清水 侑

教育と経済とテクノロジー

今朝の企業ニュースで、ある後輩から「Kahoot!」という
ノルウェーのデジタル学習プラットフォームの話が出ました。

「Kahoot!」では、誰でも簡単にゲーム感覚で教材を作れます。
会社の研修でも使えるようです。

強い会社は「学びの場」
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO70775310X00C21A4TCT000/

日本では、2011年に始まったリクルートの「スタディサプリ」が有料会員157万人と普及しています。
通信教育最大手であるベネッセの「進研ゼミ」の会員数が191万人(2021年4月)なので、
すごい勢いで伸びているのがわかります。

一方、教育費の高騰が社会問題化する中国では、学習塾設立を規制する方針を発表。
小中学生向けの学習塾の新設は認めず、既存の学習塾は非営利団体に登記させるようです。
(ヤバいと言うか、さすがと言うか、日本ではできない)

中国の教育熱は相当らしく、教育費が高騰しています。
家の近所の中華料理店の店長(上海出身)は、
多少誇張してるでしょうが、「中国の都市部の子供は
朝5時から夜10時まで勉強している」と言ってました。

経済発展すれば教育費は上がり、少子化が進みます。
実際、世界各国では、所得水準の上昇に伴い、出生率は低下傾向にあります。
経済面からのドライな言い方ですが、農村では子供は資産(=労働力)の一方、
都市では子供は負債です。中国政府の今回の方針も、教育費高騰を抑え、
少子化に歯止めをかけるのが狙いだと言われています。

学習塾の設立を規制した中国、小中学校の宿題量も制限…狙いは「少子化対策」
https://news.yahoo.co.jp/articles/bd262f19c97e420df3f278067cf847a65a886a61

ところで、「自分たちが知る教育現場と変わってきたな」と
思うかもしれませんが、現在の学校教育のあり方は絶対ではありません。

日本でも、明治時代初期まで画一的な集団教育制度(=学校)はなく、
公家や武家といった少数の特権階級はエリート教育(=現代でいう凄腕家庭教師教育)が普通でした。
それ以外の一般庶民は、ちゃんとした教育を受けない人が大多数でした。

今の感覚でいうと「平等じゃない」と感じるかもしれませんが、
世の中として教育が必要でなかったからです。

江戸時代では農民が人口の8割を占めていました。
生まれた村で生涯暮らす農民に大事だったのは、教育ではなく、
天気と田んぼと年貢と「あいつとこいつは仲が悪い」という噂話です。

逆に、現代は仕事が専門化し、高度化しているので、
高等教育を受けないと仕事に適応できなくなっています。

今後、この傾向は強まるでしょう。

リンダ・グラットンとアンドリュー・スコットは、著書『LIFE SHIT』で、
人類の寿命が伸び(2007年生まれの子どもたちの半数が100年以上生きる)、
労働期間が伸びる結果、労働で必要なスキルが変化し、人生において複数回、
高等教育を受けたり、スキルを獲得し直す「リ・クリエーション」が求められると述べています。

最後に、経済発展は教育費の高騰を招きますが、悪いことばかりではありません。
経済発展で進歩したテクノロジーは教育を安くします。

前述の「スタディサプリ」の高校生向けベーシックプランは、
たった年間2万6,136円でトップレベルの講師の授業が観放題です。
一方、塾や予備校は入学金、授業料、教材費で年間50万円にいたることもあります。
加えて、移動や送り迎えにお金や時間がかかります。

経済発展は教育費を高くする一方、経済発展で進歩したテクノロジーを活用すれば、
教育費をかなり抑える道も残されているってことですね。