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金融ライセンスの種類と最適な登録・届出の選び方

~登録・届出の最適選択とその先にある体制構築まで~

日本でフィンテック事業を展開するにあたって、最初に直面するのが「どのライセンスが必要か?」という問題です。
金融関連のライセンス制度は複数に分かれ、それぞれの適用範囲や審査基準も大きく異なります。

本記事では、代表的な5つの金融ライセンス制度について、制度の要点を整理しながら、自社に最適な選択肢を見極めるための視点と提案をご紹介します。
ライセンス取得の検討段階にある方、制度との適合性に悩まれている方に向けた実務的な指針です。

資金移動業:送金ビジネスの本丸ライセンス:

銀行以外で送金業務を行う場合、必ず「資金移動業」の登録が必要です。
現在、この制度は送金額に応じて3区分に分類されています。

  • 第一種資金移動業(上限なし):最も厳格な審査体制と資金管理要件を満たす必要があります。
    企業規模や取扱金額が大きい場合、ここがターゲットになります。
  • 第二種資金移動業(上限100万円/件):現実的なビジネスモデルで最も多く使われている区分です。
  • 第三種資金移動業(上限5万円/件):制度創設後も未登録事業者が続いている、実務上の難易度や採算性のバランスに課題があります。

アドバイス:
送金額や顧客層によって登録種別は明確に分かれます。資本要件や体制整備の重みも種別ごとに異なるため、「どこまでの送金機能が必要か」を最初に定義しましょう。
弊社で支援した事例では、準備から申請、登録完了まで1年半〜2年程度を要するケースが多数です。時間的余裕と初期の制度選定が成功のカギを握ります。

前払式支払手段発行業:電子マネーやギフトサービスの入口:

プリペイドカードや電子マネーなど、「金銭を先に受け取り、後で使わせる」モデルには資金決済法に基づく手続が必要です。
ここでまず問われるのは、“自家型”か“第三者型”かという分類です。

  • 自家型:自社内サービスに限定した支払手段。未使用残高(発行残高-使用額)が1,000万円を超えた場合は「届出」が必要。
  • 第三者型:複数加盟店で利用される支払手段。Suica等が該当し、「登録」が義務です。

アドバイス:
まずは「誰がどこで使うか」に注目してください。
利用者保護の視点(残高管理、苦情処理、情報公開)をどこまで求められるかが、制度選択の分岐点になります。
設計段階で制度分類を誤ると、リリース直前に設計変更を迫られるケースもあります。
弊社では、業態診断の段階から適用制度の選定、供託・届出サポートまでを一貫支援しています。

暗号資産交換業:規制が強く高難度ライセンス:

暗号資産(仮想通貨)の売買や交換をビジネスとして行う場合、「暗号資産交換業者」としての登録が必要です。
これは最も規制が厳しい業態の一つであり、法令違反時の刑事罰(懲役・罰金)も重いことが特徴です。

アドバイス:
この分野ではAML/CFT(マネーロンダリング防止)体制の構築、資産分別管理、セキュリティ体制の高度化が求められます。
単にサービスを立ち上げるだけでなく、初期から「当局に説明できる管理体制」を構築できるかが審査の通過率を左右します。

ビジネスモデルの構築段階で、トークンの取り扱い、交換形態、顧客管理の運用方針を整理し、登録に耐えうる社内体制とともに申請戦略を組み立てることをおすすめします。

電子決済等代行業:API連携ビジネスの入口:

銀行の口座にアクセスし、顧客に代わって残高確認や送金指示を行うサービスは、電子決済等代行業に該当します。
この分野は銀行法改正(2018年)で新設された制度で、フィンテック企業にとって非常に重要な選択肢となっています。

アドバイス:
この制度の大きな特徴は、資金移動そのものは行わないという点にあります。
あくまで「情報処理や送金指図の代行」が役割です。
したがって、自社が実際に資金の授受を行う場合は、別途「資金移動業」の登録が必要になる場合があります。

API接続や外部銀行連携が想定される場合、自社サービスがどの制度の範囲内であるかを整理し、誤認リスクの回避設計や説明責任体制の整備まで含めた法対応が必要です。

クレジットカード番号等取扱契約締結事業:セキュリティが最優先

クレジットカード番号を取り扱う事業のうち、加盟店と直接契約を結び、カード情報を保持または処理する場合には、管轄の経済産業局への登録が必要です。

この業態では、PCI DSS(国際セキュリティ基準)への準拠や、流出時の即応体制の整備など、高レベルの情報セキュリティ運用が義務化されています。

アドバイス:
オンライン決済代行サービスを検討している場合、事業モデルがこの区分に該当する可能性が高くなります。
カード情報の扱いが一時的でも、「保存・伝送・処理」のいずれかに該当する場合は登録対象です。

制度要件の確認と並行して、技術面(システムのセキュリティ)と運用面(社内管理体制、加盟店含む)の2軸での準備が求められます。
弊社では、必要要件のチェックリストと実務運用ガイドをセットでご提供しています。

制度選択で迷ったら ― グレーゾーンこそ専門家と判断を

新規性の高いビジネスモデルでは、どの制度に該当するのか明確に判断できないケースもあります。

「○○業だからこの登録が必要」と即断する前に、該当法令(資金決済法、銀行法、割賦販売法など)をもとに定義規定を丁寧に照らし合わせ、正確な制度選択を行う必要があります。

弊社では、法令解釈・制度適用の照合・審査通過実績を基に、制度選定から登録準備、当局対応までを一気通貫でサポートしています。

(著者:徐)