清水 侑

トルコ旅行

先日、トルコとチェコに旅行してきました。

トルコとチェコは互いに大きく異なる文化圏です。
建物、食事、街や人の雰囲気等が違って面白く、とても良い旅になりました。
移動距離は旅の重要な要素だと思います。
せっかくなので、まずトルコ旅行の報告をします。プラハ旅行の報告は後ほど。

〇トルコのアウトライン


・正式名称:トルコ共和国
・面積:約 78 万平方キロメートル(日本の約 2 倍)
・人口: 約 8,500 万人(2022 年統計)
・首都: アンカラ
・民族: トルコ人(約 75%)、クルド人(約 20%)
・言語: トルコ語
・通貨: トルコリラ
・宗教: イスラム教(約 99%)
・政治: 共和制、現大統領はレジェップ・タイイップ・エルドアン
・GDP: 約 1 兆 1,000 億 US ドル(タイの 2 倍、オランダと同程度、日本の 4 分の一)


〇古都イスタンブール

トルコ滞在の三日間はイスタンブールで過ごした。
写真の左手奥はアヤソフィアモスクである。
元々は 6 世紀に建造された大聖堂でギリシア正教の総本山だったが、
15 世紀にこの地を征服したオスマントルコ帝国によってモスクに改修された成り立ちをもつ。
真ん中奥は 17 世紀初頭に建設され世界で最も美しいモスクと評される
スルタンアフメトモスク(通称ブルーモスク)だ。
朝日が差し込む中、歴史ある二つのモスクの脇を路面電車が走る光景は、なんとも美しかった。

イスタンブールは人口 1,500 万人を擁するトルコ最大の都市であり、
ローマ帝国時代後期からアジアとヨーロッパを結ぶ通商の重要拠点として栄えていた。
2018 年開港のイスタンブール国際空港は 7,650 ヘクタールの敷地面積を持つ世界屈指のハブ空港
(成田空港の 7 倍以上)で、単一ターミナルは世界最大級の大きさを誇る。
今回、帰国時にトランスファーをしたイスタンブール国際空港では 7 時間の待ち時間があったのだが、
空港内は A から F の7 つの環状型のエリアに分かれ、一周散策するのに相当な時間がかかったのを覚えている。
各エリアの構造は似通っており、2 軒目のスターバックスを見て同じエリアに戻ってきたかと錯覚するほどだった。

また、イスタンブールは 1,600 年間も首都として存在し続けた世界有数の歴史を持つ都市である。
330 年にコンスタンティノープルとしてローマ帝国の首都となり、
その後は東マ帝国の首都として約 1,000 年間機能する。
1453 年のオスマントルコ帝国によるコンスタンティノープル征服後はイスタンブールと改称され、
オスマントルコ帝国が崩壊する 1923年まで首都であり続けた。
都として栄えた都市の期間で比較すると、パリ(約 1,500 年)、京都(約 1,100 年)、
北京(1,000 年以上)、ロンドン(約 1,000 年)、カイロ(約 1,000 年間)より⾧いということになる。
もちろん、東京(約 400 年)より遥かに⾧い。


〇猫の街

イスタンブールは猫の街と言われている。

写真は、朝の散歩中スルタンアフメット・モスクのゲート前で撮った。
イスタンブールでは地域住民に可愛がられ「地域猫」が多い。
実際、街中の地域猫は人間に慣れている。日本の野良猫のように人間を避けるようなことはせず、
路面電車停留所のベンチに座っていたり、階段で昼寝をしていたりしている。
餌を沢山もらっているのか、やせ細った地域猫は見ていない。毛並みもいい。

トルコでは、動物愛護の動きが法的に強化されている。
元々、オスマントルコ帝国の時代から猫は街の一部として受け入れられていた。
イスラム教で猫は清潔な動物とされ、預言者ムハマドも猫を大切にしていたという伝説がある。
猫は都市やモスクで保護され、地元住民によって世話をされてきたという。
1950 年から 1970 年代には都市化の進行に伴って動物福祉が軽視されるようになり、
野良動物の公的処分が多く行われたこともあったが、
1980 年代から 1990 年代にかけて逆に動物愛護団体等が動物福祉の改善を政府に求めるようになっていく。
反動しながら進むという人間社会の一面を思い知らされる。

