[金融・不動産事業者]マネロン対応できていますか?
投稿日:2025年4月11日
最近、以下のような「マネロン対応」に関するお問い合わせが増えています。
✓ マネロン対応についての報告命令が来てしまった・・・
✓ 行政からマネロンの実態調査/ギャップ分析報告を求められている・・・
✓ 内部監査でマネロン対応について不備指摘を受けてしまった・・・
なぜ今マネロン対応が求められているのか/どう対応すべきなのか、解説します。
マネロンガイドライン対応期限
金融庁では、平成30年2月、金融機関等における実効的なマネロン・テロ資金供与対策の実施に向け、「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」)を策定しています。
このガイドラインには、マネロン・テロ資金供与対策として金融機関等が講じるべき措置や必要な態勢整備等が細かく規定され、特に「対応が求められる事項」と「対応が期待される事項」とがそれぞれ明確に示されています。
更に、金融庁では、令和3年5月、ガイドラインで対応を求めている事項に対する“対応期限”を設け、それまでに必要な態勢整備を完了するよう、各業界団体等を通じて要請してきました。
その対応期限が、「令和6/2024年3月末」です。
そして、その対応期限経過後、行政や協会等から各対象事業者に対して、マネロン対応がどの程度実施できているかを確認する”アンケート”や、マネロン対応状況の報告を求める”報告命令”等が発出されるに至っています。
なぜ今マネロン対応なのか
そもそも「マネロン等対策」として絶つべき行為として、以下が挙げられます。
①マネー・ローンダリング(Money Laundering/資金洗浄)
犯罪や不当な取引で得た収益を、正当な取引で得たように見せかけたり、多数の金融機関等を転々とさせることでその出所や真の所有者が分からなくする行為
②テロ資金供与
テロの実行支援等を目的としてテロリスト等に資金を渡す行為
③拡散金融
核兵器等の大量破壊兵器の拡散に関与する者へ資金を渡す行為
国際的に核兵器やテロの脅威が増加する中、犯罪・テロ組織の資金獲得手口は日々巧妙化しています。
マネロン等が見逃されると、犯罪による収益が犯罪行為や犯罪組織の維持・強化に使用され、更なる犯罪・テロ行為を助長しかねず、結果的に、国民生活の安全や健全な経済活動が阻害されることになります。
犯罪者等につながる資金を断つべく、日本はもちろん国際社会全体でマネロン等対策を強化しています。
特に、日本は、国際的にマネロン等対策の中心的な役割を担う「FATF (Financial Action Task Force/金融活動作業部会)」に加盟しており、FATF声明や勧告に従って日本国内のマネロン等対策を強化している他、FATF加盟国では、各国のマネロン等対策の有効性や実効性について相互審査を行っています。
そしてこの日本に対する相互審査は、これまで1994年・1998年・2008年・2021年の4回実施されています。
FATFでは「2025年から第5次審査が順次始まる」としており、日本でも第5次相互審査を見据え、更なる対策強化が図られている所です。
ガイドラインの対象事業者
ガイドラインの対象は、「犯罪収益移転防止法第2条第2項に規定する特定事業者の内、金融庁所管の事業者」です。
例えば、以下の事業者が該当します。
銀行、信用金庫、保険会社、金融商品取引業者、特例業務届出者、信託会社、
不動産特定共同事業者、小規模不動産特定共同事業者、貸金業者、資金移動業者、
電子決済手段等取引業者、暗号資産交換業者、宅地建物取引業者 等
ガイドライン対応期限を迎え、各行政機関や協会等から対応状況を確認するアンケート等が発出される中、
「当社は小規模事業者だから関係ない」
「投資助言業のみだからマネロンは関係ない」
「金融商品取引業者としての実績がないからマネロンは関係ない」
「当社は国内取引・特定投資家限定だからマネロン対応は必要ない」
といった独自の解釈をされているケースがありますが、ガイドラインでは、特段事業規模や実績有無等による例外は設けていないので注意して下さい。
なお、ガイドラインでは、同一対応を一律に求めている訳ではなく、「自らの業務規模・特性等に応じた~」「自らの規模・特性や業務実態等を総合的に考慮し~」等のように、自社の事業特性等をふまえて特定・評価したリスクに応じた個別具体的な対応を求めています。
ガイドラインにどう対応すべきか
ガイドラインには、「対応が求められる事項」「対応が期待される事項」が規定されています。
特に重要なのは、「対応が求められる事項」です。
ガイドラインでも、
”「対応が求められる事項」に係る措置が不十分であるなど、マネロン・テロ資金供与リスク管理態勢に問題があると認められる場合には、業態ごとに定められている監督指針等も踏まえながら、必要に応じ、報告徴求・業務改善命令等の法令に基づく行政対応を行い、金融機関等の管理態勢の改善を図る”
旨が明記されています。
これからガイドラインへの対応を実施する場合は、優先的に「対応が求められる事項」に沿って、確実に実施していきましょう。
そして、「対応が求められる事項」として取り組むべきは、大きく、以下2点になります。
[リスクベース・アプローチによる対応]
① リスクの特定
提供商品・サービスや、取引形態、取引に係る国・地域、顧客の属性等のリスクを包括的かつ具体的に検証し、自らが直面するマネロン等リスクを特定すること。
② リスクの評価
特定したリスクについて、自らへの影響度等を評価し、リスク評価結果を文書化すること。
③ リスクの低減
特定・評価したリスクに対して、講ずべき実効的な低減措置を決定し、実行すること。
特に、顧客管理(カスタマー・デュー・ディリジェンス/CDD)や取引モニタリング・フィルタリング等により、リスク低減措置の実効性を高めること。
[管理態勢の構築とその有効性の検証等]
① マネロン等対策に係る方針・手続・計画等の策定・実施・検証・見直し(PDCA)
② 経営陣の関与
∟ 役員の中からマネロン等対策の責任者を任命し、必要な権限等を付与
∟ 適切な資源配分(所管部門への専門性を有する人材の配置、必要な予算の配分等)
③ 管理態勢の構築等
∟ ”三つの防衛線”の考え方に基づく、マネロン等リスク管理態勢の構築
∟ 専門性・適合性等を有する職員の確保・育成等
これらを実施すると、自ずと以下の書類等が整備されるはずです。
・特定事業者作成書面等
・リスク評価書
・マネロン等に関する対応方針や社内規程
・顧客の受入れに関する方針
・マネロン等対策の適切性や実効性等を対象に含んだ監査計画
なお、「特定事業者作成書面等」は、犯罪収益移転防止法に基づき作成が義務付けられている書面ですが、リスク評価書に相当するものとされており、「特定事業者作成書面(リスク評価書)」として作成するケースが多いです。
まとめ
マネロン対応について記載しましたが、必要な対応はできていましたか?
サポート行政書士法人では、ガイドライン対応として、貴社の事業特性等をふまえリスクを特定・評価し、必要な低減措置を決定し、実行する等、一連の必要な対応を伴走型で支援しています。
内部監査支援では、「ガイドラインへの対応状況の確認」「各種低減措置の実効性等の検証」等も監査項目に含める等、マネロン等対策に関する監査も行っています。
自社のマネロン等対策に不安がある方・興味がある方は、下記よりお問い合わせください。
初回無料相談実施中です。
(著者:増野)