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資金移動業者におけるマネロンガイドラインへの対応が求められる事項とは?

こんにちは、サポート行政書士法人の決済チームです。


昨今では、金融機関におけるマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策が強く求められる傾向にあります。

本記事では、資金移動業者におけるマネロン対策について、求められる事項について解説します。

為替取引における取引時確認とは

資金移動業者は、犯罪収益移転防止法で規定する特定事業者として、特定取引(①10万円を超える現金の受払いを伴う為替取引、②為替取引を継続的に又は反復して行うことを内容とする契約の締結(アカウント登録))を行うに際して、取引時確認を実施することが求められています。


取引時確認とは、個人顧客の場合には、顧客の本人特定事項(氏名、住居、生年月日)の確認に加え、取引目的及び職業を、法人顧客の場合には、顧客の本人特定事項(名称、本店又は主たる事務所の所在地)の確認、顧客の代表者等の本人特定事項(氏名、住居、生年月日)の確認に加え、取引目的、事業内容及び実質的支配者の本人特定事項(氏名、住居、生年月日)を確認することをいいます。


以下に説明するような、「特別の注意を要する取引」、「ハイリスク取引」に該当する場合、リスクに応じた対策を講じることが必要とされています。
これらの場合、取引時確認の対象となります。

本人特定事項の確認方法

取引時確認における本人特定事項の方法としては、非対面取引の場合、例えば以下の方法があります。


(自然人)
①顧客等又は代表者等から、特定事業者が提供するソフトウェアを使用して、本人確認用画像情報(当該ソフトウェアにより撮影された顧客等の容貌及び写真付き本人確認書類)の送信を受ける方法
②顧客等又は代表者等から、本人確認書類の送付を受けるとともに、当該本人確認書類に記載されている顧客等の住居宛に、取引関係文書を書留郵便等により、転送不要郵便物等として送付する方法


(法人)
①顧客等の代表者等から、顧客等の名称及び本店又は主たる事務所の所在地の申告を受け、かつ、一般財団法人民事法務協会が運営している登記情報提供サービスから登記情報の送信を受ける(当該顧客等を代表する権限を有する役員として登記されていない顧客等の代表者等から当該申告を受けるときは、上記方法に加え、当該顧客等の本店等宛に、取引関係文書を書留郵便等により、転送不要郵便物等として送付する)方法
②顧客等の代表者等から、顧客等の名称及び本店又は主たる事務所の所在地の申告を受けるとともに、国税庁・法人番号公表サイトにより公表されている当該顧客等の名称及び本店又は主たる事務所の所在地を確認し、かつ、当該顧客等の本店等宛に、取引関係文書を書留郵便等により、転送不要郵便物等として送付する方法


本人確認書類として用いることができるのは、「運転免許証」や「在留カード」、「マイナンバーカード」等です。
在留期限のある在留カードを持っている外国人の場合、在留期限の管理についても、資金移動業者には求められています。

特定取引における「特別の注意を要する取引」

対象取引以外の取引で、顧客管理を行う上で特別の注意を要するものとして次に掲げる取引を「特別の注意を要する取引」といいます。
閾値以下の取引や簡素な顧客管理を行うことが許容される取引であっても、以下の特別の注意を要する取引に該当する可能性があることに留意が必要です。


○ マネー・ローンダリングの疑いがあると認められる取引
○ 同種の取引の態様と著しく異なる態様で行われる取引


例えば、具体的には以下のような取引です。
・取引を行う目的、職業又は事業の内容等に照らし、不自然な態様・頻度で行われる取引
・通常は資金の動きがないにもかかわらず、突如多額の入出金が行われる口座に係る取引
・経済合理性から見て異常な取引


これらの取引は、継続的に取引モニタリングを行うことによって、検出を行うことが必要です。

ハイリスク取引

ハイリスク取引とは、以下のいずれかに該当する取引のことをいいます。


○ なりすましの疑いがある取引又は取引時確認に係る事項を偽っていた疑いがある顧客等との取引
具体的には、次の取引をいいます。
・取引の相手方が、取引の基となる継続的な契約の締結(例えば、預貯金契約の締結)に際して行われた取引時確認に係る顧客等又はその代表者等になりすましている疑いがある場合の当該取引
・取引の基となる継続的な契約の締結に際して取引時確認が行われた際に取引時確認に係る事項を偽っていた疑いがある顧客等又はその代表者等との取引


○ 特定国等に居住・所在している顧客等との取引
マネー・ローンダリング対策が不十分であると認められる特定国等(現時点ではイラン及び北朝鮮)に居住している顧客等との取引等をいいます。


○ 外国PEPs(重要な公的地位にある者(Politically Exposed Persons))との取引
下記の者との取引をいいます。
① 外国の元首
② 外国において下記の職にある者
・我が国における内閣総理大臣その他の国務大臣及び副大臣に相当する職
・我が国における衆議院議長、衆議院副議長、参議院議長又は参議院副議長に相当する職
・我が国における最高裁判所の裁判官に相当する職
・我が国における特命全権大使、特命全権公使、特派大使、政府代表又は全権委員に相当する職
・我が国における統合幕僚長、統合幕僚副長、陸上幕僚長、陸上幕僚副長、海上幕僚長、海上幕僚副長、航空幕僚長又は航空幕僚副長に相当する職
・中央銀行の役員
・予算について国会の議決を経、又は承認を受けなければならない法人の役員
③ 過去に①又は②であった者
④ ①~③の家族
⑤ ①~④が実質的支配者である法人


ハイリスク取引を行うに際しては、通常の特定取引と同様の確認事項に加え、「資産及び収入の状況」の確認を行うこととなります。
また、マネー・ローンダリングに利用されるおそれの高い取引であることを踏まえ、「本人特定事項」及び「実質的支配者」については、通常の特定取引を行う場合よりも厳格な方法により確認を行うこととされています。

マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン

実際の資金移動業者に求められるマネー・ローンダリング対策としては、金融庁が制定した「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」(以下、マネロンガイドライン)に基づいた態勢整備を行うこととされています。


以下では、その基本的な考え方や重要な用語について解説します。

基本的考え方

マネロンガイドラインは、金融庁が金融機関等に求めるマネロン・テロ資金供与対策の基本的な枠組みを示したものであり、資金移動業者等は、自らのリスクを評価し、リスクに見合った対策を講じることが求められます。


このガイドラインは、犯罪収益移転防止法(犯収法)や外国為替及び外国貿易法(外為法)などの関係法令を遵守するための指針となります​​。

リスクベース・アプローチ

リスクベース・アプローチは、資金移動業者等が自らのマネロン・テロ資金供与リスクを特定・評価し、それに見合った対策を講じることを目的とした手法です。
これにより、リスクの特定、評価、低減の各段階で柔軟かつ機動的な対応が求められます​​。


このアプローチは、以下のステップで実施されます​​:
リスクの特定:提供する商品・サービス、取引形態、取引国・地域、顧客属性等を包括的かつ具体的に検証し、直面するマネロン・テロ資金供与リスクを特定します。
リスクの評価:特定されたリスクの自社への影響度を評価し、リスク低減措置の基礎となる具体的な対応を検討します。
リスクの低減:リスク評価に基づき、リスクの大きさに応じた具体的な低減措置を講じます。

顧客管理(CDD)

顧客管理(カスタマー・デュー・ディリジェンス: CDD)は、金融機関等が顧客のリスクを評価し、それに基づいて取引の監視や確認を行うプロセスです。

CDDは、取引開始時、継続時、終了時の各段階において実施され、特にリスクの高い顧客に対しては、より厳格な管理が求められます​​。


取引開始時:顧客の本人確認や取引目的の確認を行います。
継続時:定期的な顧客情報の更新や取引モニタリングを実施します。
終了時:取引終了後も、顧客情報や取引履歴の記録を適切に保存します。

取引モニタリング・フィルタリング

取引モニタリングとフィルタリングは、疑わしい取引の検出と届出等を行うための重要な手段です。
資金移動業者等は、リスクに応じたシナリオや閾値を設定し、取引をリアルタイムで監視する体制を整える必要があります​​。


取引モニタリング:自らのリスク評価を反映したシナリオ・閾値等の抽出基準を設定し、その基準に基づく検知結果や疑わしい取引の届出状況等を分析します。さらに、届出をした取引の特徴や現行の抽出基準の有効性を評価し、継続的な基準の改善も求められます。
フィルタリング:取引の内容(送金先、取引関係者、その実質的支配者を含む、輸出入品目等)について照合対象となる最新の制裁リストと合致するか、検証します。また、制裁対象の検知基準がリスクに応じた適切な設定であるかを確認し、国際連合安全保障理事会決議等で経済制裁対象者が指定された際には、遅滞なく照合し、国内外の制裁に係る法規制等の遵守その他リスクに応じた必要な措置を講じます 。

疑わしい取引の届出

疑わしい取引の届出は、犯罪収益移転防止法(犯収法)に基づき行う義務です。
疑わしい取引の届出は、資金移動業者等が自らのリスク管理態勢を強化するための重要な手段です​​。


疑わしい取引の検出:顧客の属性や取引の状況を総合的に判断し、疑わしい取引を特定します。ITシステムやマニュアルを活用し、監視態勢を整備します。
届出の実施:疑わしい取引を検出した場合には、直ちに様式を用いて届出を行います。届出の過程で得られた情報を活用し、リスク管理を強化します。

経営陣の関与・理解

経営陣の関与・理解は、マネロン対策を効果的に実施するために不可欠とされています。
経営陣は、マネロンリスクが経営上重大なリスクになり得ることを理解し、管理のためのガバナンス確立等について主導性を発揮する必要があります​。


ガバナンスの確立:経営陣がリスク管理のための方針や手続きを策定し、実施を監督します。
フォワード・ルッキング:将来的なリスクを予測し、対策を講じる姿勢を持ち続けることが求められます。
全社的な取組み:経営陣が積極的に関与し、リスク管理の重要性を全社員に周知徹底します。

経営管理(三つの防衛線等)

経営管理においては、組織全体でマネロン対策を実施するために、「三つの防衛線」モデルが採用されます。
これにより、リスク管理の有効性を高めることが必要とされています​​。


第一の防衛線:営業部門を指します。マネロン・テロ資金供与対策においても、顧客と直接対面する活動を行っている営業店や営業部門が、マネロン・テロ資金供与リスクに最初に直面し、これを防止する役割を担います。
第二の防衛線:コンプライアンス部門やリスク管理部門等の管理部門を指します。これらの部門は、第1線の自律的なリスク管理に対して、独立した立場から牽制を行うと同時に、第1線を支援する役割も担います。
第三の防衛線:内部監査部門を指します。内部監査部門には、第1線と第2線が適切に機能をしているか、更なる高度化の余地はないかなどについて、これらと独立した立場から、定期的に検証していくことが求められます。

まとめ

資金移動業者に求められるマネロン対策は、日々厳しくなってきています。

資金移動業を新規に始めたいと考えている事業者の方は、上記のような規制を理解することが重要となっています。


弊社では、マネロン対策に関するアドバイスを含めた「資金移動業登録支援サービス」を提供しています。

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初回のご相談は無料ですので、ご希望の方は下記の問い合わせフォームからご連絡ください。