役所調査の基礎まとめ
役所調査の方法とポイント
不動産を調査する上で欠かせないのが役所調査です。
重要事項説明書を作成する上で、役所では公的書類(エビデンス)の取得と役所の見解確認が特に重要です。
調査する項目は多種多様ですが、ここでは基本的な6項目に絞って解説します。
調査では、以下2つを徹底することをおすすめします。
・エビデンスを残す。貰える資料は必ずもらう。担当者に情報を聴取した時は、必ず所属課と名前を控えておく。
・事前に準備した上で訪問する。最低限、住宅地図・法務局資料・現地写真等が無いと、十分な情報を引き出せないリスクがあります。自治体によっては、証明書の即日発行ができなかったり、予約が必要な場合もあるため、要注意です。
※以下、資料名末尾の(写)は省略します
①都市計画の調査
部署名称の例:都市計画課・まちづくり課
ここでは、対象不動産の所在地の区域区分や用途地域・日影規制等、都市計画法に関する項目を調査します。
どんな物件種別でも、都市計画は必ず調査が必要です。「都市計画情報図」のような用途地域が示されている資料を取得しましょう。
特に調整区域の土地建物の場合は、建築根拠や再建築の可否を徹底的に調査する必要があります。なお、開発の担当部署が別にある場合は、そちらで開発登録簿を取得する必要もあります。
ちなみに、都市計画法以外にも、文化財保護法や都市再生特別措置法等の調査も同課が担当している場合があります。
②建築の調査
部署名称の例:建築指導課・建築審査課 ※都市計画と一体の部署になっていることもあります
ここでは、主に建築基準法関連の調査を行います。新築時の建築確認の資料を取得して、建築物の概要や接面道路の情報を入手しましょう。
具体的には、以下の資料を取得します。
・建築確認台帳記載事項証明書
・建築計画概要書
・指定道路図(建築基準法の道路種別を示した資料)
また、対象不動産が位置指定道路(法第42条第1項第5号道路)に接面している場合、位置指定道路の資料も取得する必要があります。
ちなみに、台帳記載事項証明書は、役所職員がその場で証明書を打ち出して発行する場合もあるため、稀に誤植があります。渡されたらその場でチェックしなければいけません。
③道路の調査
部署名称の例:道路課・道水路管理課・河川土木課
物件の前面道路を調査します。道路台帳や認定路線網図を取得して、路線名・認定幅員・現況幅員を確認します。
官民境界の確定状況についても確認します。もし官民境界が確定済みであれば、境界確定図を取得します。
接面道路は、不動産調査において最も難しい調査項目の1つです。特に、対象不動産の前面道路幅員が4m以上無い場合や、私道である場合は慎重に調査を進めることが重要です。
ちなみに、接面道路が国道・都道府県道の場合は、別途国道事務所や建設事務所に訪問する必要があります。
④上水道の調査
部署名称の例:上下水道課・水道事務所
ここでは、主に公営水道について調査ができます。
上水道埋設管図を取得し、対象不動産への引込管の有無・口径等を確認します。
宅内配管の状況まで調査したい場合には、所有者の委任状が必要となります。
対象不動産への引込か確認できない場合、私設管や井戸水の利用が予想されます。
⑤下水道の調査
部署名称の例:上下水道課・下水道課
④の上水道同様、対象不動産への下水道管引込の有無・口径を確認できます。
下水道埋設管図(下水道台帳)を取得しますが、自治体によってはインターネットによる確認ができます。
下水には、汚水・雑排水と雨水の2種類があります。これらを一緒に排水(合流式)できる場合と、別々に排水(分流式)しなければいけない場合があるため、要注意です。
下水道管が未整備の場合は、浄化槽処理か汲取式となります。
⑥その他法令の調査
都市計画法・建築基準法以外にも、調査すべき法令があります。
例えば、対象不動産が土地区画整理事業の区域内に所在している場合、担当部署で換地図や仮換地証明書を取得します。
また、対象不動産が農地の場合、農業委員会等で農地法の調査が必要です。過去に農業委員会へ届出がされている場合もあるため、台帳の記録を確認する必要があります。
その他にも、ハザードマップや埋蔵文化財の資料等を取得し、対象不動産の法令調査を行います。
実際の役所調査窓口と注意点
ここからは、実際の自治体の調査窓口と注意点を事例として紹介します。
なお、下記は2024年2月時点の情報ですので、最新の情報は役所HP等にて確認ください。
・愛知県名古屋市の調査
名古屋市の物件調査は概ね名古屋市役所の西庁舎にて完結します。
また、インターネットから調査できる項目もあります。順番に紹介していきます。
①都市計画の調査
担当部署:都市計画課(西庁舎4階)、開発指導課(西庁舎2階)
調査方法:
【都市計画】