そして、2004 年の動物愛護法の制定により、自治体に野良猫や野良犬の保護が義務付けられた。
2021 年に制定された動物の権利法では、「動物は物ではなく生命のある存在」として法的に明文化されている。
(日本では、動物愛護法により動物は「特別な配慮がされる存在」とされる一方、
「生命のある存在」としては明文化されていない。また、民法では財産権の対象の「物」と定義されている。)
これにより、動物の虐待や殺害が厳罰化され最大 4 年の懲役刑が科されるようになったり、
ペットショップは飼い主が決まるまで自然な環境での動物飼育が義務付けられ(ケージに閉じ込めない)、
実店舗での動物販売禁止されたりするようになった。


〇トルコ料理

トルコの料理は美味しかった。
写真はイスカンダルケバブといって、刻んだ平パンの上に牛肉、トマトソース、バター、
ヨーグルトをかけるものだ。
この料理を食べたレストランはホテルの隣にあり、滞在中に二回訪れた。
二回目の訪問後の帰り際には、店⾧らしき男性が何故か熱い握手を求めてくれた。
圧倒的な主観に過ぎないが、トルコの男性は爽やかで男らしいが雑ではないナイスガイが多い。

ちなみに、このレストランはホテル滞在者には料金が 20%引きになる。
金額は忘れたが、20%引きは馬鹿にならない。
現在トルコの物価は非常に高くなっているからだ。
2023 年、トルコの消費者物価上昇率は 64.8%を記録した。
日本では 3%上がっただけで「物価高」と騒がれたが、
トルコで生活している人にとってその影響の大きさは比較にならない。


〇コーヒーショップ

写真は滞在したホテル近くの人気のコーヒーショップ。
ピスタチオ入りのコーヒーが有名で他の観光客が作り方を聞いていたが、
店員さんは「企業秘密だよ」と答えていた。
写真右のボックスで店員さんが独特な方法(熱した砂で煮立たせる)で
コーヒーを淹れる様子を動画で撮っていると、「やってみる?」と淹れ方を教えてもらった。


〇ハマム

トルコ式の伝統的な蒸し風呂であるハマムを体験した。
ハマムは、古代ローマの公衆浴場に起源をもつとされる。
入浴前後に休む個室の「冷たい部屋」、中温で体を慣らす「温かい部屋」、
蒸気が充満して体の洗浄やマッサージを受ける「熱い部屋」で構成されている。
今回のハマム「Cagaloglu Hamam」は、300 年前にオスマントルコ帝国によって
図書館建設費用を拠出するために建設された。
大理石の床、荘厳なドーム型の天井、弦楽器の生演奏等、ラグジュアリーな空間だった。

ネットの口コミ通り、屈強な男性が担当してくれた。


◯日本人妻と離婚したトルコ人男性

旅の醍醐味は人との出会いという。
今回の旅も面白い人と出会った。写真は、シーシャバーのスタッフのトルコ人男性である。
ネットで出会った日本人女性と結婚して 10 年間日本に住んでいたが、現在は離婚している。
元妻の実家は群馬県藤岡市で創業 80 年の老舗和菓子屋を営み、当時はその二階に住んでいたらしい。

日本語もペラペラで 30 分以上(彼が)話していたのだが、イスタンブールという巨大都市出身の彼は、
「グンマ、タカサキ(高崎市)は OK、マエバシ(前橋市)も OK。でもグンマフジオカ(藤岡市)、何もない。
グンマフジオカ」とグンマフジオカの恨み節を連呼していた。

だいぶマシンガントークだった。

曰く、「藤岡市でトルコ料理店を開いたが、閉鎖的な地域のため馴染みのないトルコ料理の店に客が来なかった」
「スタバまで 20 キロ、マックまで 10 キロ」とのこと。

元奥さん(彼は度々、「アクマちゃん」と呼んでいた)との離婚手続きは大変だったようで、
日本の離婚手続きは書面で簡単だったが、トルコではアクマちゃんが非協力的で手間と時間を要したらしい。

まさか、イスタンブールに来て群馬県の老舗和菓子店二階に住んでいたトルコ人と話すことになるとは思わなかった。
ここのシーシャも高かったが、面白い話を聞かせてもらったので良かったと思っている。