会社を設立のメリット・デメリット徹底解説
更新日:2024年7月24日
この記事では、会社設立のメリット・デメリットを、具体的な手続き、資金調達の方法、会社設立の際に押さえておきたいポイントなどの観点から徹底解説します。
会社設立の前に考えておきたいこと
会社設立を考える際、まず初めに考えておくべきことがいくつかあります。
設立後の運営や管理に関する知識も、事前におさえておくことが望ましいです。
そのうえで、どのような事業を展開するのか、資金調達はどうするのか、そして手続きの方法など、準備段階でしっかりと計画を立てることが重要です。
➀起業するか検討する
起業を検討する方法には、自己分析と市場調査の二つのステップがあります。
自己分析は、自分のスキルや経験、興味がどのようにビジネスに活かせるかを考えることです。
一方、市場調査ではビジネスの可能性を評価します。
需要があるか、競合他社はどのような状況かを把握することで、起業の成功確率を高めることができます。
また、ビジネスプランを作成し、具体的なステップを明確にすることも重要です。
②事業内容の計画を立てる
事業内容の計画は、会社設立における最も重要なステップの一つです。
具体的には、どのような商品やサービスを提供するのか、ターゲット市場はどこか、どのように収益を上げるかを明確にする必要があります。
事業計画を立てる際には、具体的な目標や戦略を設定し、それに基づいて行動することが求められます。
また、事業計画は資金調達の際にも必要となるため、詳細かつ実現可能な内容であることが重要です。
③個人事業主の選択肢も視野に入れる
個人事業主としてビジネスを開始・継続することも、起業を検討する際の重要な選択肢の一つです。
個人事業主の場合は、初期費用が比較的低く、手続きも簡単でスピーディーに始められるメリットがあります。
特に、資金が限られている場合や、まずは市場の反応を試したいといった場合には最適な方法と言えます。
一方で、個人事業主としてのデメリットも存在します。
例えば、損失が発生した場合、それを全て個人で負担する必要があり、リスクが高い点が挙げられます。
また、信用力が低いため、大きな案件や融資を受ける際に不利になることがあります。
将来のビジネスの規模や展開計画に応じて、会社設立と個人事業主のどちらが自分に適しているか、事業化したい場合はを慎重に吟味しましょう。
会社員・サラリーマンとして副業を行っており、独立して法人設立により事業化すべきかどうかの判断においても同様です。
④自分で手続きを行うか判断する
会社設立をすると決めた場合は、手続きを自分で行うか、専門家に依頼するかの判断も忘れてはいけません。
自分で手続きを行う場合、コストを抑えることができますが、一定の知識や時間が必要となります。
一方、専門家に依頼する場合は、手続きの煩雑さを軽減し、スムーズに設立を進めることができます。
自分の状況やリソースを考慮し、最適な選択をしましょう。
⑤会社形態を決める
会社設立の際には、どの種類の会社を設立するかを決めることが重要です。
「株式会社」「合同会社」「合名会社」「合資会社」など、様々な種類があります。
それぞれの会社形態にはメリット・デメリットがあり、事業の規模や目的に応じて最適なものを選ぶことが求められます。
例えば、株式会社は資金調達がしやすい一方、設立費用や運営コストが高くなります。
⑥資金調達の方法を考える
会社設立において、資金調達は不可欠なステップです。
自己資金や銀行融資だけでなく、投資家からの出資、クラウドファンディングなど、様々な選択肢があります。
それぞれの方法にはメリット・デメリットがあり、自分のビジネスモデルや状況に応じて最適な方法を選ぶことが重要です。
また、それぞれの実現可能性についても現実的に検討する必要があります。
会社設立のメリット
会社を設立するメリットはいくつもあります。
➀資金調達の幅が広がる
会社を設立することで、資金調達の幅が広がります。
これは、会社を設立しないで事業を進める場合よりも、銀行からの融資や投資家からの出資を受けやすくなるためです。
個人事業主に比べて、法人としての信頼性が高まるため、大きな資金が必要なプロジェクトにも挑戦しやすくなります。
事業規模が十分に大きくなれば株式公開(IPO)を目指すことも可能であり、これによって一度に大量の資金を調達することができます。
さらに、政府や自治体が法人を対象として実施している助成金や補助金にも、条件が合えば申請ができるようになります。
②節税効果が期待できる
会社設立のメリットとして最も有名なのは「節税効果」ではないでしょうか。
法人税率は個人の所得税率に比べて低いことが多く、利益が一定以上になると特に有利です。
