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クロスボーダー収納代行を為替取引規制に適用させることが金融審議会で議論される

顧客から「クロスボーダー取引で資金移動業に該当するか」という相談を受けることがあります。
例えば、海外ECサイトでの決済代行を行う事業者が、日本国内の顧客から代金を受け取り、海外の販売者に送金する場合や、投資案件に関連する送金などが挙げられます。

これまでは、ビジネススキームによっては資金移動業に該当せず、収納代行として整理されていたケースもありました。
しかし、近い将来、これらの取引が資金移動業に該当する可能性が高まっています。

クロスボーダー収納代行が為替取引規制に適用させることが金融審議会で議論される

2024年12月9日に行われた第6回金融審議会「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」では、クロスボーダー収納代行の規制について重要な議論が行われました。
例えば、海外ECサイトでの決済代行を行う事業者が、日本国内の顧客から代金を受け取り、海外の販売者に送金する場合や、投資案件に関連する送金などが該当します。
このような事例において、支払人Xと受取人Yの所在地が国境を跨ぐ場合、クロスボーダー収納代行に該当することになります。

クロスボーダー収納代行の該当性を判断する際には、収納代行業者と利用者間の合意内容が重要となります。
例えば、「事業者Aが支払人Xから商品やサービスの代金を受領し、受取人Yに支払う」との合意がある場合、事業者Aは「支払人Xと受取人Y間の収納代行」を依頼されていると評価されます。
この際、支払人Xと受取人Yの所在地が国境を跨ぐ場合、クロスボーダー収納代行に該当します。

また、複数の収納代行行為が存在する場合も考慮されます。
例えば、支払人Xから事業者Aへの支払い段階で、別の決済事業者Cが収納代行を行う場合、各収納代行行為が別々の者によって行われ、それぞれがクロスボーダーである場合、当該決済事業者Cの行為もクロスボーダー収納代行に該当し得ます。

現時点の案では、以下のような規制対象や対象外が提案されています。

規制の対象となる行為(案)

クロスボーダー収納代行のうち、「金銭債権の発生原因の成立に関与しない」者が行うものは、銀行や資金移動業者が行うクロスボーダー送金と同様の機能を果たしていると考えられます。
そのため、以下の事業者については、為替取引規制を適用し、資金移動業の登録を要することが提案されています。

海外EC取引の収納代行業者日本国内の顧客から代金を受け取り、海外のECサイトの出品者に送金するケース
オンラインカジノの収納代行業者国内の支払人から資金を受け取り、海外のオンラインカジノ事業者に送金するケース
海外投資案件の収納代行業者国内投資家の資金を受け取り、無登録の海外金融商品取引業者等に送金するケース
インバウンド旅行者向け収納代行業者海外の旅行者からの支払いを受け取り、国内の事業者に送金するケース

規制の対象外となる行為(案)

一方で、以下の行為については、直ちに為替取引規制を適用する必要性は高くないと考えられています。

オンライン・マーケットプレイスや委託販売金銭債権の発生原因の成立に関与しているケース
エスクローサービス(海外代金引換等)当事者双方の債務を同時に履行することでトラブル防止機能を果たすケース
グループ内取引経済的一体性が認められる資本関係のある者が行う収納代行のケース
他法令が規律する収納代行クレジットカードの清算業務など、他の法令でリスク軽減措置が講じられているケース

これらの背景を踏まえ、クロスボーダー収納代行に関する規制の在り方は、多角的な視点から検討が進められており、利用者保護と事業活動のバランスを考慮した適切な規制枠組みの構築が求められています。
特に、資金移動業の登録を要する事業者や、規制の対象外となる行為については、今後の動向を注視しつつ、必要に応じて為替取引規制適用の必要性を再検討することが考えられています。

参考情報:第6回 金融審議会 資金決済制度等に関するワーキング・グループ 事務局説明資料 (P9~13)
https://www.fsa.go.jp/singi/kessaiseido_wg/siryou/20241209/1.pdf

終わりに

このように、クロスボーダー取引における資金移動業の該当性については、事業者のビジネススキームや取引形態によって判断が分かれるため、専門家への相談が重要となります。

私たちも、顧客からの相談を受ける中で、最新の規制動向を踏まえた適切なアドバイスを提供できるよう努めてまいります。

主任コンサルタント 行政書士
公認AMLスペシャリスト 
清水 侑

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