都市計画情報提供サービスの端末が設置されている。調べたい住所を入力して調査。
インターネットでも調査可能 「名古屋市都市計画情報提供サービス」
【開発許可】
開発指導課の窓口にて開発を受けているか確認。
調査費用:【都市計画】1枚300円
※次項②建築の調査に該当する建築基準法に基づく制限の一部(用途地域・容積率建蔽率・防火地域・高度地区・地区計画等)の確認も⑥その他法令の調査「都市再生特別措置法(都市機能誘導区域・居住誘導区域)」の確認も都市計画情報提供サービスの端末で調査可能。
②建築の調査
担当部署:都市計画課(西庁舎4階)、建築指導課(西庁舎2階)、開発指導課(西庁舎2階)
調査方法:
【擁壁関係】
まず宅造法の指定区域内かを確認。
名古屋市内では千種区、昭和区、瑞穂区、守山区、緑区、名東区、天白区の各一部が該当(「名古屋市建築情報マップ」)。
宅造の区域内で且つ2mを超える擁壁が存在する場合には、開発指導課宅地規制係の窓口にて、宅造の許可を得ているか確認。
許可を得ている場合には許可番号・その年月日と完了番号・その年月日を聴取(情報の印刷不可)。
【高さの制限】
高度地区は上記①の調査で確認可能。日影規制については「中高層建築物の日影規制」にて確認。
【建築計画概要書・台帳記載事項証明書等】
名古屋市では委任状がないと台帳記載事項証明書の取得ができません。建築計画概要書および処分等の概要書については年代によって保存の状況が異なります。詳細は以下の通り。
- 建築計画概要書・・・平成8年4月1日以降に確認申請を申請され、確認済証が交付されたもの。
- 処分等の概要書・・・平成4年4月1日以降に確認申請を申請され、確認済証が交付されたもの。
平成4年3月31日以前の台帳については保管がなく、閲覧・確認がとれない(確認申請済であっても)。
【建築協定・臨海部防災区域等】
インターネットで調査可能(「名古屋市建築情報マップ」)。
都市計画情報サービスでは調査できない項目だが、建築制限に関わる重要な内容になるので漏れなく調査が必要。
また、上記サイトでは ⑥その他法令の調査 「宅地造成工事規制区域(旧法)」についても調査可能。
取得費用:印刷代として1枚10円
③道路の調査
担当部署:建築指導課(西庁舎2階)、道路台帳サービスセンター(中土木事務所ビル3階)
調査方法:
【道路種別】
建築基準法上の道路種別の確認はインターネットで調査可能 「名古屋市指定道路図」
【道路幅員】
市道・・路線名、路線の幅員情報、区間のおおよその幅員情報はインターネットで調査可能。「名古屋市道路認定図」
※道路台帳の取得は名古屋市役所緑政土木局 道路台帳サービスセンター(名古屋市中区千代田一丁目5番8号)にて。
平日 9:00~12:00 13:00~17:00の対応となるので昼休憩時間帯は注意。
国道・・名古屋国道事務所管理第一課(電話番号052-853-7324)へ確認。
【1項1号道路以外、セットバック、建築基準法第43条ただし書道路等】
疑義がある場合等は建築指導課窓口 道路審査担当へ。
調査費用:【道路台帳】1枚100円
④上水道の調査
担当部署:給排水設備課(西庁舎7階)または名古屋市上下水道局の各営業センターおよび営業所 ※担当部署の確認はコチラ
調査方法:
窓口にある図面確認用地図で、図面番号を確認。
該当するファイルから図面を探しだし、窓口担当者へ図面の印刷と埋設管情報調査を依頼。
本管・引込管・メーター口径が調査可能。引込管の印刷は不可のため、自身でメモをとる必要あり。
ただし、私設管(敷地内や私道に敷設された埋設管)の調査については、委任状と来庁者の身分証明書が必要。
調査費用:1枚20円
⑤下水道の調査
④上水道の調査 と調査方法は同じです。また窓口に設置されている地図で公共下水道排除方式(合流式・分流式)の区分を確認可能。名古屋市内は分流式・合流式(1)・合流式(2)の3分類にわかれている。
凡例 | 排除方式 | 排除の方法 | 該当区域 |
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合流式(1) | 汚水・雨水とも下水管へ流す。 | 中村区・中区の全域及び千種区・東区・北区・西区・昭和区・瑞穂区・熱田区・中川区・港区・南区・守山区・天白区の一部地域 | |
合流式(2) | 汚水は下水管へ流す。 雨水はU字側溝等の雨水排除施設へ流す。 ただし、この施設がない場合は下水管へ流す。 | 千種区・東区・昭和区・瑞穂区・中川区の一部地域 | |
分流式 | 汚水は下水管へ流す。 雨水はU字側溝等の雨水排除施設へ流す。 | 名東区の全域および千種区・北区・西区・熱田区・中川区・港区・守山区・緑区・天白区の一部地域 | |
未計画区域 |
上記内容はインターネットでもおおまかな区域確認が可能。