個人事業では、所得税として最高税率45%という超過累進課税率により課税されますが、会社の場合は法人税が課税されることになります。
法人税は資本金と所得額によって変わってきますが、最高でも23.2%の一定税率です(2024年7月現在)。
さらに、資本金によっては消費税が2事業年度免除になったり、赤字を最大7年間繰り越し翌期以降に発生する利益と相殺することも可能ます。
経費として計上できる範囲も広がり、自宅の一部をオフィスとして使用している場合や、車を業務で使用している場合の経費も認められることが多いです。
役員報酬を設定すれば、個人の所得税負担を軽減することができます。
このように、会社を設立することで様々な節税対策が可能となり、結果的に手元に残る利益が増える可能性が高くなります。
③対外的な信用力が向上し、ビジネスチャンスが広がる
会社設立により、対外的な信用力が向上します。
これは、法人格を持つことで、取引先や金融機関からの信頼が得られやすくなるためです。
特に大規模な取引や新規の取引先を開拓する際には、法人であることが一つの信用指標となります。
法人名義での契約やリースも容易になり、業務を円滑に進めやすくなります。
営業活動をしやすいということも会社のメリットです。
企業との提携や共同事業を行う際にも、会社としての信用力が重要な要素となるため、ビジネスチャンスが広がるでしょう。
取引先によっては、会社でなければ取引はしないという場合もあるでしょう。
また、個人事業では許認可が取れない事業には参入することができません。
介護事業者の指定などがその例です。
株式会社や合同会社を設立することで、ビジネスのチャンスは広がるといえます。
④人材を確保しやすくなる
会社を設立することで、法人としての安定性や信頼性が増すため、人材の確保にも有利です。
また、一定規模の会社になれば、健康保険や年金、労災保険などの福利厚生を社員に提供し、働きやすい職場環境を整えることができます。
働きやすい環境を提供することができ、人材の定着率も向上します。
会社としての社会的責任を果たす意味でも、保険の適用は重要です。
社員の安心感が増すことで、業務への集中力も高まり、生産性の向上にも繋がります。
法人としての規模が拡大すれば、専門的なスキルを持つ人材や経験豊富なプロフェッショナルが応募してくる可能性も高まります。
結果として、事業の成長や競争力の強化に繋がるでしょう。
⑤事業承継がスムーズになる
会社設立により、事業承継がスムーズに進行します。
法人の資産や権利義務が会社名義で管理されているため、個人事業主のようにすべてを個人で引き継ぐ必要がありません。
これにより、事業の継続性が保たれ、従業員や取引先に対する影響も最小限に抑えられます。
また、株式の譲渡を通じて簡単に後継者に経営を引き継ぐことができ、税金面のメリットも得られやすくなります。
会社設立は長期的な視点で見た場合にも、大いに役立つといえるでしょう。
⑥決算日を自由に設定できる
会社設立の一つのメリットは、決算日を自由に設定できる点です。
これにより、事業の繁忙期や収益状況に応じて最適な時期に決算を行うことができます。
繁忙期を避けた決算日を設定することで、じっくりと決算業務に取り組むことができ、ミスや見落としを防ぐことが可能です。
また、季節変動のあるビジネスでは、売上が安定している時期を選ぶことで、より正確な財務状況を反映させることができます。
⑦有限責任でリスクを軽減できる
会社を設立する最大のメリットの一つが、有限責任によるリスク軽減です。
仮に事業に失敗し倒産してしまった場合でも、会社であれば出資者が出資した分だけの債務を負い、それ以上の責任を問われることはないため、個人の財産が守られます。
対して個人事業の場合は、事業の負債は全て自己責任で負う必要があります。
事業主が個人の全財産をもって債務を返済しなければなりません。
会社設立のデメリット
一方で、会社設立には下記のようなデメリットも存在します。
➀事務作業が増加する
一般的に、会社を設立すると事務作業が増加します。
例えば、年次の決算報告書や税務申告書の作成が必要になります。
また、法令に基づいた書類の保存や労働基準に関する記録の管理など、多岐に渡る事務処理が求められます。
株式会社を設立すると、意思決定に株主総会の決議や株主への通知など、一連の手続きを踏む必要も出てきます。
これらの作業や手続きは、個人事業主に比べて非常に手間がかかり、一定の専門知識も必要とされます。
そのため、事務処理に追われて本業に集中できない場合や、外部の専門家に依頼することでコストがかさむ場合もあります。
②設立手続きに時間と費用がかかる
