外国法人の建設業許可申請
更新日:2024年12月3日
外国法人も、要件を満たせば建設業許可を取得できます。
実際に外国法人の進出を支援した弊社が、取得の流れを解説します。
1.日本での拠点の形態を決める
日本での拠点の形態は、3種類あります。
①日本法人の設立、②日本支店の設置、③駐在事務所の設置の3パターンです。
それぞれのメリット・デメリットを簡単に表にまとめましたので、ご参照ください。
各事業形態の比較
事業形態 | ①日本法人 | ②日本支店 | ③駐在事務所 |
営業活動 | 可 | 可 | 不可 |
資本金 | 必要 | 不要 | 不要 |
法務局への登記 | 必要 | 必要 | 不要 |
銀行口座の開設 | 可能 | 可能 | 不可 |
代表者のビザ | 経営管理 | 企業内転勤 | 企業内転勤 |
従業員の雇用 | 可能 | 可能 | 可能 |
このうち、駐在事務所では営業活動が出来ないため、建設業を行う場合は、①日本法人、②日本支店のいずれかが必要です。
更なる詳細は下記URLをご参照ください。
2.要件を整備する
外国・日本を問わず、求められる要件は同じです。
しかし、揃えるべき書類、手続きの流れ等が、日本国内の建設業者に比べて複雑になる傾向にあります。
それぞれの要件の趣旨・ポイントを押さえて、準備を進めましょう。
建設業許可の要件詳細はこちら
2-1.常勤役員等(経営業務の管理責任者)
苦労する建設業者が最も多いのが、常勤役員等(経営業務の管理責任者)の要件です。
「建設業者の役員等として、建設業に関する経営を行った経験」が十分ある常勤役員等(いわゆる「経管」)が求められます。
日本の建設業者で上記の経験を十分積んだ方が居れば、申請時の書類は比較的シンプルです。
ですが、外国の建設業者での経験しかない場合は、建設業許可新規申請の前に「大臣認定」を受ける必要があります。
大臣認定では、大まかに下記の2点に関する確認資料を提出し、認定を受けます。
- 海外で経験を積んだ建設業者が、実際に建設業を行っていること
例:工事契約書の写し(5年分以上)など - 認定を受ける方が、海外で経験を積んだ建設業者で、経営に携わっていたこと
例:登記事項証明書、組織図、業務分掌規程、取締役会議事録など(5年分の役職が確認できるもの)
大臣認定は、実態ベースかつ書類ベースでの申請となります。
形式的に書類を提出しただけでは受け付けられず、実態を説明しようにも疎明書類がなければ受け付けられません。
実態の徹底的な整理・既存書類の洗い出しを行い、認定を受けられそうか検討が必要です。
2-2.営業所の専任技術者
行いたい建設工事の業種に対応して、専任技術者に就任可能な資格者(国家資格、実務経験等)を集める必要があります。
国家資格者を国内で雇用し、常勤・専任させられれば、OKです。
もし国家資格者ではなく、海外での実務経験等で専任技術者の就任要件を満たすのであれば、2-1と同様に、「大臣認定」の手続きが必要となります。
こちらも、実態ベースかつ書類ベースでの申請となりますので、ハードルが高いです。
なお、ここでの「営業所」の実態も確認されます。
バーチャルオフィス等は不可で、電話・FAX等の設置が求められます。
シェアオフィス等の特殊な事例では、管轄によって指導が分かれることがあるため、役所への相談が必要です。
2-3.保険加入
原則、日本において、健康保険・厚生年金保険・雇用保険に加入する必要があります。
2-4.財産的基礎
財産的基礎としては、下記要件を満たす必要があります。
一般建設業の許可を受ける場合 | 特定建設業の許可を受ける場合 |
次のいずれかに該当すること ①自己資本の額が500万円以上であること ②500万円以上の資金を調達する能力を有すること ③許可申請直前の過去の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること | 次のすべてに該当すること ①欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと ②流動比率が75%以上であること ③資本金の額が2,000万円以上であり、かつ、自己資本の額が4,000万円以上であること |
日本法人の場合は、その法人で上記要件を満たす必要があります。
日本支店の場合は、管轄の指導によって、上記要件の考え方が変わってくるため、役所への相談が必要です。
一般建設業の場合、多いのは、「日本国内での資金調達能力」を見るために、日本国内の銀行口座の預金が500万円以上であることを示すケースですので、ご参考までに。
2-5.誠実性要件への該当、欠格要件への非該当
過去の法令違反が無いかや、役員が欠格事由(破産など)に該当しないかが見られます。
3. 個別認定・事前相談 (必要な場合)
2.で要件の整備に一定の目処が付いたら、役所への相談等を進めます。
各要件で相談が発生する可能性はありますが、特に取得の可否・スケジュール感に大きく影響してくるのは、経管・専任技術者の「大臣認定」です。
上述の通り、大臣認定は、実態ベースかつ書類ベースでの申請となります。
形式的に書類を提出しただけでは受け付けられず、実態を説明しようにも疎明書類がなければ受け付けられません。
なるべくスムーズに進むよう、しっかり準備しましょう。
4.建設業許可申請
必要な相談・認定等が完了したら、いよいよ許可申請です。
許可申請のスピードは、ここまでのステップをどれだけ確実に完了させたかによって、大きく変わります。
要件の抜け・漏れがあると、改めて相談し直しになることもあるので、確実に、かつ無駄を少なく進めて行くことが大事です。
5.お困りの際はぜひご相談を
ここまで、外国会社が建設業許可を取得する際の流れ・要件などについて、全体像を説明しました。
要件・実態を徹底的に整理して、確実に・抜け漏れ無く進めて行くことは、一見遠回りに見えますが、最終的に一番無駄を減らせる方法となります。
弊社では、建設業の専門家チームで、建設業者のみなさんと並走して要件・実態の整理から実際の手続きまで、サポートさせていただきます。
ご不明点などがありましたら、お気軽にお問い合わせください。