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次亜塩素酸水での人体消毒には高いハードル。専門家が解説。

当社では、医薬部外品の製造販売・輸入販売をこれから行おうとされる方のスタートアップから、メーカー様への専門サービスの提供まで幅広く業務メニューを提供させていただいております。


ここでは日々の業務に関連したトピックをリリースさせていただいています。

消毒を目的とした、次亜塩素酸水についてのお問い合わせが増えています。

新型コロナウイルスの感染症の流行に伴い、「次亜塩素酸水」に注目が集まっており、弊社にも多くのご相談が寄せられております。


お手元に良い製品があり、それの使用目的もはっきりしている。

しかし、どのように手続きすればその商品を市場に出せるのかわからないというお客様からのお問い合わせが多くございますので、この場を借りて現時点で分かっている概要をお伝えいたします。


最初に結論から申し上げます。


次亜塩素酸水を用いた人体の消毒・除菌目的の製品を販売及び流通させるのは、かなりの難易度です。

年単位、下手したら十年単位の時間と、相応の費用がかかることが見込まれます。


もし「新型コロナ対策」での製品開発をお考えならば、他の前例のある成分を用いた消毒剤を開発するなどの別のアプローチをご検討いただく方がおすすめかもしれません。


なお、この記事は現時点(令和2年7月13日)において私どもで入手ができた知見をもとに作成しております。

実際のご検討の際には、最新の情報をご確認ください。

新型コロナウイルスに対する消毒方法の有効性評価

令和2年6月26日(7月7日一部差し換え)に独立行政法人製品評価技術基盤機構(以下「NITE」と呼ぶ)が新型コロナウイルスに対する消毒方法の有効性評価について最終報告を取りまとめました。


これを受け、厚生労働省が、新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について、現在わかっていることをまとめています。 


新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について(厚生労働省・経済産業省・消費者庁特設ページ)


これらの公表により、条件を満たした次亜塩素酸水を適切な量用いることで、新型コロナウイルスの感染力を一定程度減弱させることが認知されました。

引用:厚生労働省 新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について(厚生労働省・経済産業省・消費者庁特設ページ)令和2年7月13日午前11時閲覧


しかし、公表されている表上では、次亜塩素酸水はモノへの消毒・除菌は◌、手指は-(未評価)となっています。

なぜこのような取り扱いなのでしょうか。次に説明いたします。

消毒・除菌を行う対象が異なると、規制上の区分が変わる

端的にお伝えするならば、消毒・除菌を行う対象が「人体」であるものは医薬品または医薬部外品として規制を受けるが、今回行われた評価は医薬品又は医薬部外品に対する評価ではないため、モノへの効果しか言及ができないから、ということになります。

人体への消毒・除菌を行う「医薬品」又は「医薬部外品」

では、人体への消毒・除菌を次亜塩素酸水が訴求するためにはどのような手続きが控えているのでしょうか。

 

人体に使用することで消毒・除菌を行える製品(機械器具等を除く)は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「医薬品医療機器等法」と呼ぶ)において、「医薬品」又は「医薬部外品」のいずれかとなります。

 

では製品がこのどちらに該当するのか、という問題ですが、人体の消毒・除菌の製品は、基本的には「医薬品」。

ただし、下記のいずれかに該当すれば、「医薬部外品」となります。

 

厚生労働大臣が指定する医薬部外品のうち、「(9)殺菌消毒薬」(新範囲医薬部外品)

厚生労働大臣が指定する医薬部外品のうち、「(15)すり傷、切り傷、さし傷、かき傷、靴ずれ、創傷面等の消毒又は保護に使用されることが目的とされている物」(新指定医薬品)

厚生労働大臣が指定する医薬部外品のうち、「(25)薬用化粧品」の中の「薬用石けん(洗顔料を含む)」

 

では、医薬品、そして医薬部外品のア、イ、ウについて順に見てみましょう。

長くなっておりますので、はじめにまとめから参ります。

 

まとめると、上フロー図のようになります。(詳細は続く記載アイウをご確認ください)


次亜塩素酸水を医薬部外品としようとするとき、医薬部外品としての前例がないこと、有効成分としても添加物としても収載されていないことが大きく、次亜塩素酸水を主成分として、人体への消毒・除菌を目的とする製品にすることのハードルが高いものだと判明しました。

ア.新範囲医薬部外品としての次亜塩素酸水の可能性

アの新範囲医薬部外品には、次のいずれかであることが示されています。

(平成20年11月14日薬食審査発第1114001号)


①H16年7月30日にOTC医薬品から医薬部外品になったもの

②既承認品目と「区分(今回の製品だと「殺菌消毒薬」)

