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ポイントサービス×資金移動業|ライセンス設計から見る法的視点

近年、スマートフォンアプリやオンラインプラットフォームにおいて、ユーザー間でポイントやコインを用いた送金機能や外部加盟店での決済サービスを導入する事例が増えています。
こうしたサービスは「ポイント制度」という名のもとに構築されることが多いですが、そのスキームによっては「資金移動業」や「前払式支払手段発行業」など、資金決済法上のライセンス要件に該当する可能性があります。

ポイントやコインという形式に惑わされず、制度上は“為替取引”と評価される構造になっていないかどうかを精査することが極めて重要です。
無登録のまま運営すれば、資金決済法違反に問われ、行政処分や業務停止命令の対象となることもあります。

ケース:A社の分析

※この事例はフィクションです。会社名や担当者名は全て仮称であり、実際の事例ではありませんが、当社が提供するサポート内容を具体的にイメージしていただけるように構成しています。

A社は、自社アプリ上で販売する「コイン(1コイン=1円)」を、ユーザー間で自由に送付可能にし、さらに一部の外部加盟店でもこのコインを使って支払いができるように設計していました。
当初は、これを単なる「前払式支払手段」として位置づけ、資金移動業ライセンスは不要と判断していたものの、以下の理由により金融庁との事前協議で「資金移動業」に該当する可能性が高いと指摘されました:

  • コインがアプリ外の加盟店でも利用可能(第三者型)であること
  • ユーザー間送金機能が自由に設けられていたこと
  • 利用者への返金対応が一部で行われていたこと

これらは「単なる支払手段」ではなく、「資金の移動=為替取引」と評価されるおそれがあり、資金移動業の登録が必要と判断される可能性が高い構成といえます(資金決済法第2条第2項)。
ただ、前払式支払手段でも譲渡が可能な場合があります。詳しくはご相談ください。

分類の分岐点とは?

サービスの提供内容によって該当するライセンスは異なります。以下のように分類されます:

  • サービスが自社内(自社グループや閉じたエコシステム内)のみで利用される場合は、「前払式支払手段(自家型)」に該当し、原則として届出制となります。
  • ポイントやコインが外部加盟店でも利用できる場合には、「前払式支払手段(第三者型)」として、登録制が適用されます。
  • ユーザー間での送金が可能な場合(例:友人へのポイント送付など)、その仕組みは為替取引にあたると判断され、「資金移動業」として登録が必要になります。
  • ポイントの換金性が高い、あるいは現金等価として機能する場合には、「資金移動業」または「暗号資産交換業」として規制される可能性があります。

重要なのは、ポイントの“名称”ではなく、“機能と利用範囲”が判断基準であることです。

制度上の注意点と誤解されやすいポイント

  • 利用者から受け入れた金銭をプールしておくことは、資金移動業の“為替取引の準備”に該当する場合があります。
  • ポイントを「換金可能」にしたり「自由に送金」できるようにした時点で、前払式支払手段の枠を超える場合があります。
  • 「自社内でのみ利用」でも、実態として第三者が関与していると判断されれば届出義務が発生します。

これらの点を正確に評価するには、資金決済法の定義条文、前払式支払手段に関する規定、資金移動業に関する登録要件などの条文知識が不可欠です。

弊社のサポート内容

以下のようなプロセスでポイントスキームの適法性チェックおよびライセンス対応を支援しています。

  • 構想段階でのライセンス分類の助言(資金移動業か、前払式か、暗号資産か)
  • スキーム構成とライセンスの整理
  • 各ライセンスに関する申請書類の作成支援
  • 金融庁との事前相談に向けたプレミーティングや論点整理

(著者:徐)