建設業許可とは?種類や許可要件、必要な手続きについて
建設業許可とは?
建設業許可とは、建設業を営もうとする際に必要な許可のことです。
(軽微な建設工事のみ請け負う場合は不要)
請け負おうとする建設工事の内容や規模等に応じて、必要な許可の種類や要件が異なります。
また、既に許可を取得済みの建設業者においても、許認可の維持には、制度の基本的な理解をしておくことが必要不可欠です。
許認可手続きの担当者が人事異動等で変わることがありますが、新しい担当者が制度をきちんと理解できていないことにより、知らぬ間に手続き漏れなどの法令違反を起こしてしまうこともあります。
本記事では建設業許可について、その種類や要件、必要な手続きなど、建設業許可の制度について解説します。
「建設業法」の目的について
建設業に関する制度は、主に「建設業法」によって定められています。
(目的)
第一条 この法律は、建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによつて、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進し、もつて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。
建設業法の目的は、我々の生活を支える建設業が健全に機能するように、質の保たれた技術をもって建設工事を施工し、そして最終的には公共の福祉の増進を果たすことを目的としています。
建設業の資質の向上のため、また、請負契約を適正化するために、建設業法では建設業許可の制度や、請負契約に関する事項(書面での契約の原則、契約書の記載事項の法定、一括下請負の禁止等)が定められています。
建設業許可の区分
一口に「建設業許可」といっても、様々な区分があります。
①許可行政庁の区分
建設業を営む「営業所」の配置状況に応じて、許可行政庁の区分が変わります。
この区分によって、各種手続きの提出先となる役所が変わります。
要件は許可行政庁によらず共通ですが、細かな指導内容は異なってくるケースがあります。
※営業所とは、常時建設工事の請負契約を行う事務所など、実質的に営業を行っている事業所を指します。
登記されている本店や支店だけでなく、登記されていない事務所も「営業所」に含まれます。
建設業の営業に関与しない店舗や工事現場の事務所・資材置き場は原則含まれません。
◆国土交通大臣許可
営業所が2つ以上の都道府県に存在する場合、国土交通大臣許可になります。
管轄となる行政庁は、建設業上の本店(主たる営業所)を管轄する地方整備局等になります。
(例:東京に本店がある場合は、関東地方整備局の管轄)
◆都道府県知事許可
営業所が1つの都道府県内にのみ存在する場合は、当該都道府県知事の許可となります。
管轄となる行政庁も、当該都道府県庁となります。
(例:東京の場合、東京都庁の管轄)
②業種(工事内容の種類)
建設工事は、その工事の内容に応じて、全29種の「業種」に分類されます。
建設業者は、業種ごとに、「一般」か「特定」の建設業許可を取得することとなります。
③建設工事の規模(一次下請への発注額)による許可の種類
◆特定建設業許可
元請業者として請け負う建設工事について、税込4,500万円以上(建築一式工事の場合は税込7,000万円以上)を一次下請に発注する場合は、特定建設業許可が必要となります。
◆一般建設業許可
特定建設業許可が必要な工事を請け負わない場合は、一般建設業許可となります。
つまり、下請工事のみ行う場合や、元請工事を行う場合であっても下請への発注金額が十分低い場合は、
一般建設業許可となります。
特定建設業許可は、一般建設業許可よりも要件が厳しくなっています。
(財産要件、営業所の専任技術者に求められる資格要件)
建設業許可の要件
1:適切な経営体制
建設業の経営は、以下のように、他の産業の経営とは著しく異なった特徴を有しています。
- 一品ごと(各建設工事ごと)の注文生産であり、あらかじめ品質を確認できない
- 請負者が長期間瑕疵担保責任を負う
- 不適正な施工があったとしても、完全に修復するのが困難
- 長期間、不特定多数のものが施工に関与する(下請が多く重層的)
こうした点を踏まえ、建設業の経営業務について一定期間の経験を有した者(いわゆる「経営業務の管理責任者」)を有するなど、適切な経営体制が求められます。
