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届出して終わりじゃない!基準日ごとの「発行に関する報告書」と監督対応チェックリスト

発行届出を完了した企業の次なる義務――「発行に関する報告書」とは?

自家型前払式支払手段を発行する企業にとって、「発行届出」は制度対応の入口に過ぎません。
その後も継続的に行政機関への報告義務が発生します。特に重要となるのが半年ごとに財務局へ提出する「発行に関する報告書」です。
報告書の作成や提出には細かなルールが存在し、違反すると行政処分のリスクも伴います。

「発行に関する報告書」の提出期限と法的リスク

報告書の提出義務は、資金決済法に基づいています。
具体的な報告対象期間は、毎年「3月31日」と「9月30日」が基準日と定められており、この基準日から2か月以内に報告書を管轄財務局へ提出しなければなりません。

例えば、3月31日が基準日の場合は5月末日、9月30日の場合は11月末日が提出期限となります。
この期日を1日でも過ぎると、行政指導や業務改善命令を受ける可能性があり、社会的信用にも影響します。
提出期限を守る重要性は特に強調したいポイントです。
期限を守るためには、社内で事前にしっかりとした管理体制を構築しておくことが必要不可欠です。

報告書の具体的な記載事項と作成上の注意点

「発行に関する報告書」の作成においては、法令で明確に定められた記載事項を忠実に守ることが大前提です。特に重要なのが以下の4項目です。

  • ①未使用残高の正確な把握と記載
    未使用残高とは、利用者が支払った前払い式の金額のうち、まだ消費されていない額のことです。
    この残高は、報告書作成時に最も注意深く確認する必要があります。
    残高の誤りは報告書の虚偽記載に該当する恐れがあるため、要注意です。
  • ②期間内の新規発行額および回収額の記載
    報告書の提出対象期間において、新たに発行された金額や利用者によって利用・回収された金額を正確に記載します。
    これらの数値は基準日の未使用残高にも影響するため、会計部門と連携し、数値の整合性を確保するようにしましょう。
  • ③貸借対照表・損益計算書の添付義務
    報告書提出時には、直近の事業年度末の貸借対照表および損益計算書を添付する必要があります。
    これら財務諸表の内容と、報告書内の記載数値に整合性がとれているかどうかを事前に確認しましょう。
  • ④発行保証金の供託・保全措置状況の確認
    未使用残高が1,000万円を超えている場合、その2分の1以上の額を発行保証金として供託する義務があります。
    この供託額が適正であるかどうかも報告書の重要な記載事項です。
    基準日の翌日から2か月以内に、供託や保全契約の見直しを行い、正確な金額を確実に供託することが求められます。

電子申請(DX)の活用による手続きの効率化によりミス軽減

近年では、多くの財務局が「e-Gov電子申請システム」を推奨しており、オンラインで報告書を提出することが可能となっています。
この電子申請を利用することで、記入漏れやミスをシステムが自動で検知し、ミスの発生率を大幅に下げることができます。

また、DXの導入は申請のみならず、日常的な財務管理にも効果的です。
例えば、会計ソフトと自社の残高管理システムをAPI連携させることにより、未使用残高や発行状況をリアルタイムに把握でき、報告書作成の負担を大きく削減できます。
システムで一元管理されたデータがあることで迅速かつ適切なサポートが可能になります。

法的リスクとコンプライアンス対応の重要性

「発行に関する報告書」は単なる報告書ではなく、企業のコンプライアンス(法令遵守)状況を財務局が監督するための重要な資料です。
誤った情報や虚偽の報告を行えば、業務停止命令や過料といった厳しい行政処分の対象となることもあります。
過去の実例として、意図しない単純ミスによる虚偽記載が指摘され、厳重注意や改善命令を受けたケースも存在します。

報告書作成の際には、複数人でのクロスチェック体制を構築することを強く推奨します。
万が一、内容に不安がある場合は早めに専門家へ相談し、問題を未然に防ぐよう努めましょう。

まとめ――適切な制度対応で安心な事業運営を

「発行に関する報告書」の提出義務は継続的に求められるものであり、適切な管理と正確な提出が不可欠です。
本記事で紹介したポイントを押さえ、専門家と連携しながら制度対応を進めれば、法令遵守を維持し、安心して事業を展開できます。制度対応において不安を感じたら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

(著者:徐)