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【行政書士の歴史をたどる】― 代書人から現代のまちの法律家へ ―

行政書士という国家資格は、今日では官公署への書類作成や申請代理を担う「まちの法律家」として定着していますが、そのルーツは意外にも古く、江戸時代末期の「代書人制度」にさかのぼります。
この記事では、行政書士制度がどのように誕生し、発展してきたのか、その歴史的な流れをたどります。

1. 代書人制度の起源

1872年(明治5年)に制定された太政官達「司法職務定制」では、証書人・代言人・代書人という3つの職業がありました。
証書人は現在の公証人、代言人は弁護士、そして代書人が現在の司法書士と行政書士に相当します。
当時はまだ制度上の分化が明確ではなく、代書人は裁判書類から一般文書、図面の作成まで広く業務を担っていました。

2. 司法書士と行政書士の分化

明治から大正期にかけて、代書人の業務が徐々に明確化されます。
1919年には「司法代書人法」が制定され、裁判関連業務を担う司法代書人(のちの司法書士)と、それ以外の行政書類を扱う行政代書人(のちの行政書士)が制度上分化しました。
1920年には「代書人取締規則」が内務省令として統一的に制定され、行政手続関連の文書作成を担う専門職として、行政書士の基盤が築かれました。

3. 行政書士法成立への道のり

その後も法整備の試みは続きます。
1938年には東京代書人会などが「行政書士法」制定の請願を提出しますが、国会での審議未了や廃案に終わります。
1948年には東京都行政書士条例が成立し、法制化への機運が再び高まります。そして1951年、ついに第9回国会で「行政書士法」が成立。2月22日に公布され、3月1日に施行され、現在の行政書士制度がスタートしました。

4. 試験制度と公務員特例

行政書士の業務には高度な知識が必要とされるため、制度創設当初から国家試験による資格取得制度が採用されました。
一方で、行政事務に従事した一定の公務員には無試験で資格を与える特例も設けられ、これは現在も残っています。


行政書士法第2条を参考にして、行政書士の資格を得ることができる者として規定されている条件を以下のようにまとめました。

  • 行政書士試験に合格した者。
  • 弁護士、弁理士、公認会計士、税理士のいずれかの資格を有する者。
  • 国または地方公共団体の公務員として行政事務を担当した期間、あるいは行政法人または特定地方独立行政法人の役員または職員として行政事務に相当する事務を担当した期間が通算して17年以上(中卒の場合は20年以上)の者。

行政書士は、こうして法制化を経て、単なる代書人から法的文書作成の専門家へと進化し、社会の法的基盤を支える存在として位置づけられるようになったのです。

(著者:徐)