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海外から日本市場を狙う前に ― 「外国資金移動業者」規制の落とし穴

1. なぜ“未登録”の外国送金サービスは勧誘できないのか

資金決済法と金融庁監督指針は、日本で登録していない外国資金移動業者・外国信託業者が国内の顧客に為替取引を勧誘することを原則禁止しています。
趣旨はシンプル――送金資金の未着や事業者破綻から利用者を守り、マネー・ローンダリングやテロ資金供与の温床を封じることです。

2. 「ホームページに載せただけ」でも勧誘に当たる

未登録の海外事業者がホームページ等に為替取引に関する広告等を掲載する行為をした瞬間、監督指針では勧誘行為だとみなされる可能性が高いです。

3. 合法的に広告だけ残す“抜け道”はあるのか

指針は以下に掲げる措置を始めとして、日本国内にある者との間の為替取引に繋がらないような合理的な措置が講じられている限り、日本国内にある者に向けた「勧誘」には該当しないものとしています。
代表的なものは次です。

例えば

  • “本サービスは日本国内の居住者を対象としていません”
    この一文をページ冒頭など追加操作なしに読める位置へ日本語で明示する必要があります。

取引防止措置として考えられるのは

  • 住所・決済手段・メールドメイン等で所在地をチェック
  • 日本発と疑われる注文を機械的にブロック
  • 日本向けコールセンターや 「.jp 」ドメインのサイトを置かない

これらのフィルターを組み込み、実務上も受注を拒否して初めて「国内勧誘ではない」と主張できます。

4. 違反した場合のリスク

違反行為が確認されれば、資金決済法違反にみなされる可能性があります。
その場合、金融庁は国内アクセス遮断要請・業務改善命令を通告し、悪質なケースでは刑事罰(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)が科される可能性があります。

5. 日本市場に参入したい海外フィンテックが取るべき3つの選択肢

例えば以下のようなことが挙げられます。

  • 自社で資金移動業登録を取得
    保証金供託、AML/CFT体制、人員常駐などハードルは高いものの、最もストレートなルート。
  • 国内ライセンス保有事業者との提携
    API接続等でサービスを共同提供。ブランド露出を確保しながら法的リスクを抑えられる。
  • 日本ユーザーを完全遮断し“国外専業”を選ぶ
    上記の但し書き+IPブロック等を徹底し、日本市場と切り分ける。

まとめ

日本で未登録の海外送金サービスが顧客を呼び込むことは、オンライン広告だけでも“勧誘”と見なされ得ます。国内顧客を獲得したいなら登録・提携の準備を、参入予定がなければ遮断措置を――いずれにしても黙っていればグレー”は通用しないのが日本の資金決済規制です。弊社は資金移動業を含め、各種金融ライセンスの取得支援を法規制面から全面サポートいたします。お気軽にご相談ください。

(著者:徐)