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“多機能型事業所”とは?メリット・デメリットを徹底解説

多機能型事業所とは、2つ以上の異なる福祉サービスを同一敷地内で一体的に提供している施設のことです。
各サービスを単体で提供するよりもターゲット範囲を広げることができるため、利用者の獲得や稼働率上昇の期待ができます。

本記事では、多機能型事業所に関する制度・指定を受けるための条件や適用される特例に加え、多機能型事業所のメリット・デメリットを実例を交えて、徹底解説します。

【多機能型事業所として運営できるサービス】

  • 就労継続支援A型
  • 就労継続支援B型
  • 就労移行支援
  • 自立訓練
  • 児童発達支援
  • 放課後等デイサービス
  • 保育所等訪問支援

多機能型事業所とは、同一敷地内(一つの事業所)にて2つ以上の障害福祉に関する異なるサービスを提供している施設のことです。


「就労継続支援A型 と 就労移行支援」や「就労継続支援A型 と B型」、「児童発達支援 と 放課後等デイサービス」等、自由に組み合わせることができます。


すでに単独型で指定を受けている事業所でも、事業を続けながら多機能型事業所へ移行することも可能です。

市場動向やエリアニーズを確認しながら、事業規模を大きくしていくことで収益化が期待できます。

多機能型事業所として指定を受けるには、以下7つの項目をクリアする必要があります。

多くの自治体では、正式な申請手続きの前に物件の設備要件等を確認する“事前協議”のステップがあることが一般的です。


多機能型事業所として指定を受けたい場合は、以下ポイントを満たしているか(満たすことができそうか)事前協議の段階で確認があります。

①それぞれ利用定員が5人以上であること。
例:

〇児童発達支援 定員5名、放課後等デイサービス 定員5名
×児童発達支援 定員8名、放課後等デイサービス 定員2名

②事業所間の距離が概ね30分以内で移動可能な距離であって、児童発達支援管理責任者の業務の遂行上支障がないこと

③事業所の利用申し込みにかかわる調整・職員に対する技術指導等が一体的であること。

④勤務体制・勤務内容が一元管理されており、異なる場所で行う事業所間で相互支援が可能な体制が整っていること。

⑤苦情処理や損害賠償等に際して、一体的な対応ができる体制にあること。

⑥事業の目的や運営方針、営業日や営業時間、利用料等を定める同一の運営規程が定められていること。

⑦人事・給与・福利厚生等の勤務条件等による職員管理が一元的に行われるとともに、事業所の会計が一元的に管理されていること。

多機能型事業所の指定を受けられた場合、3つの項目において適用される特例があります。

人員配置基準に関する特例

多機能型事業所では、下記の通り事業間・職種間での兼務が可能な部分があるため、人件費を抑えることができます。

職種詳細
・児童発達支援管理責任者
・サービス管理責任者
共に兼務が可能
常勤の従業員・利用定員数が19名以下の場合はサービス管理責任者との兼務が可能
・児童福祉法に基づいたサービスであれば事業所間の兼務が可能

設備基準に関する特例

サービスの提供に支障が出ない範囲であれば、相談室・便所・洗面所・多目的室などを兼用することが可能です。
ただし、訓練・作業室はそれぞれのサービスごとに設置する必要があるため注意が必要です。

利用定員に関する特例

多機能型事業所の場合、単独型の最低利用定員数から 以下のように減少することができます。

サービスの種類最低利用定員数
・放課後等デイサービス
・児童発達支援
・医療型児童発達支援
5名以上
・生活介護
・就労移行支援
・機能訓練
・生活訓練
6名以上
・就労継続支援A型
・就労継続支援B型
10名以上

特例の適用はもちろん、多機能型事業所では2以上の事業を一体的に行えることが最大のメリットです。
各サービスを単体で提供するよりもターゲット範囲を広げることができるので、利用者の獲得や稼働率上昇が期待できることが挙げられます。