会社設立には手続きに時間と費用がかかるというデメリットがあります。
まず、設立登記に必要な書類の準備から定款の認証、資本金の払い込み、法人登記など、通常は多くのステップを踏む必要があります。
これには数週間から数ヶ月の期間がかかることが一般的です。
また、個人事業主であれば見方によっては0円でも起業は可能ですが、法人を設立するとなると、公証人への手数料や登記費用、司法書士や税理士などの専門家への依頼費用も必要となり、多くの場合、総額で数十万円から数百万円程度はかかります。
これらの初期コストは、特に新規起業者には大きな負担となるため、注意が必要です。
③社会保険への強制加入
会社を設立すると、社会保険への加入が義務となります。
具体的には、健康保険、厚生年金保険、労災保険、雇用保険などの加入が必要となります。
これにより、会社としての保険料負担が増えることになります。
特に、社員が増えるほどその負担額も増大し、会社の経営コストが高くなります。
一方で、これらの社会保険は従業員にとっての福利厚生にもなるため、バランスをとることが重要です。
社会保険への強制加入は経営の一部として覚悟しておくべきポイントです。
④会社資産の自由利用制限
会社を設立することで、会社資産の利用が制限されるというデメリットもあります。
個人事業主の場合と比べて、会社設立後は法人名義の資産が増え、事業資産と個人資産の区分けがより明確になるため、これらの資産を個人的な目的で使用することは難しくなります。
例えば、会社の口座にある資金を個人の用途に使用することは法律違反となります。
このような自由利用の制限は、特に設立当初の経営者にとっては大きなハードルとなり得ます。
⑤法人住民税の負担
会社を設立すると、毎年法人住民税を支払う義務が生じます。
法人住民税は、利益が出ていない場合でも一定の税額が発生する「均等割」と、利益に基づく「法人税割」の2つがあり、特に利益が少ない初期段階では負担と感じることが多いです。
これにより、経営資金の一部が税金として消え、再投資や運転資金に回せる資金が減少することになります。
この固定費としての税負担も、会社設立を検討する際にしっかりと考慮する必要があります。
会社設立の手続きと費用
会社設立には定款の作成や登記申請など、さまざまな書類と手続きが必要です。
会社設立の基本的な流れ
会社設立には、いくつかの基本的なステップがあります。
まず、会社の概要を決定し、その後必要書類を作成します。
次に、株式会社の場合は定款の認証を行い、出資金(資本金)を払い込みます。
そして法人登記申請を行い、最終的に会社が正式に設立されます。
⑴会社の概要を決定する
会社設立の最初のステップは、会社の概要を決定することです。
具体的には、会社名、事業内容、所在地、役員構成、資本金などを明確にする必要があります。
特に会社名は重要で、他社と重複しないように注意が必要です。
また、事業内容も具体的に定め、将来的な展開を視野に入れた計画を立てることが求められます。
所在地や役員構成も、実際の運営に影響を与えるため、慎重に選定することが重要です。
⑵必要書類を作成する
会社設立には、多くの書類が必要となります。
主な必要書類には、定款、発起人会議事録、役員の印鑑証明書、出資金の払い込みを証明する書類などがあります。
定款は会社の基本規則を定めるものであり、設立者が署名し、公証人による認証を受ける必要があります。
また、発起人会議事録は会社設立を決定した会議の記録で、役員の選出や資本金の額などが記載されます。
⑶定款の認証(株式会社の場合)
株式会社を設立する場合、定款の認証が必要です。
定款とは、会社の基本的な運営規則を定めた文書であり、これが認証されることで会社設立の準備が整います。
具体的には、公証役場において公証人による定款の認証を受けます。
ここでは、定款に記載された内容が法的に問題ないかを確認し、認証を行います。
なお、この手続きには手数料がかかります。
このステップを経ることで、定款が法的に有効となり、次の資本金の払い込みや法人登記申請へと進むことができます。
⑷出資金(資本金)の払い込み
次のステップとして、出資金(資本金)の払い込みが必要です。
これは、設立する会社の銀行口座に資本金を振り込むことによって行います。
この際、振り込みを証明する書類(振込証明書など)を取得し、それを後の登記申請に使用します。
この資本金は会社の運営資金として使われるものであり、初期の事業運営に必要な資金の基盤となります。
⑸法人登記申請
会社設立の最終ステップは、法人登記申請です。
これは法務局において行われ、会社の概要、定款、役員の印鑑証明書、出資金の払い込みを証明する書類などを提出します。
