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「自家型」と「第三者型」の違いと分類方法(5つの質問による判定フロー)

プリペイドカードやポイントサービスを導入する際、まず直面するのが「自家型」と「第三者型」のどちらに該当するのかという問題です。

これは資金決済法上の区分であり、どちらに分類されるかによって事前の手続や課される義務が大きく異なります。

しかし初めて制度対応する企業担当者には、この分類基準が分かりにくいことも事実です。

「自家型か第三者型か迷ったら?」と思ったら、本記事で紹介する5つの質問から判定するフローチャートが役立ちます。法令に則った分類方法とその違いを分かりやすく解説します。

前払式支払手段の2種類: 自家型 vs 第三者型

まず基本として、前払式支払手段(プリペイド方式の決済手段)は利用可能な相手先の範囲によって2つに大別されます​。

自家型前払式支払手段: 発行者である自社(またはそのグループ会社等密接な関係者)が提供する商品・サービスの購入にしか使えないものを指します。
簡単に言えば「自社専用のポイント・商品券」です。例えば自社運営の店舗だけで使えるプリペイドカードや回数券、自社ECサイト限定の電子マネーなどが自家型にあたります​。
法律上は発行者本人およびその密接な関係者だけが利用先であれば自家型と扱われます。
密接な関係者とは、発行者と親子会社の関係にある企業や、発行者が個人事業主の場合で親族が運営する店舗などが該当します。
要するに、発行者自身と実質的に同一視できる範囲内でしか使えない前払式支払手段が自家型です。

第三者型前払式支払手段:上記とは反対に、発行者以外の第三者(加盟店など)が提供する商品・サービスの購入にも使えるものを指します。
発行者とは関係のない他社でも利用できるプリペイドがこちらに該当します。例えば共通ポイントカードが複数の独立した加盟店で使えたり、電子マネーがコンビニや飲食店など様々な企業で利用できる場合、それは第三者型になります。
SuicaやPASMO等の交通系ICカードが電車以外の店舗でも使える例や、複数企業が加盟するポイントサービスなど、多くの人が日常で使う電子マネーには第三者型が多いです。

このように、利用できる範囲が自社グループ内に限られるか、それ以外にも広がるかが両者の決定的な違いです。
言い換えれば、「自分(発行者)の店だけで使えるなら自家型」「他人の店でも使えるなら第三者型」と整理できます。
ただし実際にはグループ企業や提携先との関係などグレーなケースもあるため、次に紹介する判定フローで細かく確認してみましょう。

5つの質問で判定する分類フロー

それでは、自社の計画している前払式支払手段が自家型か第三者型かを5つの質問でチェックしてみましょう。以下の質問に順に答えることで、自ずと分類が見えてきます。

  • 質問1: その支払手段は「前払式支払手段」に該当する?

    そもそも論ですが、計画中のサービスが法律上の前払式支払手段に当たらない場合、ここで分類を気にする必要はありません。資金決済法上、前払式支払手段とは「金額または物品・サービスの数量が記録され、代金支払いに使える証票等または電子的価値」を指します。
    一般的なプリペイドカードやデジタルポイントはこれに該当します。
    一方、後払い方式(クレジット)や一部のクーポン(特定の商品としか引き換えられないものなど)は含まれません。
    自社のサービスがユーザーから前払いで金銭を受け取り、その金額分を後で決済に充当できる仕組みであれば、「前払式支払手段」として本フローを進めます。
  • 質問2: 有効期限は発行から6か月超か?

    前払式支払手段には、有効期限が極端に短いものは法の規制対象から除外される例外があります。
    具体的には有効期限が発行日から6か月以内で設定されている場合、資金決済法の適用外(=届出や登録不要)となります​。
    このため、「自社ポイントの有効期限を3か月に設定する」といったケースでは、自家型・第三者型を問わず法律上の義務は発生しません。
    もっとも、6か月未満の期限はユーザーに敬遠される可能性もあるため現実的ではありませんが、法的にはこの条件で除外されることを念頭に置きましょう。
    有効期限が6か月以上であれば本格的に自家型か第三者型かの分類を検討する必要があります。
  • 質問3: 利用できる相手は発行者自身の提供するものだけか?

