不動産契約における重要事項説明書(35条書面)とは?
更新日:2025年1月1日
重要事項説明書とは、宅地建物取引業法第35条に規定があり、別名「35条書面」とも呼ばれています。
その他だと、重要事項説明書を省略して「重説」という呼び方もあります。
賃貸を検討している方や不動産業者にとって、この書面は非常に重要な役割を果たします。
不動産売買や賃貸などの際に必要なもので、宅地建物取引士による説明が義務付けられています。
買主や借主側からすると、契約を結ぶ前に本当に対象不動産にリスクはないのか、
ここに住むにあたって生命及び身体に危害が加わる可能性はないのかなどを判断します。
つまり、重説は対象不動産を本当に買ったり借りたりしても大丈夫なのかを判断する材料であり基準でもあるということです。
重説に記載されている内容に間違いや不備があった場合には、買主や借主は不測の事態に巻き込まれる可能性があり、最悪の場合、命の危険にさらされることもあります。
そのため、重説作成にあたっては慎重な調査と役所への聴取が必要です。
ここでは、重要事項説明書の基本的な概要から、具体的な記載内容、確認時の注意点までを詳しく解説します。
◆もくじ◆
重要事項説明書の定義と役割
不動産契約を進める際には、物件の詳細情報、取引条件、法的制限など、あらゆる面での確認が求められます。
重要事項説明書は、こうした不動産取引の場において、買主や借主に対して物件や取引条件に関する詳細な情報を提供するための書面で、取引の透明性を確保し、トラブルを未然に防ぐために重要な役割を果たします。
不動産取引において、重要事項説明書の役割は多岐にわたります。
一つは、物件の現況や法的な情報を正確に伝えることにより、購入者や借主が安心して取引に臨めるようにすることです。
また、売主や宅建業者にとっては、適切な説明を行うことで、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。
説明が不十分であったり、虚偽の内容が含まれていた場合、売主や宅建業者は法律上の責任を負うことがあります。
したがって、重要事項説明書は不動産取引の信頼性を確保するための重要なツールです。
不動産契約の重要事項説明書を確認するタイミングは、契約前が基本です。
この確認は対面で行われることが一般的ですが、近年ではITを活用した説明(IT重説)も増えてきています。
宅建士は、重要事項説明書を交付し、口頭でも説明する義務があります。
重要事項説明書に記載される主な内容
重説への記載事項に関しては下記をご参照ください。
①対象物件に関する情報
②区分所有マンションにおける追加説明事項
③取引条件に関わる事項
④賃貸借物件における追加説明
順番に解説します。
➀ 対象物件に関する情報
取引物件に関することは、重要事項説明書の中でも大部分を占めるものです。
主なものとして法令制限などがあります。
〇〇法の区域内で建物を建てる際には届出が必要であったり、〇〇地域では△△という建物はそもそも建てられないなどがあります。
こういった情報は買主などにとって絶対に知りたいポイントです。
なぜなら、買主の中には土地を有効活用して建物を建てようと考える人や、できるだけ手間がかからない土地が欲しいと考えている人が少なくないからです。
例えば、ある土地を買った人が重要事項説明時に高層の建物を建てても良い用途地域であると間違った情報の説明を受けていたとします。
土地の買主は、それなら買おうとなって購入しました。
実際に建物を建てようとしたら、行政側から高層建物はこの地域では建てられないと言われます。
買主からしたら、大損をしたと感じるでしょう。
その後は、ほとんどの確率で売主との間で不動産トラブルに発展します。
売主側からすると、調査上でのミスによって重説に間違いがあったということでしょうが、
損害賠償を支払わなければならなくなる可能性が高いです。
その他にも、建物を建てるときに、こんなめんどくさい手続きをしなければならない土地だと最初から分かっていたら、買わなかったとなり、トラブルになるケースもあります。
このように、重説には丁寧に調査した内容を落とし込んでいかないと、たちまちトラブルに発展してしまうのです。
慣れていない人や他業務と掛け持ちで重説作成業務を行っている場合には、当然ですが調査漏れやミスが発生しやすくなります。
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具体的な記載事項
⑴ 土地・建物の詳細
土地や建物の具体的な場所、面積、用途地域などの詳細情報が記載されます。
これは、購入者が物件の価値や利用可能性を判断するために重要です。
土地や建物の詳細については、物件の現況や将来的な利用可能性に関する情報が含まれます。
