少額電子募集取扱業務
更新日:2025年3月4日
■ 電子募集取扱業務
金融商品取引法では、以下の方法で有価証券の募集又は私募の取扱い等を行うことを「電子募集取扱業務」と定め、特に「金商法第3条に規定する適用除外有価証券及び非上場有価証券」を対象にした電子募集取扱業務について、一定の規制を設けています。(金商法第29条の2第1項第6号)
※令和7年2月に法改正が発生していますので、注意して下さい。
① 金商業者のホームページ等を閲覧させる方法
(内閣府令第6条の2第1号)
② 上記①の場合で、電子メール等により情報を送信する方法
(音声の送受信による通話を伴う場合を除く/内閣府令第6条の2第2号)
③ 上記①の場合で、1人の相手方からの求めに応じて、
音声の送受信による通話の方法で一定の説明をする方法(内閣府令第6条の2第3号)
※令和7年2月法改正で追加
パブリックコメントによると、金商業者のホームページ上で、個別商品の概要や手数料、予想リターン、申込期間等を掲載したページを設けている場合、当該ホームページ上で商品の申込みを受け付けていなくても、基本的に電子募集取扱業務に該当するとしています。
一方で、電子メールでのみ勧誘を行う場合や、上記②の方法でインターネット通話サービスを伴う場合は、電子募集取扱業務に該当しないものとされています。
また、上記③については、これにより音声通話による業務が一定認められた訳ですが、「相手方からの求めに応じて」が前提です。
この「相手方からの求めに応じて」の理解として、パブリックコメントによると「事業者から音声通話による説明を積極的に働きかけず、かつ、顧客から明示的に要請された場合」であるとされ、監督指針上も具体的な留意点が列挙されていますので、注意しましょう。
なお、電子募集取扱業務のうち、「勧誘」だけでなく「有価証券の取得の申込み」までをインターネット上で行う場合「電子申込型電子募集取扱業務」に該当し、更に厳しい業務管理体制整備が必要になります。
■ 少額電子募集取扱業務
電子募集取扱業務のうち、一定の少額要件を満たす業務は「少額電子募集取扱業務」に該当し、当該業務のみを行う金融商品取引業者は、通常よりも登録要件が緩和されます。(金商法第29条の4の2/第29条の4の3)
「一定の少額要件」は、以下の通りです。
※令和7年2月に法改正が発生していますので、注意して下さい。
【少額要件】(施行令第15条の10の3)
※令和7年2月法改正で要件緩和
① 株式等の発行価額の総額:5億円未満
② 取得者(特定投資家を除く)1社/人あたりの払込額:
(1)純資産5%、(2)収入金額5% 又は (3)50万円の内、いずれか高い額(最大200万円)
上記①算定にあたっては、「当該募集等の開始日前1年以内に同一発行者により行われた募集等」及び「当該募集等と申込期間の重複する同一発行者により行われる募集等」にかかる同一種類の有価証券の発行価額の総額を合算する等、有価証券の区分に応じた算定ルールがあります。
また、上記②算定にあたっては、当該払込日前1年以内に応募又は払込みを行った同一発行者による同一種類の有価証券の募集等にかかる個別払込額を合算する必要があります。
その他、具体的な算定方法は、内閣府令第16条の2をご参照ください。
なお、令和7年2月の法改正で緩和され、上記①は「1億円から5億円」に、上記②は「50万円から最大200万円」に変更になっています。
特に、②については、取得者ごとの財産状況等による為、具体的にどのように確認するのかが課題になります。
パブリックコメントでは「顧客からの自己申告のみでは必ずしも十分ではなく、顧客から提供を受けた資料等も踏まえて、事業者が確認を行う必要がある」とされているので、金融商品取引業者としては、具体的に顧客から何を証左として回収し、どう確認・判断し、どう記録するのか等の内部管理態勢の構築が必要になります。
■ 第一種少額電子募集取扱業務
第一種少額電子募集取扱業務は、少額要件に該当する非上場株式等の電子募集取扱業務又は当該業務に関して顧客から金銭の預託を受ける行為をいい(金商法第29条の4の2第8・9項)、当該業務のみを行う場合、第一種少額電子募集取扱業者として、通常よりも登録要件が緩和されます。
例えば、第一種少額電子募集取扱業者として登録を受ける場合、最低資本金額は1,000万円で足り(通常5,000万円~30億円)、金融商品取引責任準備金の積立義務・自己資本規制比率の維持義務・投資者保護基金加入義務が適用されません。
また、兼業規制(承認業務)も適用されない為、通常の第一種金融商品取引業に比べて、他業種からの参入や兼業も含めた事業展開もしやすくなっています。
他にも、標識の掲示義務が適用されず、代わりに、商号や登録情報等をウェブサイト等に表示することが義務付けられる等、電子募集取扱業務の特性をふまえた規制内容になっています。
規制という観点では、法令や監督指針だけでなく、協会等が定める自主規制規則への対応も重要です。
第一種少額電子募集取扱業者は、基本的に、日本証券業協会の会員(正会員ではなく、特定業務会員)として、同協会が定める自主規制規則(例:株式投資型クラウドファンディング業務に関する規則)を遵守する必要があります。
なお、第一種少額電子募集取扱業者は、あくまでも「第一種少額電子募集取扱業務のみを行う場合」に該当し、電子募集取扱業務に該当しない業務を行うことはできない為、電話や対面による勧誘は認められないので注意しましょう。
※パブリックコメントによると、「勧誘」ではなく、「取得の申込み」については、顧客需要が想定されることから電話や対面による対応は禁止されていません。
■ 第二種少額電子募集取扱業務
第二種少額電子募集取扱業務は、少額要件に該当する集団投資スキーム持分等の電子募集取扱業務をいい(金商法第29条の4の3第2・3項)、当該業務のみを行う場合、第二種少額電子募集取扱業者として、通常よりも登録要件が緩和されます。
具体的には、法人が第二種少額電子募集取扱業者として登録を受ける場合、最低資本金額は500万円で足り(通常1,000万円)、個人の場合に求められる営業保証金額も、同様に500万円に緩和されています。
他にも、標識の掲示義務が適用されず、代わりに、商号や登録情報等をウェブサイト等に表示することが義務付けられる等、電子募集取扱業務の特性をふまえた規制内容になっています。
なお、第二種少額電子募集取扱業者は、あくまでも「第二種少額電子募集取扱業務のみを行う場合」に該当し、電子募集取扱業務に該当しない業務を行うことはできない為、電話や対面による勧誘は認められないので注意しましょう。

【ポイント】
現在、第一種少額電子募集取扱業務の登録業者数は4社です(2025年1月末時点)。
主に、株式投資型クラウドファンディング事業で活用されています。
一方、第二種少額電子募集取扱業務は、要件緩和のメリットが少ないこともあって、
現時点で、登録業者も0で、活用が進んでいない状況です(2025年1月末時点)。
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