    ここが分類の核心です。発行するプリペイドやポイントで購入できるのが自社の商品・サービスだけであるなら、自家型に該当する可能性が高いです。
    例えば自社ECサイト内だけで使えるポイントや、自社運営の複数店舗間だけで通用する商品券などは、この質問で「YES」となります。
    一方、自社以外の他社の商品・サービス購入にも使えるのであれば「NO」です。その場合は第三者型の可能性が出てきます。まずは利用範囲が自社内完結か否かで大きく二分できます。
  • 質問4: 他社でも使える場合、その他社は「密接な関係者」に該当するか?

    質問3で「他社でも使える」となった場合でも、その他社が発行者と極めて密接な関係にあれば自家型として扱われることがあります。
    ここでいう密接な関係者とは、法律上は資金決済法施行令で定められており、代表的な例として「発行者と親子会社の関係にある企業」「発行者(個人)とその親族が経営する事業者」などがあります。
    たとえば、自社の子会社が運営する別ブランド店舗で使えるポイントは、親子関係にあるため密接関係者内の利用とみなされ、自家型扱いとなります。
    逆に言えば、全く資本関係もない提携先企業など独立した第三者であれば密接関係者には当たらないため、第三者型となります。
    質問4では利用可能な他社との関係性をチェックし、「単なる加盟店なのか、資本・人脈的につながりがあるのか」を判断しましょう。
  • 質問5: (自家型の場合)未使用残高が1,000万円を超える見込みか?

    最後に、自家型と判定されたケースでは、運用上の重要ポイントとして未使用残高の規模を確認します。
    自家型前払式支払手段の場合、前述のとおり未使用残高が1,000万円を超えた時点で財務局への届出義務が発生します。
    したがって、将来的に残高がその基準額を超えるかどうかで対応が変わります。
    最初から大規模に展開する場合は発行開始後に比較的早い段階で届出が必要となりますし、小規模で始めて残高が小さい間は届出不要ですが、成長に伴ってタイミングを見計らう必要があります。
    もっとも、この質問5は分類そのもの(自家型or第三者型)を判定する要素ではなく、発行者としての届け出義務を確認するものです。
    第三者型と判定された場合は当初から登録が必要になるため、この質問は自家型に決まった場合のみ検討すれば良いでしょう。

以上の5つの質問を総合すると、自社サービスがどちらに当たるかが明確になります。
まとめると、まず有効期限など基礎条件を満たした前払式支払手段であることを前提に、利用可能範囲が自社グループ内限定なら自家型独立した第三者にも広がるなら第三者型となります。
そして自家型の場合は規模が大きくなれば届出、第三者型の場合は開始前に登録が必要です。

登録と届出の違いによる実務上の注意点

分類が判明したら、それに応じた行政手続きを準備する必要があります。
第三者型と判定された場合、事業を開始する前に財務局の登録を受ける必要があります。
これは金融業の許可に近いイメージで、事前審査を経て登録が完了してからでないと発行業務を始められません。
審査項目には財産的基盤や経営管理体制のチェックなどが含まれ、時間も要しますので計画段階から余裕を持って準備しましょう。

一方、自家型と判定された場合は、発行開始にあたり事前の許認可は不要です。
スピーディにサービス開始できるメリットがあります。しかしながら前述のように、運営後に未使用残高が基準額を超えれば事後的に届出が必要となります。
届出自体は登録に比べれば要件も手続も簡易ですが、出し忘れは許されません。特に成長企業では残高管理を怠ると届出漏れリスクがありますので、内部で監視ルールを決めておくと良いでしょう。

まとめ

「自家型」と「第三者型」の違いと判定方法について、5つのチェックポイントを交えて説明しました。
要点を振り返ると、自社グループ内だけで通用するプリペイドなら自家型、外部の独立企業でも使えるなら第三者型です。
そして分類に応じて、自家型なら発行後に届出(※未使用残高が基準額を超えた場合)、第三者型なら発行前に登録という手続の違いがあります​。
この分類を誤ると、必要な届出・登録を怠って法令違反となりかねません。逆に言えば、事前に正しく分類し適切に対応すれば、中小企業でも十分にプリペイドサービスを運営できます。

初めて制度対応する担当者の方は戸惑うかもしれませんが、本記事のフローチャートを参考に自社ケースを当てはめてみてください。
不明点が残る場合やグレーゾーンの判断に迷う場合は、遠慮なくサポート行政書士法人の専門家に相談しましょう。
法律上断定しにくい場合には「このケースでは第三者型に該当する可能性がある」など、専門知見に基づくアドバイスを得られます。
自社サービスの性質にあった形で制度対応を行い、ユーザーにも安心してご利用いただけるキャッシュレスサービスを提供していきましょう。

(著者:徐)