不動産特定共同事業

小規模不動産特定共同事業

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小規模不動産特定共同事業は、平成29年12月に新たに創設されました。
不動産特定共同事業に比べると資本金等の要件が緩和され、許認可の取得ハードルが下がりより多くの事業者が参入できるようになりました。

このページでは、小規模不動産特定共同事業の概要、必要な登録手続き、具体的な事例について解説します。

小規模不動産特定共同事業とは、投資家から出資を募り、不動産取引(売買・賃貸等)から得られる収益を分配する不動産特定共同事業のうち、小規模な事業【投資家1人当たりの出資額が100万円以下(特例投資家の場合は1億以下)かつ、全ての投資家からの出資額が1億円以内】のことです。
 
具体的には、まず投資家から出資を募り、調達した資金をもとに運用の対象となる不動産(賃貸住宅や古民家、オフィスビル等)の取得や改修工事等を行います。
その後、賃貸事業や売却等により不動産運用を行い、そこから得られる収益を投資家に配当する事業となります。

法改正とその影響

平成29年11月まで、このような事業を行うためには不動産特定共同事業法に基づく許可を原則として取得する必要があり、事業を行うことの出来る事業者が限定されていました。
しかし、平成29年12月に、新たに「小規模不動産特定共同事業」が創設され、資本金要件等の参入要件が緩和され登録事業となったことから、地域の不動産業者をはじめ、より多くの事業者がこうした事業を行うことができるようになりました。
 
小規模不動産特定共同事業を活用することにより、これまで自己資金や銀行からの借り入れのみで事業を行っていたときと比較して、資金調達手法を増やすことができます。
これにより、より多くの事業を行ったり、以前は銀行からの借り入れが行えず実現できなかったような事業についても行うことができる可能性があります。

小規模不動産特定共同事業には、第1号事業者と第2号事業者という分類があります。

小規模第1号事業

不動産特定共同事業(1号)を小規模にしたのが、小規模不動産特定共同事業(1号)です。

小規模第2号事業

不動産特定共同事業(3号)を小規模にしたのが、小規模不動産特定共同事業(2号)です。

  • 不動産特定共同事業(2.4号)に対応する小規模不動産特定共同事業はありません。
    そのため、例えば、小規模不動産特定共同事業(1号)のスキームにおいて、自己募集の範囲を超え契約の媒介を行う場合は、不動産特定共同事業(2号)許可も必要です。
  • 既存の不動産特定共同事業者(1、3号事業者)は、別途小規模不動産特定共同事業登録をうけられません。
  • 5年毎に小規模不動産特定共同事業登録の更新手続きが必要です。
    (一方、不動産特定共同事業許可には有効期限はありません)

登録要件例(1号・2号ともに同様)

  • 資本金 1,000万円
  • 出資の合計額 1億円以下
  • 投資家1人当たりの出資額 100万円以下(特例投資家の場合は1億円以下)

