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【行政書士制度と業務の現在地】― 多様な法手続を支える国家資格の実態とは?

行政書士は、1951年の制度創設以来、社会の変化とともにその役割と業務範囲を拡大・深化させてきた国家資格者です。
行政機関に提出する各種申請書の作成や提出代理、さらには権利義務や事実証明に関する文書の作成といった多様な法務を担う「まちの法律家」として、企業・個人を問わず幅広いニーズに応えています。

業務範囲の全体像

行政書士法第1条の2および第1条の3により、行政書士の業務は大きく以下のように定義されています。

  • 官公署に提出する書類(電磁的記録含む)の作成
  • その提出手続に関する代理業務(ただし弁護士法に抵触しない範囲)
  • 特定行政書士による行政不服申立て手続の代理
  • 契約その他の私法上の書類の代理作成
  • これらの文書作成に関する相談業務

これらは他人の依頼に基づき、報酬を得て行うことが前提とされています。とくに官公署提出書類の作成は、行政書士法第19条により「独占業務」として明確に位置づけられています。

実務で扱う文書の例

行政書士が日常的に作成・対応する文書には多くの種類があります。

建設業許可や風俗営業許可、産業廃棄物処理業許可など、許認可に関するものが代表的ですが、それにとどまりません。
各種契約書など、民間法務にも深くかかわる業務があります。
企業の定款作成(登記を除き)、補助金申請書類の作成支援、農地転用の許可申請なども含まれ、官民問わず法律実務に対応できるのが行政書士の強みです。

制度の進化と法改正の歩み

行政書士制度は1951年の発足以来、社会環境や技術の変化に対応しながら、継続的に改正が行われてきました。
1980年には非独占業務の法定化、2003年には行政書士法人制度が創設され、法人としての活動も可能に。
2014年には「特定行政書士制度」が導入され、一定の研修を修了した行政書士が行政不服申立ての代理を行えるようになりました。

現代における行政書士の役割

今日の行政書士は、単なる「書類の代書人」ではなく、「法的文書の専門家」「行政と社会をつなぐ実務家」としての役割を担っています。
特に中小企業や個人にとっては、法務を身近に相談できる存在であり、地域に根差した「まちの法律家」として親しまれています。

また、行政書士は他士業と異なり、行政の仕組みや実務に精通していることが特徴です。
行政機関の手続をスムーズに進める上での橋渡し役として、企業活動の支援や国民の権利実現のために重要な役割を果たしています。

(著者:徐)