ルールチェンジを乗りこなせ! 管理業の要件見直し
投稿日:2023年3月15日
こんにちは。
サポート行政書士法人の塚本です。
住宅宿泊事業(以下、民泊と呼びます)を運営する住宅宿泊管理業の資格要件を見直す案が公表されました。
ここでは、その概要について詳しくお伝えします!
今回のルールチェンジ
不動産事業に関する実務経験や資格が必要要件であったのが、講習を受講することで要件を満たすことができることに!
報道発表
- 2022年12月7日に国土交通省主催で「地方における住宅宿泊管理業の担い手確保に向けた関係団体等との意見交換会(第1回)」を開催しました。
2022年6月7日に閣議決定された規制改革実施計画において、住宅宿泊管理業の登録に必要な体制の要件について、所定の講習の受講修了者も新たに認めるなどの必要な措置を行うとの方針が示されたことを受け、新たに創設を検討する講習の内容や制度の在り方について、関係団体等と意見交換を行いました。 - 2023年3月7日に国土交通省主催で「地方における住宅宿泊管理業の担い手確保に向けた関係団体等との意見交換会(第2回)」を開催しました。
2022年12月7日に、類似業種における講習実施団体、規制改革の要望・提案団体、関係省庁等と第1回意見交換を実施したところですが、その内容を踏まえ、今回、新たに創設する講習の内容や制度の案について、意見交換及び取りまとめを行いました。
[出典]
・「地方における住宅宿泊管理業の担い手確保に向けた関係団体等との意見交換会」
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001575220.pdf (国土交通省HPより)
・「地方における住宅宿泊管理業の担い手確保に向けた関係団体等との意見交換会(第2回)」
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001593236.pdf (国土交通省HPより)
行政見解
1. 登録要件見直し案の背景
管轄行政である国土交通省は、民泊を行う施設、いわゆる民泊施設を運営する住宅宿泊管理業の対象要件を緩和し、不動産事業に関する実務経験や資格を不要とする方針を固めました。
今回の要件緩和の背景としては、「地方において空き家等を利用して民泊を行う際に、要件を満たして住宅宿泊管理業者になることが難しい」、「近くに住宅宿泊管理業者がいなくて委託先が見つからない」といった声もあり、今回要件緩和を検討することとなりました。
2. 具体的な見直し案の内容
住宅宿泊管理業の登録にあたって、事業者が登録申請のネックとなっていた国土交通省関係住宅宿泊事業法施行規則第九条第一号の「管理受託契約の締結に係る業務の執行が法令に適合することを確保するための必要な体制」について、見直しを検討することとしました。
現状:以下①②のいずれかに該当する必要があります。
緩和:③が追加され、①②③のいずれかを満たすことができれば住宅宿泊管理業の要件を満たす方針を固めました。
①住宅の取引又は管理に関する契約に係る依頼者との調整、契約に関する事項の説明、当該事項を記載した書面の作成及び交付といった、契約実務を伴う業務に2年以上従事した者であること
②それらの者と同等の能力を有すると認められること (以下のいずれかが満たされていることが条件)
―申請者が個人である場合
・ 宅地建物取引業法に規定する宅地建物取引士の登録を受けていること
・ マンションの管理の適正化の推進に関する法律に規定する管理業務主任者の登録を受けていること
・ 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律施行規則に規定する登録証明事業による証明を受けていること
―申請者が法人である場合
・ 上記の要件を満たす者を従業者として有すること
・ 宅地建物取引業法に規定する宅地建物取引業者の免許を受けていること
・ マンションの管理の適正化の推進に関する法律に規定するマンション管理業者の登録を受けていること
・ 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律に規定する賃貸住宅管理業者の登録を受けていること
+
③管理受託契約の締結に係る事務に関する実務についての講習であって、省令の規定により国土交通大臣の登録を受けたもの(以下「登録実務講習」という。)を修了した者
登録実務講習機関が実施する規定の講習を受けることにより、「管理受託契約の締結に係る業務の執行が法令に適合することを確保するための必要な体制」の要件を満たすことができることで見直しを進めている状況です。
3. 住宅宿泊管理業の申請までの流れ
上記の①又は②で申請する場合は、現状の申請方法と変わらないですが、③の場合は以下のような流れになります。
講習→登録申請書類に修了証を添付して申請→許可
また登録実務講習は以下の流れで行い、最後に修了試験を実施し、合格すれば修了となります。
通信講座(20時間)→講義(7時間)→修了試験→合格→修了
