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未使用残高1,000万円超えで義務発生!自家型前払式支払手段「発行届出」完全ガイド【2025年最新版】

自社で発行するプリペイドカードやポイントなどの前払式支払手段は、利用されていない残高(未使用残高)が一定額を超えると法律上の届出義務が発生し、管轄当局(財務局)へ行わなければなりません。
しかし、中小企業やスタートアップの担当者にとって、いつ・どのように届出をすべきか戸惑うことも多いでしょう。
本ガイドでは、その発行届出の要件と手続について、基礎からしっかり解説します。

発行届出が必要となる条件とは?

前払式支払手段を発行する際、事前の許可や登録は基本的に不要ですが(自家型の場合)、発行後に一定の条件を満たすと届出が必要になります。
その条件とは、未使用残高が法律で定める基準額である1,000万円を超えることです。
具体的には、毎年3月31日と9月30日の基準日において、お客様がまだ使っていない残高(未使用残高)が1,000万円を超えた場合、その日から起算して2か月以内(例えば3月末基準なら5月末まで、9月末基準なら11月末まで)に所轄の財務局長宛に「自家型発行者となる届出」、いわゆる発行届出を提出しなければなりません。
この届出を怠ると無届の発行となり、行政処分の対象となる可能性があります。

ポイント:
未使用残高とは「発行済みでまだ使われていない金額」のことです。
例えば発行総額から利用済額を引いた残高にあたります。
また、基準日は半年ごとに設けられており、その時点の残高で判断します。
1,000万円を1円でも超えれば届出義務が生じるため、発行額が増えてきたら日頃から残高をモニタリングし、基準日前後には特に注意しましょう。

なお、前払式支払手段にも例外条件があります。
例えば「発行から有効期限までが6か月以内」のような場合、そのプリペイドは資金決済法の規制対象から除外されます。
簡単に言えば、有効期限を極端に短く設定したプリペイドは法的には前払式支払手段に該当しない扱いとなり、1,000万円超でも届出義務は発生しません。
ただし、有効期限を短くすると利用者に不便を強いるため、現実的には6か月以上の有効期限を設けるケースがほとんどでしょう。
その場合は当然規制対象となりますので、「6か月超&未使用残高1,000万円超」で届出義務発生と覚えておいてください。

発行届出の手続きと流れ

届出先と期限: 届出書は、会社の主たる事務所の所在地を管轄する財務局(または財務事務所等)に提出します。
上述のとおり基準日から2か月以内が提出期限です。
届出時には所定の様式「発行届出書」(資金決済法の内閣府令で定められた別紙様式第1号)に必要事項を記入し提出します。
提出方法は従来紙での届け出が一般的でしたが、2025年現在は原則オンラインでの届出が推奨されています。
金融庁の電子申請システム(e-Gov)を利用すれば、基本情報を入力し必要書類を添付することでインターネット上から届出が可能です。
オンライン提出に必要な手順については金融庁ウェブサイトでマニュアルが公開されており、事前に電子証明書の取得など準備が必要となります。初めて届出を行う際は余裕をもって準備しましょう。

違反した場合のリスク

万一、発行届出をすべきタイミングに届出を怠った場合や、虚偽の届出を行った場合には、資金決済法に基づく罰則や行政処分の対象となり得ます。
例えば無届で発行を続け未使用残高が膨らんでいると、財務局から業務改善命令や最悪の場合は業務停止命令等の処分が下される可能性があります。
そうした事態になると利用者への影響も大きく、企業の信用失墜にも繋がります。

そうならないためにも、社内で未使用残高を管理し、基準日ごとに確実に確認する体制を整えましょう。
特にスタートアップ企業の場合、事業拡大に伴って想定以上の利用者が資金をチャージし、残高が急増するケースもあります。
日頃から「残高が1,000万円に近づいたら要注意」という意識を持ち、必要に応じて専門家に相談しながら早め早めに対策・準備をしておくことが肝心です。

まとめ

未使用残高1,000万円超で届出というルールは、前払式支払手段を発行する事業者なら必ず押さえておくべき重要ポイントです。
本記事では届出義務の発生条件から具体的な手続の流れまで解説しました。
要点を振り返ると、有効期限6か月超かつ未使用残高1,000万円超となった基準日から2か月以内に、所轄財務局へ所定の発行届出書をオンライン等で提出する必要がある、ということでした。
届出後は発行保証金の供託や定期報告など新たな義務も課されますが、それらは利用者の資金保護と信頼確保のための措置です。
中小企業やスタートアップにとってハードルに感じるかもしれませんが、適切に対応すれば事業を健全に成長させる土台にもなります。
ぜひ本ガイドを参考に、自社のプリペイドサービスが届出対象となりそうかチェックし、該当する場合は計画的に手続きを進めてください。
分からない点があれば早めに専門家に相談し、法令遵守のもと安心・安全なサービス運営を心がけましょう。

(著者:徐)