一貫性のある支援で利用者の成長を促せる

多機能型事業所の本来の目的にもある通り、一貫性のある支援ができることで、一人の利用者を長期的に支援できることがメリットです。

例:児童発達支援 と 放課後等デイサービス

0歳から6歳を対象にした「児童発達支援」と、6歳からの就学児童を対象にした「放課後等デイサービス」を組み合わせることで、途切れることなく一貫性のある支援を提供できます。
また、利用者(子供)の中には環境の変化が苦手な子も多くいます。


多機能型であれば、変わらず同じところに通い続けられることから、継続した支援が受けられ、本人やその保護者の安心感につながります。

例:就労継続支援A型 と 就労継続支援B型

就労継続支援B型(非雇用型)とA型(雇用型)の多機能事業所では、一人ひとりの利用者の状況に合わせた支援を提供できます。


ステップアップだけではなく、利用者の要望などを考慮してA型からB型へ柔軟に支援を変更できるのは、多機能型事業所の大きなメリットと言えます。

例:就労継続支援A型 と 就労移行支援

一般企業への就職が困難な方へ働く機会を提供するサービスである「就労継続支援A型」と一般企業への就職の就職のために必要な知識・スキルのサポートを行う「就労移行支援」を組み合わせることで、一般就労までの道のりを総合的・長期的にサポートできます。

経営の安定化を図れる

サービスの組み合わせ次第では長期利用が見込めることから、多機能型事業所では安定した経営が期待できます。


また、長期利用の満足度を向上させることで良い口コミも広がりやすく、利用者(保護者)間で長く通い続けられる事業所として注目されやすくなります

特例対象になる

上記で解説した通り、多機能型事業所では3つの特例が受けられます。
各責任者の兼務が可能となったり、設備の兼用ができたりするなど、単独型からの移行もしやすいのが特徴です。


特例は、「障がい者総合支援法に基づく2つの事業」「児童福祉法に基づく2つの事業」「障がい者総合支援法と児童福祉法それぞれの2つの事業」など、提供するサービスごとに若干内容が異なる部分があります。


どのサービスを提供するか明確にし、受けられる特例をしっかりと活用しつつ運営体制を整えておきましょう。

開所時間減算を避けられる(自発・放デイ)

単独型で児童発達支援事業所や放課後等デイサービスを運営する場合、【開所時間減算】があります。


この減算は、営業時間が6時間未満となることで、基本報酬が15%~30%も減ってしまうものです。
1サービス提供時間が短くても、2つの事業における営業時間を合算して6時間以上となればクリアとなるため、多機能型事業所では、開所時間減算が適用されにくくなります

減算要因を1つでも減らすことで、継続的な経営が実現できます。

多くのメリットがある中で、デメリットも存在します。

単独型運営よりも報酬単価が下がる

多機能型事業所は、「多機能型事業所において行うサービスの利用定員総数を利用定員として報酬を算定」することなっています。

つまり単独型の時の報酬区分から変更になるということです。

国からの給付費は、障害福祉サービスに係る人・モノ・体制に関して出るものがほとんどです。
上記特例で【人員配置基準に関する特例】を紹介しましたが、多機能型では兼務が可能となる≒人件費を削減可能となるため、報酬単価が下がる仕組みとなっています。


この報酬単価の減少は、各事業所がそれぞれに設定している人件費・販管費等によって、影響度合いが大きく異なります。事業開始前に、しっかりと試算を行うことをおすすめします。

単独型よりも安全面に注意しなければならない

多機能型事業所は、単独型よりも年齢や特性が異なる利用者が集まりやすくなるため、単独型以上に安全面に注意しなければいけません

特に、小さな子どもが利用する児童発達支援と放課後等デイサービスでは、怪我やトラブルが起きやすい傾向にあります。

また、各スタッフの負担が大きくなり、職場環境が悪化してしまうケースも少なくありません。施設の規模や利用者の年齢・人数などを考慮し、適切な人員配置を検討する必要があります。

障害福祉サービスには、多機能型事業所のように、様々な特例・制度があり、それを知っているかどうかで、大きく運営状況が変わる可能性があります。

サポート行政書士法人では、運営開始前の立ち上げからサポートしていますので、ぜひ一度ご相談ください。

初回のご相談は無料です。

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