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【2026年制度改正に備える】免税販売制度の抜本見直しと承認送信事業者の戦略的活用

―輸出物品販売場(免税店)が今すべき準備とは―

2026年11月、日本の免税制度は“購入時免税”から“リファンド方式”へ大きく転換します。
これは単なる手続の変更ではなく、免税販売の運用構造そのものが変わることを意味します。
事業者にとっては、制度変化への対応力が今後の競争優位を左右する要素となるでしょう。

本稿では、改正制度の全体像と実務的な影響、そしてカギを握る「承認送信事業者」の活用について、コンサルタント目線から提案・解説します。

1|制度改正の要点 ―「購入時免税方式」から「持ち出し確認型」へ

現在の免税制度では、訪日外国人旅行者が所定の要件を満たすことで、購入時点で消費税が非課税となる「購入時免税方式」が採用されています。

しかし、2026年11月以降はこの方式が廃止され、代わって導入されるのが「持ち出し確認型(リファンド方式)」です。

この新方式では、旅行者は商品購入時に消費税を一旦支払い、その後、出国時に税関で持ち出し確認を受けることで、消費税が還付される仕組みへと移行します。

この方式は、制度の透明性・信頼性の確保、そして不正利用リスクの低減を目的としたもので、国際的な標準にも準じた設計といえます。

2|輸出物品販売場制度の見直し ― 現行制度は2026年10月で終了

現行の「輸出物品販売場(免税店)」制度は、2026年10月31日をもって終了します。
猶予期間は設けられておらず、11月1日以降は完全に新制度へと一本化されます。

これにより、従来の制度に基づいて許可を得ている事業者であっても、制度改正に応じた販売システムや業務オペレーションの再構築が求められます。
具体的には、POSやレジシステム、購入情報の送信方法、顧客対応フローなどを根本的に見直す必要があります。

3|承認送信事業者の新たな重要性 ― 情報連携と信頼性の要

制度改正に伴い注目されるのが「承認送信事業者」の存在です。
承認送信事業者とは、免税店が取得した購入記録情報を、国税庁に電子的に送信する役割を担う専門事業者です。

新制度では、消費税の還付処理が国税庁や税関との連携により行われるため、購入記録の正確性・即時性・セキュリティが強く求められます。

承認送信事業者はこの一連の情報連携業務を代行・整備することで、免税手続の効率化・業務負担の軽減・制度遵守の精度向上を同時に実現できます。

コンサルタント視点からの提案:

制度変更のタイミングで、免税店が自社単独で全てのシステム連携や報告義務に対応するのは難しくなる可能があります。
承認送信事業者との早期契約や選定検討は、混乱回避とコスト抑制の観点からも有効です。

なお、現行法に基づいて既に承認を得ている事業者は、法改正後も「承認送信事業者」としてみなされることになっており、購入記録の送信のみを業務とする場合には、大きな制度変更は不要と見られます(ただし、運用上の実務更新は発生します)。

4|免税事業者が今から準備すべき3つのポイント

制度変更は目前に迫っており、既存の免税店にとっても「時間との戦い」が始まっています。以下の準備は、制度移行時のリスクを最小限に抑えるために有効です。

  • 1. 新制度対応のPOS・販売管理システムの見直し
    還付対応の販売データ形式、購入記録の保存形式、税関照会用データ出力など、制度対応に適合したシステムへの改修・導入が不可欠です。
  • 2. 承認送信事業者との業務連携・契約準備
    データ送信業務を外部に委託することで、制度対応コストの削減とリスク分散が図れます。
    導入時には、機能・対応実績・セキュリティ体制などを精査する必要があります。
  • 3. 現場対応力の強化 ― 研修・マニュアルの整備
    接客現場では、旅行者への消費税支払案内・還付の流れ・注意点説明が必要になります。
    店舗スタッフ向けに制度研修とQ&Aマニュアルを整備し、混乱を最小限に抑えましょう。

5|まとめ ― 制度移行は“準備した者だけが”スムーズに進められる

今回の制度改正は、訪日外国人向け販売を行う事業者にとって、単なる「免税方法の変更」ではなく、事業構造全体の見直しを迫るものです。

承認送信事業者との連携や、社内オペレーションの刷新を先手で進めておくかどうかで、制度移行時の混乱度・顧客離脱率に大きな差が出ます。

(著者:徐)