「効能又は効果」「用法及び用量」「剤型等」が同一で「有効成分の組合せ及び分量」が同一又は2既承認品の範囲内であるもの。


平成16年7月30日を超えている現在、①はあり得ません。

よって、アのルートですと②、すなわち自社製品に類似する医薬部外品の既承認品を探して申請することになります。

イ.新指定医薬部外品としての次亜塩素酸水の可能性

イの新指定医薬部外品(規制緩和で医薬部外品に)は承認基準が示されています。


該当するのは「外皮消毒剤 製造(輸入)承認基準」となり、ここにエタノールの濃度が「76.9~81.4vol%」であること他が示されています。


よって、イのルートですと、この承認基準に合致させていくということになります。


しかしながら、この承認基準では有効成分として配合できる成分として「アクリノール」「エタノール」塩化ベンザルコニウム」「塩化ベンゼトニウム」「過酸化水素」「グルコン酸クロルヘキシジン液」「ポビドンヨード」及び「ヨードチンキ」が示されているのみであって、次亜塩素酸水にかかる成分は示されていません。

よって、次亜塩素酸水を有効成分とした製品では、残念ながらイのルートは成り立ちません。


ただし、次亜塩素酸水を添加物として、「承認基準において有効成分と示された成分」を有効成分とした製剤に使用することで新指定医薬部外品とすることは可能かもしれません。

ですがこの場合、その組み合わせ及び配合量で使用されている前例の提出又は次亜塩素酸水の添加物としての安全性や配合妥当性について資料を用いて説明する必要があります。


現時点で次亜塩素酸水が医薬部外品の添加物リストに収載されていない状況からも、試験や審査に多大な時間がかかることが想定されます。

ウ.薬用石けんとしての次亜塩素酸水の可能性

ウについては、薬用石けん(洗顔料を含む)の場合、効能効果として「皮膚の清浄・殺菌・消毒」及び「体臭・汗臭及びにきびを防ぐ」を謳うことが許されている(平成29年9月29日 薬生監麻発0929第5号)ため、名前を挙げています。


いわゆる固形石けんではない、液体洗浄料でもこの 「 薬用石けん(洗顔料を含む) 」のカテゴリに入れることが出来ます。(東京都への電話照会による見解)


しかし、「 薬用石けん(洗顔料を含む) 」は、使用後水で洗い流すことを前提としていることから(東京都への電話照会による見解)、製品によってはそぐわない可能性も出てくるかと思います。


薬用せっけんの承認審査については留意事項として課長通知が出されており、

①この留意事項に適合する、

②承認前例を明示する資料を用意する(留意事項の範囲外のものについて)、

③有効性、安全性等についての必要な資料を用意する(留意事項の範囲外のものについて)の

いずれかのルートとなります。(平成30年3月29日、薬生薬審発0329第13号)


この留意事項に示された有効成分は「イソプロピルメチルフェノール」「グリチルリチン酸ジカリウム」「グリチルレチン酸ステアリル」「サリチル酸」及び「濃ベンザルコニウム塩化物液50」であり、次亜塩素酸水にかかる成分は示されていません。


よって、次亜塩素酸水を有効成分とした製品では、残念ながら①のルートは成り立ちません。


また、②については、前述の通り現時点(令和2年7月13日時点)において、医薬部外品の次亜塩素酸水製品は弊社では把握できていないのが現状です。

③のルートではその準備資料、試験が膨大になることが予想されます。

このように、次亜塩素酸水を有効成分とした薬用せっけんでも難易度が高いだろうことが推察されます。


前述の通り次亜塩素酸水を添加物として、「承認基準において有効成分と示された成分」を有効成分とした製剤に使用することで薬用石けんとすることは可能かもしれません。

ですがこの場合、その組み合わせ及び配合量で使用されている前例の提出又は次亜塩素酸水の添加物としての安全性や配合妥当性について資料を用いて説明する必要があります。


現時点で次亜塩素酸水が医薬部外品の添加物リストに収載されていない状況からも、試験や審査に多大な時間がかかることが想定されます。

おわりに

手指を含む人体の消毒・除菌を行う製品(機械器具を除く)、医薬品品または医薬部外品に該当し、その生産及び流通は厳しく管理されるものです。

そして、次亜塩素酸水を主成分とした製品の承認は、医薬品はもちろん、医薬部外品であっても非常にハードルが高いことが判明しました。


ちょっと視点を変えて、既に有効成分として利用されている成分、前例のある成分を上手に利用して、ハードルの低い所から人体の消毒・除菌目的の製品開発を始めてみるというのも一手かと思います。

サポート行政書士法人に相談する、という選択肢

新型コロナウイルスの流行はいまだ収束とは言えない状況で、経済への影響は計り知れません。

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