ルールチェンジを乗りこなせ!身体拘束適性化の推進
投稿日:2023年3月27日
令和3年度障害福祉サービス等報酬改定において、障がい者虐待防止の強化も併せて行われました。
今年(令和5年)4月から、身体拘束等に係る運営基準に満たない場合、減算の対象となります。
今回のルールチェンジ
身体拘束等の適正化の推進
身体拘束について、②~④が運営基準として追加されました。また、訪問系サービスにおいても①~④の運営基準が規定されるようになりました。これらは全て令和4年までに義務化されています。
[運営基準]
① 身体拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由その他必要な事項を記録すること。
② 身体拘束等の適正化のための対策を検討する委員会を定期的に開催するとともに、その結果について、従業者に周知徹底を図ること。
③ 身体拘束等の適正化のための指針を整備すること。
④ 従業者に対し、身体拘束等の適正化のための研修を定期的に実施すること。
※ 虐待防止の取組で身体拘束等の適正化について取り扱う場合には、身体拘束等の適正化に取り組んでいるものとみなす。
[減算の取扱い]
運営基準の①から④を満たしていない場合に、基本報酬を減算する。(身体拘束廃止未実施減算5単位/日)
ただし、②から④については、令和5年4月から適用する。
なお、訪問系サービスについては、①から④の全てを令和5年4月からの適用とする。
参考:令和3年度障害福祉サービス等報酬改定について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000202214_00007.html
専門家の見解
年々増加する施設従業者による障害者虐待への対応策として今回の改定が行われました。
障害者虐待防止法では、「正当な理由なく障害者の身体を拘束すること」は身体的虐待に該当する行為とされています。(第2条第6項~第8項)
「障害者自立支援法に基づく指定障害者支援施設等の人員、設備及び運営に関する基準」では、緊急やむを得ない場合を除き、身体拘束等を行ってはならないとされています。
身体拘束には、例えば「徘徊しないように、車いすやいす、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る」、「転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。」といった行為も含まれます。
本人や他の利用者のために、良かれと思って行った措置が身体拘束にあたる可能性があるのです。
緊急やむを得ない身体拘束とは、以下の3要件全てを満たすものです。
●切迫性
利用者本人又は他の利用者等の生命、身体、権利が危険にさらされる可能性が著しく高いこと
●非代替性
身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する方法がないこと
●一時性
身体拘束その他の行動制限が一時的であること
やむを得ず身体拘束を行う場合、その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由その他必要な事項を記録しなければなりません。
このように、身体拘束が必要最低限に適性な形で行われるようにするために、本改定では、従来の記録の作成に加えて、委員会の開催や研修が義務付けられました。
身体拘束について、事業所が前述の運営基準に適合していない場合、「5単位/日」の減算が行われます。減算が適用された場合、改善計画を都道府県知事に提出し、3ヶ月後に改善状況を報告する必要があります。減算は改善が認められる月まで続きます。
本改定は単に身体拘束を禁止するためだけでなく、身体拘束に頼らない、利用者の人格を尊重した質の高い支援を実現することが目的です。委員会や研修を通じて、事業所の中での意識を高めていくことが重要です。
ルールチェンジを乗りこなすポイント
・従業員への研修を行いましょう!
運営基準④(研修の実施)に適合するだけでなく、運営基準①(記録の作成)を満たすためにも、従業員が、何が身体拘束にあたるのか、止むを得ず身体拘束をする場合の要件・必要な手続きを知ったうえで業務にあたる必要があります。
自事業所内で研修を行うのが困難な場合、協議会又は基幹相談支援センター等が実施する研修や外部コンサルタントを利用することも有効です。
・委員会を設置しましょう!
令和4年に新設・義務化された虐待防止委員会と合わせて体制を整備することでも運営基準を満たすことができます。
厚生労働省発表の障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引きにおいては、虐待防止委員会には外部委員を入れてチェック機能を持たせるなど、形骸化を防ぐ措置が推奨されています。
この他、顧問を設けるなどして、実地指導の前に記録の確認や体制の相談等を依頼することもおすすめです。