会が実施する外務員資格研修を修了した者でなければ、外務員の登録を受けることができないとされています。(日本STO協会「外務員の資格、登録等に関する規則」参照)

自主規制機関ごと/行う業務内容等ごとに、遵守すべき自主規制の種類・内容も変わってくる為、予め、該当する自主規制機関と適用される規程等を理解した上で、ライセンス取得に進みましょう。

■ 各種行為規制等

「電子記録移転有価証券表示権利等」を取扱う場合、通常の金融商品取引業登録上の要請事項に加え、金融商品取引法その他関係法令(犯罪収益移転防止法等も含む)や監督指針等に定められているST業務独自の規制に対応する必要があります。(以下は、一例です)

▼ 業務管理体制/態勢の整備

電子記録移転有価証券表示権利等に関する業務等を適確に遂行すうことができる体制・内部管理態勢(社内規程等)を整備する必要があります。(内閣府令第70条の2)

登録実務上は、電子記録移転有価証券表示権利等に関する業務等を統括する部門を定め、当該部門の責任者の経験や配置人数等を含め、その適切性を総合的に審査される形になります。

また、電子記録移転有価証券表示権利等に関する業務等の具体的な実務フローを決定し、社内規程として明文化した上で、それらが適切に実行される為の措置を決め(研修・モニタリング等)、実行する必要があります。

取引時確認等の措置の他、システム障害等が発生した場合の具体的な対応フロー等も規定します。

▼ 顧客勧誘・説明等

ST業務という新しい商品・スキームである為、仕組み等を顧客が理解しないまま取引してしまうことがないよう、取引開始基準を定めたり、分別管理措置等の一定の事項を公表する等の対応が必要です。

登録実務上は、顧客の集客・勧誘説明・契約までの一連のプロセスを整理した上で、いつどこで誰が何を顧客に説明し、取引開始可否を誰がどう判定するのか等の実務フローを整理し、審査される形になります。当然、具体的な取引開始基準等も審査されます。

▼ 広告等の表示規制

電子記録移転有価証券表示権利等に関する金融商品取引行為について広告等を行う場合、「当該権利の性質」や「当該権利の保有・移転の仕組みに関する事項」についての誤認防止等が必要になります。(内閣府令第78条)

登録実務上は、実際に業務開始後に使用する顧客説明の画面イメージや説明内容(図表を含む)をドラフト提出し、その記載内容・記載方法等についても審査される形になります。

■ まとめ

金商法上のSTの整理すると、以下の通りとなります。

分類開示規制等ライセンス主な自主規制機関
トークン化有価証券1項有価証券
=開示規制対象
第一種金商業日本証券業協会
電子記録移転権利
(金商法第2条第3項)
1項有価証券
=開示規制対象
第一種金商業日本STO協会
適用除外
電子記録移転権利
(定義府令第9条の2)
2項有価証券
=開示規制対象外
第二種金商業日本STO協会

ST業務は、今まさに法規制を含めた環境整備が進んでいる最中で、より一層の活用に向け様々な課題検証が進む見込みです。引き続き法改正等も多い分野となりますので、都度、最新の法令等を確認して手続きを進めていきましょう。

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