鈴木 徹司

「負けない」と「勝つ」の違い

「負けない」=「勝つ」

という誤解が多いように思う。

 
両者の違いについて、

それぞれにおける一般的な戦術から考えてみたい。

 
<負けないための戦術>

他の人と同じような行動をとること。【同調】

負けに繋がるようなミスをしないこと。【リスク回避】

 
<勝つための戦術>

他の人と違う行動をとること。【差別化】

勝利に繋がる行動をすること。【リスクテイク】

 
このように、全く戦術が異なるので、

負けないような行動と勝つための行動は両極端とも言える。

 
 
なぜ、「負けない」=「勝つ」

というような誤解が生じてしまっているのかを考えると、

対戦スポーツから学んでしまっていることに思い当たる。

 
対戦スポーツでは、実社会と違い、特殊な環境がある。

相手のミスが勝利に繋がったり、

負けなければ最後は勝てるということがある。

 
対戦スポーツでは、自らのミスを極力減らし、相手のミスに乗じることは、

勝つための実践的な戦略となりうる。

 
そのため、同等の相手なら、ほとんどのチームがこの戦略をとる。

リスクをとって、賭けに出たりするのは、

そこに付け込まれて負けに繋がることが多いので、

できるだけリスクを回避して、無難な試合運びをする。

相手が先にミスをすれば、そこをついて、勝利に結びつける。

「ミスしたほうが負け」という理屈だ。

 
 
ところが実社会では、このようなことはほとんどない。

つまり、相手がミスしたとしても自分の勝利にはならない。

 
隣の同僚がミスをしても、自分の評価が上がるわけではなく、

同期の一人が大失敗したとしても、自分が出世するわけではない。

もちろん、取引先がミスを犯しても、自分や自社が得することは何もない。

 
 
「負けず嫌い」を自認する人が、社会人になって、

伸び悩む姿をたくさん見てきた。

「勝ちたい」欲求に溢れながら、

学生のときと同じように「負けない戦略」を採ってしまう。

 
「負けてもないけど、勝ってもない」

そんな中途半端なことにならないように、

若手を指導していきたい。