行政処分事例紹介(就労継続支援A型)
投稿日:2023年4月29日
報道発表 |
- 2023年4月15日、札幌市保健福祉局障がい保健福祉部障がい福祉課は、
就労継続支援A型を運営している株式会社ビーグル(事業所名:ビーグル)の
指定障害福祉サービス事業者の指定の一部の効力停止を発表した。 - 理由は、訓練等給付費の請求に関し不正があったためである。
【出典】
札幌市「指定取り消し及び指定の効力の停止」
規制解説 |
・指定の取り消し等
今回の行政処分は、障害者総合支援法に則ったものである。
障害者総合支援法第50条第1項第5号では、「介護給付費若しくは訓練等給付費又は療養介護医療費の請求
に関し不正があったとき」に、指定障害福祉サービス事業者に対して指定の取り消し、又は期間を定めて
その指定の全部若しくは一部の効力を停止することができるとしている。
本件はまさしく、本事業所を利用していない利用者にサービスを提供したと捏造し、本来ならば受領でき
ない訓練等給付費を不正に請求したことで、行政処分を受けた。
専門家の視点 |
- 訓練等給付費の架空請求により行政処分を受けた事案。障害福祉サービス事業者は、給付費等を国保連合会を通じて市町村等に請求し、審査を経て支払を受ける。その請求書類の作成は、事業者にとって重要な資金源となるため、不備なく完璧に作成をする必要があるが、同時に事業所側が作成を行うため、不透明性が懸念されるのは周知の事実である。実際に各市町村で障害福祉サービス事業者の不正請求は後を絶たず、今回もその一件に当てはまる。
- 本件は、利用者1名に対し15日間の不正請求を行った結果、行政側は3ヶ月の新規利用者受け入れ停止及び不正請求分の報酬額(112,782円)の返還+40%(45,112円)の加算額を請求した。障害者総合支援法第50条第1項では、障害福祉サービス事業所の不正行為の種別によって、具体的な処分内容が決まっているわけではない。つまり、行政側の裁量と不正行為の内容を加味された処分になるのだが、本件は数ある不正行為の中で比較的軽めの処分を受けており、指定取り消しや運営停止処分・報酬額減額処分を受けていないことから、改善の余地が十分にあると判断できる。
- 本件は故意的に不正請求を働いたが、実際に意図せず不正請求を行なってしまうことは往々にして起こり得る。今でこそ障害福祉向けの請求ソフトが多く存在するが、あくまでも請求先の国保連は、事業者が作成した請求書をベースに報酬額の支払いを行なっている。市区町村と大きくつながりを持つ事業であるからこそ、透明性を明確にし、互いに強固な信頼関係を築くことが重要である。利用者にとっても事業所従業者にとっても、より良い環境となるよう、今一度、現在の加算・減算の要件に当てはまっていないかを確認し、請求書作成のフローを見直すことが求められる。
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