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第一種資金移動業「100 万円超送金」の実務ガイド —— 監督指針が示す8つの必須チェックポイント

第一種だけが扱える“高額送金”

資金決済法改正で創設された第一種資金移動業は、1件あたり100 万円を超える送金を銀行以外に初めて開放しました。
一方、履行遅延やシステム障害が起きたときの社会的インパクトは桁違いに大きく、「銀行並み」くらいの統制が前提になります。

1 業務実施計画:認可制で始まるライセンス

第一種では、資金移動業の登録に加え、金融庁長官の認可を受けた業務実施計画が出発点です。

2 資金の滞留禁止:1円も“寝かせない”オペレーション

指針が最も厳しくチェックする一つは「滞留規制」です。

  • 利用者から指図を伴わない入金を受けない
  • 受取人が資金を受け取る場合受取口座はあらかじめ顧客が登録した銀行口座へ直送
  • 事務処理に要する“必要な期間”内に必ず完結
  • 万一超過した場合は原因を分析し再発防止策を講じる

ATMで金を引き出せる、カード型のような資金移動サービスを提供する資金移動業者は、資金が内部で長く滞留する設計に当たる可能性がありますので、原則アウトになります。

3 保証金のリアルタイム管理

第一種は毎営業日ベースで未達債務額を計算し、全額を履行保証金として供託または信託で保全します。(第一種資金移動業は各営業日から2営業日以内で履行保証金を供託しなけれなりません)
要履行保証額が振幅するビジネスモデルでは、“供託残高<営業日末未達債務”が起きないよう、供託日程と資金移動量を日々モニタリングする必要があります。

4 システムリスク管理とサイバーセキュリティ

高額送金ゆえ攻撃対象にもなりやすく、ペネトレーションテストや脆弱性診断を定期実施して客観的評価を受けることが推奨されています。
例えば、利用者側には「送金先ホワイトリスト」「1日・1回上限額設定」「設定変更時の即時通知」といった多層防御を組み込み、障害時には冗長系への自動フェイルオーバーとデータ整合性検証、リストアテストの記録などの措置を講じる必要が出てきます。

※ペネトレーションテスト(Penetration Test)とは、ホワイトハッカーが実際にシステムに侵入を試みることで、システムの脆弱性を確認するテストのことです。
※フェイルオーバーとは、システムやサーバーに障害が発生した際に、自動的に別の待機システムに切り替える仕組みのことです。

5 AML/CFTの徹底

第一種は海外送金比率が高いケースが多いです。
例えば顧客・国・商品・取引形態ごとにリスクスコアを付し、シナリオ/敷居値を定期見直したり、制裁リスト更新時の再スクリーニングや代理店モニタリングの対応も必要になります。

6 取引上限額とサービス設計

法律上は無制限でも、認可申請で自社の「上限額」を自己申告し、それに見合った保証金・システムキャパシティ・AMLシナリオを整合させることがあります。
上限を超える指図が来た場合は自動拒否または追加認証の仕組みを組み込みなど、リスク評価をきちんとしましょう。

7 事故対応:補償方針と緊急連絡網

システム障害や二重送金など「為替取引に関する事故」が起きた場合、即時補償できる態勢が求められています。
補償基準を事前に約款へ織り込むことや対応手順を制定するなどが望ましいです。

8 利用者向け情報開示

契約締結前説明では例えば「上限額」「受取方法」「滞留禁止」「完了予定日」などを契約判断の核心情報として必ず口頭・書面で提示しなければなりません。
顧客は情報を確認できる仕組みを整えましょう。


第一種資金移動業は「銀行ライセンスに最も近い」非銀行業態だといえるでしょう。
高額送金というビジネスチャンスの裏側には、多層的な規制対応と日次の運営管理が不可欠です。
弊社は認可取得から運営フェーズまで、最新の監督指針と実務知見を踏まえて伴走いたします。
お気軽にご相談ください。

(著者:徐)