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「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び 貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案」が閣議決定されました

近年、物流業界における効率化と総合化の必要性がますます高まっています。
それに伴い、流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案が、2024年2月13日に閣議決定されました。
 
この法律案は物流業界の現状を改革し、より一層効率的な物流システムを構築するための重要な一歩です。
改正案では、物流業務のデジタル化や自動化の推進が議論されており、新たな技術導入に関して具体的な規定が設けられています。

また、貨物自動車運送事業者に対する規制緩和および支援策の拡充も盛り込まれており、業界全体の競争力強化が期待されています。
これらの改正は法令遵守の観点からも非常に重要であり、物流業務の効率化を促進する基盤となるでしょう。

この記事では、改正が業界に及ぼす具体的な影響について詳しく解説します。
法改正の背景や具体的な改正点、その業務への影響について理解を深め、業務の効率化に役立ててください。

物流は国民生活および経済を支える重要な社会インフラです。
物流産業を魅力あるものにするため、政府は本年4月から働き方改革に関する法律を適用しました。
しかし、業界は2024年問題と呼ばれる物流の停滞の懸念にも直面しています。

この問題に対応するためには、荷主企業、物流事業者、一般消費者が協力し、物流を支えるための環境整備が欠かせません。
例えば、長時間労働を減らすための配送スケジュールの調整や、IT技術を活用した在庫管理システムの導入などによる商慣行の見直しが必要です。

さらに、物流の効率化も重要な課題です。
例えば、共同配送の促進や、トラックの積載効率向上のための新しい物流ルートの開発が検討されています。
また、荷主および消費者の行動変容も不可欠です。
効率的な配送時間帯の選定や、受け取り方法の多様化を推進することで、全体の物流効率が向上します。

安全対策の強化も急務です。
最近6年間で死亡・重傷事故件数が倍増しており、これは運送業者にとって大きな課題となっています。
具体的には、安全運転教育の徹底や運行管理システムの導入、定期的な車両メンテナンスの強化が挙げられます。

以上のように、法改正の目的と背景には、物流業界の効率化と安全性の向上が大きな柱となっています。
これにより、物流業界全体の持続可能な発展が期待されています。

➀荷主・物流事業者に対する規制 【流通業務総合効率化法】

荷主・物流事業者への努力義務と判断基準の策定

新しい法律案では、荷主(商品を発送する企業)や物流事業者(運送会社など)に対し、物流効率化のために取り組むべき措置を求めています。
具体的には、トラックの積載率を向上させる工夫や、配送ルートの最適化などが挙げられます。
これらの措置について、国が具体的な判断基準を策定していくことが考えられます。
この基準は、各企業がどのような取り組みを行うべきかを明確に示すものになる見込みです。

取り組み状況の指導・助言、調査・公表

国は、荷主や物流事業者の取り組み状況を判断基準に基づいて評価します。
評価の結果に基づいて、必要な指導や助言が行われます。
例えば、取り組みが不十分な企業には具体的な改善方法を提案し、優れた取り組みを行っている企業はその事例を公表して他の企業の参考にすることが考えられます。
また、調査結果は定期的に公開され、業界全体の透明性が高まることが期待されます。

特定事業者の指定と中長期計画の作成・定期報告義務

一定規模以上の荷主や物流事業者は「特定事業者」として指定されます。
特定事業者には、中長期計画の作成が義務付けられます。
この計画には、今後数年間にわたる具体的な物流効率化の目標や手段が含まれます。
特定事業者は、計画の進捗状況を定期的に報告する必要があります。

もし、計画の実施が不十分であると判断された場合、国から勧告や命令が行われます。
これにより、計画の実行が確実に行われるようになります。

②トラック事業者の取引に対する規制 【貨物自動車運送事業法】

実運送体制管理簿の作成義務

新しい規制では、元請事業者に対して、実際に運送業務を行う事業者の名称などを記載した「実運送体制管理簿」の作成が義務付けられ、元請事業者は運送体制を明確に把握し、適正な管理を行うことが求められるようになります。
例えば、実運送体制管理簿には運送業者の連絡先や契約内容なども記載されるため、緊急時の対応が迅速に行えるようになります。

運送契約の書面交付義務

荷主、トラック事業者、利用運送事業者に対しては、運送契約の締結時に提供する役務の内容やその対価を記載した書面を交付することが義務付けられています。

これには、附帯業務料や燃料サーチャージなども含まれます。
具体的には、契約内容を明確に記載した書面を双方に交付することで、後のトラブルを防止し、取引の透明性を高めることができます。
例えば、燃料価格の変動に伴うサーチャージの適用条件などを明記することで、双方が納得した上で契約を進めることが可能となります。

他事業者の運送利用の適正化義務

トラック事業者および利用運送事業者には、他の事業者の運送の利用、いわゆる下請けに出す行為の適正化について努力義務が課されます。
具体的には、下請け業者に対する公平で適正な取引を求められるということです。

また、一定規模以上の事業者には、この適正化に関する管理規程の作成および責任者の選任が義務付けられています。
例えば、大手運送会社は、下請け業者への発注基準や支払い条件などを明文化した管理規程を作成し、専任の責任者を置くことで、適正な取引を維持するための体制を整えなければなりません。

③軽トラック事業者に対する規制 【貨物自動車運送事業法】

必要な法令等の知識を担保するための管理者選任と講習受講

新しい規制では、軽トラック事業者に対して、必要な法令や運送業務に関する知識を持った管理者を選任することが義務付けられます。
 
管理者は、定期的に講習を受け、最新の法令や安全運行のための知識を習得する必要があります。
例えば、交通規制の変更や新たな安全基準などについて学びます。
これにより、事業者全体が常に最新の情報を持ち、安全かつ効率的に運行できるようになることが期待されます。

国土交通大臣への事故報告義務

軽トラック事業者は、事故が発生した場合、国土交通大臣に対して事故報告を行う義務があります。
例えば、交通事故や運送中のトラブルなど、どのような状況で事故が発生したのか、詳細な情報を報告することが求められます。
この報告により、業界全体で事故防止に向けた対策が強化されることが期待されます。

国交省による事故報告・安全確保命令の公表

さらに、国土交通省は軽トラック事業者に関する事故報告や安全確保命令に関する情報を公表します。
これにより、業界全体で安全意識が高まり、事故防止に向けた取り組みが促進されます。
例えば、どの事業者がどのような事故を起こしたのか、その後どのような改善措置を取ったのかといった情報が公開されます。
これにより、他の事業者も同様の事故を防ぐための参考にすることができます。

物流業界は法改正により大きな影響を受けることがあります。
今回の改正では、運輸に関する規制の見直しや緩和が導入され、輸送手段の多様化が促進されるなど業界全体の効率化が期待されています。
これにより、運送業者は今にも増して柔軟かつ迅速な対応が求められるでしょう。
また、電子化が進むことで、書類作成や情報管理が一層効率化される見込みです。

法改正に伴う新しいルールをしっかり理解し適切な対応を行うことが、競争が激しくなる物流業界で勝ち抜くポイントとなるでしょう。

行政書士は書類を作成するだけの専門家ではありません。

私たちは、これから新規で運送事業を始められる企業、すでに運送事業を運営される企業のスタートアップや法令に基づく運営体制をサポートする専門家です。

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コンサルタント 須貝 祐介

    出典

    • 「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案」を閣議決定:https://www.mlit.go.jp/report/press/tokatsu01_hh_000747.html