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金商業者の帳簿書類「顧客カード」

金融商品取引業者が作成すべき書類の内、「顧客カード」について解説します。

顧客カードは、証券検査等でも確認される重要書面です。

弊社で実施する内部監査でも必ず確認します。

にも関わらず、作成できていない/更新できていない等、適切な運用がなされていないケースが多いです。

この機会に、自社の顧客カードの運用状況を確認しましょう。

「顧客カード」はなぜ必要か

顧客カードとは、顧客の氏名/住所/生年月日等、顧客情報を記録した帳簿書類のことです。

金融商品取引業者は、適合性の原則等(金商法第40条)に基づき、その顧客に適した金融商品を、その顧客に適した説明内容・方法により勧誘等を行うことが求められます。

“その顧客に適した商品提案を行う”には、予め顧客の属性情報等を把握しておく必要があり、この「顧客情報を入手→記録→保存」の工程で必要になるのが「顧客カード」です。

つまり、適合性の原則等を遵守する上で必要な書面が「顧客カード」なんです。

実務上は、金融商品取引業者は、以下の手順を経ることになります。

①予めその顧客に関する情報(氏名・生年月日・資産状況・投資目的等)を入手する

②入手した顧客情報を顧客カードに記録・保管する

③顧客カードの内容をふまえて、顧客の投資意向や投資判断能力に適した金融商品の勧誘等を行う

④顧客カードの内容を更新・共有等を行い、適切に管理する

なお、顧客カード自体は、金融商品取引法に法定されたものではなく、監督指針や各種協会の自主規制規則の中で、作成・保存等が求められているものです。

顧客カードに関する実務

[作成方法]

顧客カードは、基本的に、以下いずれかの方法で作成します(紙媒体又は電磁的記録)。

① 顧客自身が記入・入力等をする方法

② 金商業者が顧客からヒアリングして作成する方法

実務上は、顧客対応を行う営業部門の担当者が顧客カードを作成(又は顧客の入力内容を確認)し、その記載内容等について、コンプライアンス部門にて確認・検証し、管理するケースが一般的です。

不動産信託受益権取引等、比較的顧客の年齢層が高く、紙媒体での契約締結が発生するサービスにおいては、顧客自身に「お客様情報シート」「意向確認シート」のような形で記入してもらうケースが多い印象です。

一方、インターネット取引等の非対面取引・プラットフォームサービスにおいては、顧客が自ら入力した情報がそのままマイページとして蓄積され、このマイページを顧客カードとして、顧客自身いつでも変更でき/金商業者も閲覧・編集等ができる形で運用しているケースもあります。

自社の顧客層・サービス提供方法等に応じて、顧客も金商業者も極力負担の少ない方法を検討しましょう。

なお、いずれの方法にせよ、基本的に顧客から情報を入手することになりますが、顧客の自己申告内容を鵜呑みにせず、可能な限り他資料との照合を行ったり、他情報との整合性を確認する等が重要です。

[記載項目]

顧客カードに記載すべき内容としては、以下の項目が挙げられます。

氏名、住所、生年月日、連絡先、職業、投資目的、資産の状況、投資経験の有無とその内容 等

実際は、所属する協会によって、その自主規制規則の中で別途規定している場合があるので、要注意です。

例えば、日本証券業協会の自主規制規則(「協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則」)では、顧客カードに記載すべき事項として以下を挙げています。(2025/4時点)

1 氏名又は名称
2 住所又は所在地及び連絡先
3 生年月日(顧客が自然人の場合に限る。次号において同じ。)
4 職業
5 投資目的
6 資産の状況
7 投資経験の有無
8 取引の種類
9 その他各協会員において必要と認める事項

[保存方法]

顧客カードの保存は、紙媒体だけでなく、電磁的記録でも可能です。

なお、帳簿書類を電子媒体で保存する場合、監督指針上に留意点が規定されているので注意しましょう。

(金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針>Ⅲ-3-3 業務に関する帳簿書類関係>(6))

[その他(共有・変更)]

顧客カードは、「作成したら終わり」ではなく、必要なタイミングで顧客と共有したり、顧客情報の適時把握に努め必要に応じて変更する等、適切な顧客情報管理が必要になります。

具体的には、監督指針やパブリックコメントにおいて、以下の対応が求められています。

・作成時:顧客カードに登録された顧客の投資目的を金商業者と顧客の双方で共有すること

・変更時:顧客の資産状況・投資目的等が変化した場合、顧客確認の上顧客カードを変更すること

・変更時:変更後の登録内容を金融商品取引業者と顧客の双方で共有すること

まとめ

以上、「顧客カード」についてでした。

なお、適合性の原則等(金商法第40条)については、顧客が特定投資家の場合は適用除外となる為、特定投資家限定の事業を行っている金商業者の方は、より柔軟な顧客カード対応とすることも可能です。

(ただし、「特定投資家限定だから、顧客カード作成不要」とするのは危険です)

サポート行政書士法人では、貴社の事業特性に適した顧客カード(様式)の作成から、その作成状況の監査(内部監査支援)まで、金融商品取引業者の実務に関する支援を提供しています。

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