【コラム】社会福祉連携推進法人制度が始まります
今年の6月に成立した改正社会福祉法では、社会福祉連携推進法人制度が新設されました。
そこで今回は、社会福祉連携推進法人制度がどんなものなのか、そのメリットや今後の課題などについて徹底解説したいと思います。
(参照:厚生労働省『社会福祉連携推進法人の施行に向けた検討について』)
社会福祉連携推進法人制度が新設された経緯
社会福祉連携推進法人とは、社会福祉事業を営む社会福祉法人やNPO法人を社員として、相互の連携を推進する非営利法人のことをいいます。
ざっくりいうと、複数の社会福祉法人がグループ化して設立する法人のことです。
近年、高齢者人口の増加などにより地域社会における福祉ニーズは複雑化・多様化しています。
そのため、これからの社会福祉法人には、より幅広い福祉サービスの提供が期待されているといえるのです。
ですが、個々の社会福祉法人が提供できるサービスには限界があります。
そこで、複数の社会福祉法人が相互に連携しあって、より適切に福祉ニーズに対応することができるよう創設されたのが、社会福祉連携推進法人制度です。
社会福祉連携推進法人制度の業務内容
社会福祉連携推進法人が行うことのできる業務内容は主に次の6つです。
・地域共生社会の実現に資する業務の実施に向けた種別を超えた連携支援
・災害対応に係る連携体制の整備
・社会福祉事業の経営に関する支援
・社員である社会福祉法人への資金の貸付
・福祉人材不足への対応(福祉人材の確保や人材育成)
・設備、物資の共同購入
この他にも、社会福祉連携推進業務への支障を及ぼさない限りは、実施することが可能です。
ただし、社会福祉連携推進法人自体が、社会福祉事業を行うことはできないので注意しましょう。
社会福祉連携推進法人のメリット
では、実際に社会福祉連携推進法人制度が創設されたことにより、具体的にどんなメリットがあるのか見ていきましょう。
職員の採用活動や人材育成を共同で実施
現在、多くの社会福祉法人では人材不足が深刻な問題になっています。
中小規模の社会福祉法人では、人材の確保や育成をする余力がないためです。
しかし今後は、社会福祉連携推進法人の制度の活用により、こうした問題を解消できるかもしれません。
例えば、社会福祉連携推進法人に人材採用や育成の担当者を配置し、定期的にグループ内の法人を巡回するケースが考えられます。
こうすることで、グループ内のそれぞれの法人の負担を軽減しつつ、人材を確保することが可能になるのです。
社会福祉法人による資金の貸付が可能になります
株式会社等であれば、グループ内の企業間で資金の融通をすることが可能です。
ですが、社会福祉法人では、これまで原則として法人外への支出は認められませんでした。(参照:厚生労働省『社会福祉法人における収入・収益の取扱いの現状』)
しかし、今回の法改正により、社会福祉連携推進法人を通せば、社会福祉法人同士で資金の貸付をすることが可能になります。
資金を融通し合うことで、法人同士の連携を強化し、新たなサービスの開発に力を入れることが可能になります。
社会福祉連携推進法人の今後の課題
現時点で、社会福祉連携推進法人制度はまだまだ認知度が低く、制度内容が周知されていないという問題があります。
また、現場からは大規模化することが必ずしも効率化につながるわけではないといった声もあがっているようです。(参照:DIAMOND online『社福法人に人材確保の救世主か、改正社福法で福祉事業者が変わる』)
今後は、制度内容やそのメリットを、より多くの現場の方々に周知することが課題といえます。
まとめ
社会福祉法が改正され、社会福祉連携推進法人制度が令和3年4月から2年以内に始まります。
複数の社会福祉法人が連携しあって、福祉サービスの提供や、人材の確保、資金の融通をすることが可能になる制度です。
ただし、制度内容に対する認知度が低く、今後はいかに周知するかが重要な課題となっています。
社会福祉法人設立について詳しくは、こちらからご覧ください。
また、ご不明がある場合は、お気軽に当社にご連絡くださいませ。