不動産特定共同事業 「金銭の預託について」
投稿日:2023年7月3日
不動産特定共同事業における「金銭の預託」とは
不動産特定共同事業における「金銭の預託」が発生するケースは主に以下が挙げられます。
①「投資家からの出資金の預託」
②「投資家へ支払う配当金の留保」
③「償却(売却等)時に発生する償還金の留保」
不動産特定共同事業者は「預託行為」をしても良い?
電子取引業務においては、第2号・第4号事業者のみ、
以下を満たしていれば「金銭の預託」を行っても良いとされています。
(1)第2号事業者及び第4号事業者が電子取引業務を行う場合において事業参加者から金銭の預託を受けるときは、
規則第49条第2項各号に定めるところにより、預託を受けた金銭と自己の固有財産を分別して管理する必要がある。
(2)第2号事業者及び第4号事業者は、電子取引業務に関して投資家から金銭の預託を受ける場合には、
投資家との契約書等や第1号・第3号事業者等との委託契約において、以下の事項を定めるものとする。
① 預託を受ける金銭の範囲
② 第1号・第3号事業者等への金銭の送金手続き
③ 投資家への金銭の支払手続き
④ 投資家への金銭の預託状況の通知方法
(各投資家専用の画面で常時閲覧できる、定期的に残高報告書を交付する等)
(3)電子取引業務を行う第2号事業者及び第4号事業者が投資家への分配金・償還金を留保(預託)している場合には、
少なくとも3ヶ月に一度は投資家に投資意思を確認するものとする。
(出典:不動産特定共同事業法の 電子取引業務ガイドライン第11項)
第1号・2号事業の両方の許可を持っている場合の「預託行為」の考え方
前述したとおり、第2号・第4号事業者は「金銭の預託」を行っても良いとされています。
それでは「自社の第1号事業契約の募集のために、
自社の第2号ライセンスを利用して「金銭の預託」を実施することは可能なのでしょうか。
その答えは、NOとなります。
そもそも第2号事業者の「金銭の預託」に関する規程は、他社の第1号事業者の契約について、
「金銭の預託」を行うことを想定して作られたものであるためです。
そのため、自社の第1号事業者としての契約のために第2号事業者として機能を利用して
「金銭の預託」を行うことは認められていません。
不動産特定共同事業における預託の範囲とは
前述において、不動産特定共同事業における「金銭の預託」行為とは主に、
①「投資家からの出資金の預託」
②「投資家へ支払う配当金の留保」
③「償却(売却等)時に発生する償還金の留保」
を指し、それらは第2号・第4号事業者が電子取引業務を行う場合においてのみ、
実施可能であると述べました。
しかし、例えば下記のような場合は「金銭の預託」に該当するのでしょうか。
①投資家から金銭の出資を受けた日から実際にファンドを組成するまでの期間の留保
②ファンド償還後の配当金及び償還金の一時的な留保
上記の場合、第1号事業者においても「金銭の預託」に該当するのでは、と感じます。
1号事業者における「金銭の預託行為」にあたるか否かの範囲について、
以下のパブリックコメントで国交省の見解が出ています。
第1号事業者については、規則第49条第1項に基づき、
不動産特定共同事業契約ごとに、当該契約に係る財産を、
自己の固有財産及び他の不動産特定共同事業契約に係る財産と分別管理しなければならず、
個別具体的な出資申込み前の投資先の商品が特定されていない金銭の分別管理や金銭の預託は想定されていない。
そのため、対象となる契約が特定されていない段階で、
第1号事業者が金銭の預託を受けることや既に償還されたファンドの分配金・償還金を預かることは、
出資法に抵触するおそれがあるため、認められないと考えられる。
もっとも、予め不動産特定共同事業契約に定めた上で、
事務処理のために必要な期間の範囲内で管理をすることは問題ないものと思われます。
(出典:不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドライン(案)に関する意見募集の結果と対応 No34)
つまり第1号事業者として、
出資金を預かる段階で申込する商品が特定されている場合は、
ファンド組成までの期間、その出資金を預かる行為は、
事務処理のための必要範囲内とみなされ、問題ないものと思われます。
また配当金及び償還金も、ファンドの償還後は事務処理のための必要範囲内で速やかに返還する必要があります。