この手続きを通じて、会社が法的に認められます。
法人登記申請が完了すると、会社設立が完了し、法人格を持つ企業として活動を開始することができます。
なお、登記申請には手数料がかかるため、事前に必要な費用を準備しておくことが大切です。
会社設立に必要な費用
会社設立には、様々な費用がかかります。
一般的には、公証人による定款認証の手数料が約3~5万円程度、法務局への登録免許税が15万円、収入印紙代が4万円、謄本の発行手数料が約2千円かかります。
また、司法書士や行政書士に登記手続きを依頼する場合、その報酬がさらに加わることがあります。
その他、書類の作成や銀行口座の開設に関連する費用もかかることがあります。
これらの初期費用を合計すると、最低でも30万円程度が用意しておきたいところです。
専門家に相談するメリットとポイント
会社設立には専門的な知識が必要なため、専門家に相談することが推奨されます。
司法書士や行政書士に依頼することで、手続きのミスを防ぎ、スムーズな設立が可能です。
専門家に相談するメリット
会社設立に際して、専門家に相談することには多くのメリットがあります。
例えば、司法書士や行政書士、税理士などの専門家は、会社設立に関わる法的手続きや税務に精通しています。
これにより、手続きのミスや不備を防ぎ、スムーズかつ効率的に設立を進めることができます。
また、最適な会社形態や資本構成、契約内容などについてもアドバイスを受けることができ、リスクマネジメントを強化できます。
特に初めての起業の場合、専門家の知識と経験は非常に有益であり、安心してビジネスをスタートさせるための強力なサポートとなります。
相談を検討する場合のポイント
会社設立に伴い専門家との相談を検討する際のポイントはいくつかあります。
まず、自分の事業内容や設立後の計画を明確にし、それに応じた専門家を選ぶことが重要です。
例えば、法的な手続きに強い司法書士や行政書士、税務面でのアドバイスが必要な場合には税理士が適しています。
また、専門家の実績や信頼性を確認するために、過去のクライアントの評判やレビューをチェックすることもおすすめです。
さらに、相談費用や契約内容についても事前に確認し、予算内で納得のいくサポートが受けられるかを検討することが大切です。
まとめ
会社設立には多くのメリットとデメリットがあります。
個人事業主よりも法人化する方が信用力が向上し、大きな取引や融資に有利になり、節税効果や事業成長の加速も期待できます。
一方で、事務作業や法的手続き、社会的な負担が増えるため、慎重な計画が重要です。
会社設立時には、必要書類の確認、資本金の適切な払い込み、社会保険加入の整備、会計システムや内部統制などの準備をしっかりしておきましょう。
また、法令順守や税務対策の確認も必要です。
成功する起業には明確なビジネスプラン、市場調査、資金確保、人材確保、会計システム整備が必要です。
これらを適切に把握して起業を成功させるにも、専門家のサポートを受けることを検討しましょう。
よくある質問
会社設立の手続きにはどのくらいの時間がかかりますか?
会社設立の手続きには、準備期間を含めて1ヶ月から2ヶ月程度かかるのが一般的です。定款の作成、登記申請、公証役場での認証など、各ステップに時間がかかります。また、必要な書類の収集や作成も時間がかかるため、事前にスケジュールを立てて余裕を持って進めることが重要です。
会社設立後に必要な手続きや申請は何ですか?
会社設立後には、法人税の申告、社会保険の加入、労働保険の手続きなど、様々な手続きが必要です。また、事業開始に伴う許認可や届出が必要な場合もあります。これらの手続きをスムーズに進めるためには、専門家のサポートを受けることをおすすめします。
自分で会社設立の手続きを行うのは難しいですか?
自分で会社設立の手続きを行うことは可能ですが、法律や手続きに関する知識が必要となります。また、手続きには時間がかかり、ミスが生じると再手続きが必要になることもあります。そのため、初めて会社を設立する方や手続きをスムーズに進めたい方は、行政書士や司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
会社設立にあたって専門家に依頼するメリットは何ですか?
専門家に依頼することで、手続きの煩雑さを軽減し、スムーズに会社設立を進めることができます。また、専門家からは設立後の運営や税務に関するアドバイスも受けることができ、事業の成功確率を高めることができます。特に、公共工事の入札に参加するためには、法人としての信用力が重要となるため、専門家のサポートを受けることが大変有益です。