このように、小さい規模で不動産特定共同事業が行えるように登録要件が定められています。
詳しい内容は下表をご確認ください。 

 小規模不動産特定共同事業者
事業者になるための手続主務大臣又は都道府県知事による登録
資本金1,000万円以上
純資産純資産≧(資本金又は出資の額×90/100)
免許宅地建物取引業の免許を有していること
事業管理者の設置以下の内容をすべて満たす従業者を事務所ごとに1名以上設置していること ・宅地建物取引業の免許保有 ・不特事業にかかる3年以上の実務経験もしくは、国土交通大臣が指定した講習を受講している、もしくは登録証明事業にかかる証明を有している(ビル経営管理士・公認不動産コンサルティングマスター・不動産証券化協会認定マスターのいずれか)
約款基準に適合していること
役員及び使用人・不特法第6条10号に該当していないこと ・登録申請5年以内に、不特事業に関して不正又は著しく不当な行為をしていないこと
財産的基礎・借入金の全部または一部が次のいずれにも該当していないこと ① 元本又は利息の弁済の見込みがない ② 元本又は利息の支払いが約定支払日の翌日から3か月以上遅延している ③ 経営再建を図ること又は支援を受けることを目的として、債権者との間で金利の減免、利息の支払猶予、元本の返済猶予、債権放棄その他の自己に有利となる取り決めを行ったもの   ・次のいずれにも該当しないこと ① 会社法による特別清算、破産法による破産手続、民事再生法による再生又は会社更生法による更生手続きの開始のも仕立てが行われているもの外国の法令上これらと同種類の申し立てが行われている者 ② 会社法による特別清算開始の命令を受け、特別清算終結の決定の確定がない者、破産法による破産手続開始の決定を受け、破産手続終結の決定若しくは破産手続廃止の決定の確定がない者、民事再生法による再生手続開始の決定を受け、再生手続終結の決定若しくは再生手続廃止の決定の確定がない者、会社更生法による更生手続開始の決定を受け、更生手続終結の決定若しくは更生手続き廃止の決定の確定がないもの又は外国の法令上 これらと同種類の申し立てが行われている者 ③ 清算中のもの直近の連続する2事業年度に置いて、登記純損失が生じていないこと
人的構成以下の内容すべてに該当すること ・管理部門の責任者が定められ、法令その他の規則が遵守される体制が整っている ・管理部門の責任者と小規模不特事業の業務に係る部門の担当者またはその責任者が兼任していない
その他・不動産特定共同事業第1号事業又は第3号事業の許可業者でないこと ・ 登録申請前5年以内に、不特事業に関して不正又は著しく不当な行為をしていない ・ その他 、不特法第6条各号に該当しない法人であること
投資家から受けることができる出資の合計額1億円以下
投資家一人あたりの出資額100万円以下(特例投資家については1億円以下)

不動産特定共同事業者との大きな違いは、資本金が少なくても事業が行えることや、1投資家に対して募集金額の上限があります。
不動産特定共同事業は募集金額の上限がないのに対して、小規模不動産特定共同事業は、1投資家に対して100万円以下、募集金額の合計が1億円以下と上限があります。

小規模不動産特定共同事業を開始するためには、以下の書類を用意する必要があります。

  • 小規模不動産特定共同事業登録申請書
  • 定款
  • 登記事項証明書
  • 不動産特定共同事業契約約款
  • 小規模不特事業を行うための組織に関する事項が記載された書面 

その他、提出先の指定する書類の用意が必要です。

小規模第1号事業を申請する場合は主務大臣または都道府県知事に対して、小規模第2号事業を申請する場合は主務大臣(国土交通大臣・金融庁長官)に対して書類を提出します。
申請は登録制ですが、不動産特定共同事業と同じように、事前面談や事前申請が行われるため、しっかりと準備が必要です。

小規模不動産特定共同事業は、不動産を活用したさまざまな事業を展開できます。

国土交通省が公表している事業例をもとに、具体的な事業内容を紹介します。

空き店舗のリノベーションと賃貸事業

空き店舗を取得してリノベーションを行い、宿泊業や飲食業などの事業者に賃貸することで賃料収入を得ます。
運用期間終了後には物件を売却し、その売却益も投資家に還元されます。

賃貸住宅のリニューアルと賃貸事業

賃貸住宅を取得し、改修工事を行った後に入居者を募ります。
得られた賃料収入を投資家に分配することで、安定した収益を実現します。

空き地の取得と新築売却事業

空き地を取得し、新しい物件を建設して売却する事業です。
売却益は投資家に分配されるため、資本の回収と利益の確保が見込めます。

オフィスビルの取得と賃貸事業

オフィスビルを取得し、テナントからの賃料収入を得る事業です。
事業終了後には、物件の売却益も投資家に分配されるため、長期的な収益が期待できます。

下記に該当する方は、不動産特定共同事業に該当してくる可能性があります。

 ◇不動産(現物)を小口化・証券化し、不動産ファンドを作りたい。
 ◇不動産を取得するのに、銀行ローンの審査が厳しいので資金集めの別の方法を探りたい。
 ◇最初は一口1万円で投資を募り、顧客を広く開拓したい。

弊社では、まずは貴社の行いたい事業のヒアリングから行い、必要な許認可のご提案・申請書類作成・役所対応・申請まで、まとめて支援します。

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どんな小さなことでもお気軽にご相談ください。