例えば、土地の形状や接道状況、建物の構造や築年数などが具体的に記載されます。
これにより、購入者は物件の価値や利用方法を具体的にイメージすることができます。
また、用途地域についても記載されるため、物件の用途や建築可能な範囲を確認することができます。
⑵ 登記情報
物件の所有者や権利関係に関する情報が含まれます。
これには、登記簿に記載された情報や地役権、根抵当権などが含まれます。
登記情報は、物件の所有者や権利関係を明確にするための重要な情報です。
登記簿には、所有者の氏名や住所、物件の所在地や地番などが記載されています。
また、物件に設定されている地役権や根抵当権についても記載されており、これにより物件の権利関係を正確に把握することができます。
特に、地役権や根抵当権が設定されている場合、購入者はこれらの権利が取引にどのような影響を及ぼすかを確認する必要があります。
⑶ 法的制限や規制
建築基準法や都市計画法などに基づく法的な制限や規制についての情報も含まれます。
物件の利用方法や建築可能な範囲を確認するために必要です。
物件が所在する地域には、建築基準法や都市計画法に基づくさまざまな法的制限や規制があります。
例えば、高さ制限や建ぺい率、容積率などがあり、これらの制限に従って建物を建築する必要があります。
また、都市計画による用途地域の指定や、特別な規制がある場合もあります。
⑷ インフラ整備状況
水道、電気、ガスなどのインフラがどのように整備されているかも重要な情報です。
特に新築物件の場合、これらのインフラがどのように整備されるかを確認することが大切です。
インフラ整備状況は、物件の生活環境や利便性に直結する重要な情報です。
水道、電気、ガスの供給状況や、下水道の整備状況についても詳細に説明されます。
また、インフラが整備されていない場合や、整備が予定されている場合には、その計画やスケジュールについても説明されます。
⑸ 災害リスクと警戒区域
物件が災害リスクのある地域に位置しているか、警戒区域に指定されているかについても説明されます。
例えば、地震の多い地域や、液状化のリスクがある地域に位置しているなど、物件が災害リスクのある地域に位置している場合、そのリスクについて詳しく説明されます。
⑹ 建物性能と評価
建物の性能や評価についての情報も含まれます。
これは、物件の耐久性や安全性を確認するために必要です。
建物の性能や評価については、耐震性や断熱性能、耐久性などが含まれます。
特に新築物件の場合、最新の建築基準に基づいた性能評価が行われており、これにより物件の安全性や快適性を確認することができます。
また、既存建物の場合でも、過去の改修履歴や、建物診断の結果などが記載されることがあります。
② 区分所有マンションにおける追加説明事項
区分所有マンションの重説は、通常の重説とは異なります。
区分所有マンションとは、分譲マンションなどを指します。
ここでは、分譲マンションであるという前提に立って、解説します。
分譲マンションの重説では、通常の重説で記載する法令上の制限についての説明に加えて、管理規約等についての制限についての説明が必要です。
区分所有マンションの場合、管理規約等に規定されている事項に拘束されます。
詳細については、区分所有法という法律に規定があります。
つまり、区分所有マンションの買主には、売買契約の前に法令上の制限以外にも、管理規約等によって、〇〇という制限を受けること(区分所有建物の詳細や管理規約、修繕積立金の状況など)を理解してもらう必要があるのです。
そのような制限があることに納得してもらったうえで、購入してもらうことによって、後々のトラブルを防ぐことが出来ます。
具体的な記載事項
マンションの区分所有建物については、共有部分と専有部分の範囲や、管理組合の役割などが説明されます。
例えば、エントランスや廊下、エレベーターなどの共有部分と、各住戸の専有部分について具体的に記載されます。
また、管理組合の運営状況や、修繕積立金の状況についても説明されるため、購入者はマンションの管理体制や将来的な修繕計画を理解することができます。
その他の特約事項としては、マンションの管理規約や、特定のルールなどがあります。
例えば、ペットの飼育や、リフォームに関する規則などが記載されます。
また、修繕積立金の額や、修繕計画の進捗状況についても説明されるため、購入者は将来的な負担やリスクを理解することができます。
③ 取引条件に関わる事項
取引条件に関わる事項には、取引価格、契約解除の条件、手付金の保全措置、金銭の貸借状況、契約不適合責任などが記載されています。
これらの事項は、宅建業法を読み解いたうえで理解する必要がありますので、不動産営業等で忙しい方だと、そこまでの時間が取れない方も多いと思います。