2:適切な社会保険への加入
全ての建設業上の営業所に関し、健康保険・厚生年金保険・雇用保険に加入している必要があります。
(適用除外の事業所は除く)
3:営業所の専任技術者の設置
建設工事に関する請負契約の適正な締結、履行を確保するためには、建設工事についての専門知識が必要となります。請負工事に関する見積・入札・請負契約締結等の業務の中心は各営業所となるため、全ての営業所に一定の資格や経験を持つ技術者を専任で設置することが必要です。
営業所の専任技術者は、それぞれの営業所において行う建設工事の「業種」に応じて、配置する必要があります。
専任技術者に求められる資格等は、その業種・許可の種類(特定か一般か)によって変わります。
4:財産的基礎等
◆一般建設業許可の場合(下記のいずれかに該当すること)
- 自己資本の額が500万円以上であること
- 500万円以上の資金調達能力を有すること
- 許可申請直前の過去5年間、許可を受けて継続して建設業を営業した実績を有すること
◆特定建設業許可の場合(下記の全てに該当すること)
- 欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
欠損の額:繰越利益剰余金の負の額-(資本剰余金+利益準備金+その他の利益剰余金) - 流動比率が75%以上であること
流動比率:流動資産合計÷流動負債合計×100 - 資本金の額が2,000万円以上であり、かつ、自己資本の額が4,000万円以上であること
5:誠実性
許可申請者自身や、その役員等・令3条使用人(各営業所の支店長等)が、
請負契約に関して「不正」又は「不誠実」な行為をするおそれが明らかな者でないことが必要となります。
- 「不正な行為」とは?
⇒請負契約の締結又は履行の際における詐欺、脅迫、横領等法律に違反する行為 - 「不誠実な行為」とは?
⇒工事内容、工期、天災等不可抗力による損害の負担等について請負契約に違反する行為
6:欠格要件への非該当
許可申請者やその役員等若しくは令第3条に規定する使用人が、欠格要件のいずれかに該当する場合、許可を受けることは出来ません。
(欠格要件の例:破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者 等)
建設業許可新規申請の流れ
建設業許可を取得するためには、以下の手続きを踏む必要があります。
①申請先の確認
知事許可:各都道府県庁へ申請
大臣許可:各地方整備局等へ申請
申請先によって必要な書類や事前予約の有無が異なります。
②申請書類一式の用意
必要となる書類の種類の確認や、作成書類の様式ダウンロードを、各申請先のホームページから行いましょう。
提出が必要な書類には、申請者にて作成する書類の他、官公庁等で取得する証明書類も含まれます。
例:履歴事項全部証明書、納税証明書、役員等・令3条使用人の身分証明書や登記されていないことの証明書、etc……
③書類提出、手数料の納入
建設業許可の新規申請時には、手数料または登録免許税が掛かります。
費用は、申請する許可の種類や組み合わせによって異なります。
◆知事許可
一般か特定のどちらか一方のみ: 手数料9万円
一般と特定を両方同時に申請: 手数料18万円
◆大臣許可
一般か特定のどちらか一方のみ: 登録免許税15万円
一般と特定を両方同時に申請: 登録免許税30万円
建設業許可の取得後に必要な手続き(例)
更新申請
建設業許可には、許可日の翌日から5年間の有効期間があります。
建設業許可を維持し続けるためには、更新手続きが必要です。
決算報告(決算変更届)
建設業者は、各事業年度につき、決算期から4ヶ月以内に決算報告(決算変更届)の提出が求められます。
各種変更届
建設業者は、届け出た事項(役員等、営業所の専任技術者、令3条の使用人、営業所の業種、etc……)に変更が生じた際は、変更届を提出する必要があります。(事後の届出)
提出期日は、変更内容によって異なってきます。(変更日から14日以内 or 30日以内)
各種申請
「新規申請」「更新申請」の他にも、申請が必要となるケースがあります。
例:業種追加、般・特新規(一般→特定、特定→一般)、許可換え新規(大臣→知事、知事→大臣など)
これらの申請は、「変更届」と違い、事前に申請する必要があります。
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