4. 登録実務講習機関の登録
登録実務講習の実施に関する事務を行おうとする者については、国土交通大臣に申請することで登録することができます。
登録要件としては以下となります。
- 規定する基準に適合する講習を行おうとするものであること。
- 講師が次のいずれかに該当する者であること。
- 弁護士であって、管理受託契約の締結に係る実務に関する知識を有する者
- 住宅宿泊管理業に2年以上従事した経験を有する者であって、管理受託契約の締結に係る実務に関し適切に指導することができる能力を有する者
- 上記二点に掲げる者と同等以上の知識及び経験を有する者
※登録の更新については3年を予定してます。
専門家の視点
〇今回の要件緩和による影響と今後の動向について
- 住宅宿泊管理業の申請にあたって、事業者側でネックとなっていた「管理受託契約の締結に係る業務の執行が法令に適合することを確保するための必要な体制」の要件が緩和されることにより、特に地方での住宅宿泊管理業者が増えるのではないかと考えられます。
住宅宿泊管理業者は都市部に集中しており、2022年4月時点で全国2993社のうち、7割弱が東京・大阪・福岡に所在しています。
最も多い東京都には1005社あるのに対し、青森・福井・高知など13県は10社以下となっています。
特に東北・中国地方では1県に住宅宿泊管理業者が1、2業者程度というところもある状況です。
地方には、古民家など外国人観光客が好む民泊向きの施設が多いです。
ただ、地方の施設所有者が、都市部の住宅宿泊管理業者に委託しようとすると、「日常的な清掃が困難」との理由で断られたり、高額な手数料を請求されたりするケースもあるようです。
住宅宿泊管理業者が見つからず、民泊の開業を断念する事例も報告されていました。
コロナも収束し、インバウンド回復が民泊施設の増加の追い風となり、地方の住宅宿泊管理業者の需要も増えることが予想されます。 - 住宅宿泊管理業の申請をする際、前述した③の登録実務講習を選択する場合、計27時間の講習を受けてからでないと申請することができません。
宅建士の資格者や実務経験者よりも登録までの日数を要することが予想されます。
また、最終的には修了試験を合格しなければ修了とはならないので、試験の難易度にもよりますが、一定の準備は必要になる可能性があります。
申請してから登録まで最長3か月かかるので、住宅宿泊管理業の登録を希望する事業者は、早めの手続き・準備が必要になります。 - 住宅宿泊管理業に2年以上従事した経験を有する者であれば、登録実務講習機関の登録要件を満たすことができる可能性があります。
もし、登録実務講習機関の登録を希望するのであれば、住宅宿泊管理業の登録希望事業者の負担も考えて、オンラインをメインで講習していくスタイル等を運用していく必要がありそうです。 - 要件緩和することのデメリットとして、質の低い住宅宿泊管理業者が参入する可能性があります。
ただ、行政側の対応として2023年1月24日に「住宅宿泊管理業者の違反行為に対する監督処分の基準」を施行し、HP上でも公開しています。
内容としては、住宅宿泊管理業者による違反行為に対する処分内容を記載しており、悪質な住宅宿泊管理業者が参入することを抑制する効果を期待しているようです。
これから住宅宿泊管理業の登録を検討している方は、一度目を通しておいた方が良い内容となっております。
[出典]
住宅宿泊管理業者の違反行為に対する監督処分の基準(令和5年1月24日施行)
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001583737.pdf (国土交通省HPより)
ルールチェンジを乗りこなすポイント
早めに講習を受講しましょう!
講習による住宅宿泊管理業の登録申請を目指す場合、最低でも27時間の時間を要することになります。
講習後に修了試験を受けて合格する必要があります。
それを受けてやっと住宅宿泊管理業の登録申請ができる準備が整います。
申請してから登録まで最長3か月間であることを考えると、早めの受講がオススメです。
※現時点では、2023年12月又は2024年の1~3月頃には、実際に講習が始まるとのことです。
管理業者が少ない地域がチャンス!
前述した通り、地方では住宅宿泊管理業者が少ないのが現状。
民泊施設を始めたいけど、管理業者がいなくてなかなか始められない、というニーズが眠っているかもしれません。
要件緩和となったタイミングで早めに管理業者の資格を取得することで、そんな眠ったニーズにも応えられるよう準備しておきましょう。
ご相談を承っています
サポート行政書士法人では、新規で旅館業・ホテル業へ参入される方から、既存の旅館業・ホテル業の皆さまに対して、旅館業営業許可に関する申請サポートや専門性の高いコンサルティングを行っています。
旅館業営業許可は、各保健所が管轄しており、ローカルルールも保健所ごとに存在します。
弊社の担当者は、全国の都道府県で申請実績がございます。ぜひご相談ください。