だからこそ、法律家である行政書士に依頼するメリットがあります。
具体的な記載事項
⑴ 取引価格
物件の取引価格はもちろんのこと、支払い方法や住宅ローンの利用可否なども説明されます。
これにより、購入者は自分の予算や資金計画に基づいて判断することができます。
取引価格については、物件の市場価値や査定結果に基づいた価格が提示されます。
また、支払い方法や住宅ローンの利用可否についても説明されるため、購入者は自分の資金計画に基づいて判断することができます。
さらに、価格交渉の余地がある場合や、特別な条件が設定されている場合には、その詳細についても説明されます。
⑵ 契約解除の条件
契約を解除する場合の条件についても、具体的な事例や条件が記載されます。
例えば、物件の現況が説明と異なる場合や、売主が契約内容を履行しない場合など、契約解除が認められる条件が明確に説明されます。
⑶ 手付金の保全措置
手付金等の保全措置の概要については、宅建業法に詳しく記載されています。
宅建業者が売主となる不動産の売買で、一定額以上の手付金を買主から受け取る場合には、保全措置をとることが義務付けられています。
買主からしたら、せっかく預けた手付金だからしっかりと管理してもらいたいと思うのが自然ですから、これについても重説への記載および説明が必要です。
⑷ 金銭の貸借状況
購入者や借主が負担する費用や、売主や貸主が負担する費用が明確に説明されます。
例えば、購入者が支払う購入代金や手数料、借主が支払う賃料や敷金などが具体的に記載されます。
また、売主や貸主が負担する修繕費や管理費についても説明されるため、購入者や借主は全体の費用を把握し、資金計画を立てることができます。
⑸ 契約不適合責任
契約不適合責任については、物件の現況が契約内容と異なる場合の対応策や、売主や宅建業者の責任範囲が明確に説明されます。
例えば、物件に瑕疵が発見された場合や、説明と異なる事実が判明した場合など、売主や宅建業者が負うべき責任について具体的に記載されます。
④ 賃貸借物件における追加説明
賃貸借物件における重説では、定期借家契約に注意が必要です。
通常の賃貸借では、更新できるのが通常です。
しかし、定期借家だった場合は、更新が出来ないのです。
つまり、更新できると思い込んでいて、いざ期限になると更新できず、家を明け渡さなくてはならなくなります。
宅建業者側も借主が不測の事態に陥らないように、重説でしっかりと説明するべきです。
売買と同じで、借主にも対象不動産がどのような不動産なのかを知ってもらったうえで、契約してもらうのがベストです。
賃貸借においては、借主が圧倒的に不利な立場に立たされることが少なくありません。
借主にとって不利になることも重説に記載および説明をすることで借主を守りましょう。
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面倒な重説作成を外注して、営業に注力できます
こんな悩みがある場合、外部委託により社内負担を軽くできる可能性があります
- 物件調査・書類作成に1日~2日かけるより、営業に注力して数字を上げたい
- 担当者が少なく、書類作成の手間が売上拡大の障壁になっている
- 取扱い物件数が増えてきて、社内で対応できる余裕が無い
- 物件を仕入れる前に、専門家による法令制限チェックを入れたい
- 主に賃貸物件ばかり扱ってきたので、売買の重説がよくわからない
- 遠方物件を取引するので、全国対応している調査会社に外注したい
- 相手方の仲介が書類をチェックするので、不備の無い重説をつくりたい
- 取引相手が大手なので、体裁の整った書類をつくりたい
よくある質問
重要事項説明書って?
重要事項説明書とは、不動産取引において、売主や宅建業者が借主や買主に対して物件に関する詳細な情報を提供するための書面です。
この書面は、法律で義務付けられており、取引の透明性を確保し、トラブルを未然に防ぐために非常に重要な役割を果たします。
契約前に何を確認してもらえば良いの?
契約前には、重要事項説明書に記載された内容をしっかりと確認してもらうことが重要です。
特に、物件の現況や法的な制限、取引条件などについて詳しく確認し、借主や買主からの疑問点には必ず答え、納得のいく説明を行うことが必要です。
重要事項説明書はいつ渡すの?
重要事項説明書は、通常、契約前に借主や買主に対して交付されます。
契約後では遅いため、契約前にしっかりと確認してもらうことが重要です。
重要事項説明書の雛形は無料でダウンロードできる?
場合によっては、インターネット上で一般的な重要事項説明書のひな形を無料でダウンロードできることもあります。
ただし、具体的な物件や取引に関する詳細な情報を含む重要事項説明書を入手するには、売主や宅建業者から正式な書面を提供することが一般的です。