国土交通省 北陸道小矢部川SAの事故を受けて通達
投稿日:2014年3月7日
サポート行政書士法人・物流チームの山田です。
昨日、国交省は、北陸道小矢部川SAの高速乗合バスの追突事故を受けて、「事業用自動車の運転者の過労運転の防止、健康状態の確認等更なる安全確保の徹底について」を公表しました。
通達を要約すると以下のようになっています。
1 過労運転の防止の一層の徹底を図ること
2 運転者の健康状態の把握を徹底すること
3 日頃から運転者の健康状態の把握すること
4 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の早期発見・治療のために、スクリーニング検査の
受診及び適切な治療の普及を図ること
5 安全管理の徹底を図ること
これに合わせて、通達の別紙として、「事業用自動車の運転者の健康管理マニュアル」のポイントが記載されています。
—————————————————————————————————「事業用自動車の運転者の健康管理マニュアル」のポイント
事業用自動者の運転者の健康管理は、以下の4つの手順により実施する。
1.運転者の健康状態の把握
【手順1 健康診断及び医師からの意見聴取等】
(1)一次健康診断及び医師からの意見聴取(義務)
・事業者は、労働安全衛生法に基づき運転者に対して雇入れ時及び定期の健康 診断(一次健康診断)を実施することが義務づけられている。
・事業者は、運転者が健康診断を受けた結果を把握するとともに、その結果に 異常の所見が見られた場合は、医師から運転者の乗務に係る意見(乗務の可否 及び配慮事項等をいう。以下同じ。)を聴取し、また、聴取した健康診断の個 人票の「医師の意見」欄に記入を求める必要がある。この場合、異常の所見 の内容を明確化するために必要とされる精密検査等を運転者に受けさせるこ とが望ましい。
(2)二次健康診断及び医師からの意見聴取(推奨)
・一次健康診断において、脳血管疾患、心臓疾患に関連する一定の項目につい て異常の所見がある、と診断された運転者に対しては、二次健康診断を受診 させ、その結果に基づき、医師から、運転者の乗務に係る意見を聴取するこ とが望ましい。
(3)SAS(健康診断では分からない重要な症状の例)の検査等(推奨)
・運転者に医師による問診を受けさせ、疑いのある運転者に睡眠時無呼吸症候 群(以下「SAS」という。)のスクリーニング検査を行うことが望ましい。
・治療すべきSAS であることが判明した運転者には、症状に応じた治療を行う ことが不可欠である。
(4)疾病等の場合の医師からの意見聴取(推奨)
運転者が疾病等のため医師の診断・治療を受けた場合には、事業者は運転者 の了解を得た上で、当該医師から、運転者の乗務に係る意見を聴取することが 望ましい。
その方法としては、
・ 運転者が医師から聴いて書きとめた内容を入手する
・ 運転者が医師から入手した診断書(有料)を入手する
・ 事業者と契約している産業医等の医師が、運転者の診断・治療をした医師 から入手した意見書や診療情報提供書(有料)を入手する
・ 運転者が診断を受ける際に運行管理者が同行して聴き取る
などがある。
【手順2 医師からの意見等を踏まえた対応】
(1)就業上の措置の決定
事業者は、手順1の医師からの意見等を踏まえ、運転者について、業務転換、 乗務時間の短縮、夜間乗務の回数の削減等の就業上の措置を決定する必要があ る。
(2)運転者の健康管理
①手順1の医師からの意見等に基づき、以下の事項を乗務員台帳(旅客)・運 転者台帳(貨物)に記録して整理する必要がある。
【乗務員台帳(旅客)・運転者台帳(貨物)に記録すべき事項】
○ 運転者の健康状態(疾病等、治療、服薬等)
○ 点呼時に確認すべき事項(疾病等を治療中の運転者についての確認事項)
○ 乗務中に注意すべき事項及び乗務中に健康状態が悪化した場合の対処方法
②点呼記録簿において、健康診断の結果等により異常の所見がある運転者又は 就業上の措置を講じた運転者が一目で見てわかるように運転者氏名の横に、 疾病に応じて決めたマーク(*等)を付与しておくと、点呼を行う運行管理 者が管理しやすい。
③運転者の服薬の時間、体調のリズム、通院する時間等に配慮して乗務割を作 成するなどにより、運転者が適切に健康管理できる環境を整えるべきである。
また、事業者は、運転者が疾病、体調不良等により医師にかかる際には、運 転者に以下のことを指示することが望ましい。
【事業者が医師にかかる運転者に指示する事項】
○ 運転者自身が職業ドライバーであることを医師に伝える。
○ 処方薬に、運転に支障を及ぼす副作用(眠気などの症状)が出現する可 能性がないか、医師に確認する。
○ 運転者の勤務時間が不規則であることを伝え、服薬のタイミング等につ いて、医師から指導を受ける。
(3)運転者の健康状態の継続的な把握
事業者は、定期の健康診断等により、運転者の健康状態を継続的に把握する とともに、その結果に応じて就業上の措置を見直す必要がある。
2.乗務前の判断・対処
【手順3】
(1)乗務前点呼における乗務判断
乗務前の点呼において、事業者(運行管理者)は、運転者が安全に乗務できる 健康状態かどうかを判断し、乗務の可否を決定する必要がある。 なお、この際に運転者が体調不良を隠さず、正直に体調が悪いことを報告で きるような雰囲気を常日頃から醸成しておくことが重要である。
(2)点呼の結果、運転者が乗務できない場合の対処
①乗務前点呼の結果、運転者が乗務できなくなる場合に備えて代替措置(代わ りの運転者の手配、下請けの活用等)をあらかじめ定めておくことが安全上 極めて重要である。
②運転者の健康状態が回復した場合でも、通常どおりの業務を行うには危険が 伴う可能性があることから、事業者は、運転者に医師の診断を受けさせ、運 転者の健康状態についての医師からの意見により、今後の乗務を検討する必 要がある。
3.乗務中の注意・対処
【手順4】
運転者が乗務を開始した後に体調が悪化し、運行に悪影響を及ぼす場合には、 運転者は運行管理者へ速やかに連絡をとってその指示を仰ぐべきであることを、 事業者は、常日頃から運転者に徹底しておく必要がある。また、緊急時に対応 すべきこと及びその際の連絡体制を簡潔にまとめたマニュアルを作成しておく ことが望ましい。
4.健康管理ノート作成のすすめ
運転者が良好な健康状態を維持するためには、事業者の健康管理体制のみな らず、運転者自身による健康管理が必要不可欠である。 そのため、運転者の健康管理の支援ツールとして、いわゆる「健康管理ノー ト」を活用することが有効である。
健康管理ノートには、例えば次のような内容を盛り込むことが望ましい。
① 生活習慣の改善の重要性
② 運転に支障を及ぼすおそれのある疾病に係る基礎知識
③ 定期健康診断の活用方法
④ 運転者が事業者に対して報告すべき事項
⑤ 運転中に身体の異常を感じた場合の処置
⑥ 運転者自身の健康状態の記入欄 (健康診断結果/就業上配慮すべき事項/医師のコメント 等)