不動産投資顧問業とは
不動産投資顧問業(ふどうさんとうしこもんぎょう)とは、不動産投資顧問業登録規程によって定められた、不動産投資に関する投資一任業務または投資助言業務を営む者に関する、任意の登録制度です。
主に、不動産投資に関する助言やアドバイス、取引代行などを行います。
不動産投資顧問業登録は、投資運用業登録のように、事業を行う前に事前に登録を済ませておかなければならないというものではありません。
不動産投資のアセットマネージャーとして業務を行うことは、登録せずとも可能です。
しかし、顧客の資産を預かるという観点からは、登録した方が信頼性が高まります。
登録を行いたい場合には、国土交通省への申請が必要になります。
不動産投資顧問業の種別
不動産投資顧問業は行う業務により下記の2つに分かれます。
➀ 一般不動産投資顧問業 | 顧客に対して不動産の価値または不動産の価値の分析に基づく投資判断に関して助言を行う業務(投資助言業務) |
② 総合不動産投資顧問業 | 顧客から投資判断の全部または一部を一任され、顧客のために投資判断に基づき不動産取引等を行う業務や一任された業務を投資信託委託会社や資産運用会社へ再委任する業務(投資一任業務)及び投資助言業務 |
一般不動産投資顧問業が投資家に対してアドバイスのみを行うのに対し、総合不動産投資顧問業は、投資家から資産を預かり不動産取引を行い運用を行うことをいいます。
それぞれ詳しく解説します。
➀一般不動産投資顧問業
一般不動産投資顧問業とは、顧客に対して不動産の価値または不動産の価値の分析に基づく投資判断に関して助言を行う業務(投資助言業務)を指します。
あくまで助言であるため、投資の最終判断は顧客となります。
一般不動産投資顧問業の主な登録要件
一般不動産投資顧問業登録の申請を行うためには、下記の要件に該当しておく必要があります。
⑴人・組織要件
重要な使用人(個人の場合は、登録申請者及び重要な使用人)が下記知識・経験を満たしている必要があります。
①知識についての審査基準
- 不動産コンサルティングマスター/ビル経営管理士/不動産証券化協会認定マスター/不動産鑑定士いずれかの資格者
- 不動産に係る業務に携わった経験のある弁護士又は公認会計士 等
②経験
- 1億円以上の不動産に関する投資判断、助言、売買、貸借、管理等の業務経験を有していること(登録申請日の前10年以内に2年以上の期間)
- 重要な使用人(個人の場合は、登録申請者)が他の法人等の常務に従事していないこと
⑵財産要件
直近の決算において債務超過になっていないこと
②総合不動産投資業
顧客から投資判断の全部または一部を一任され、顧客のために投資判断に基づき不動産取引等を行う業務や、一任された業務を投資信託委託会社や資産運用会社へ再委任する業務(投資一任業務)、および投資助言業務をいいます。
投資家から資産を預かり、具体的に不動産取引によって資産運用を行います。
総合不動産投資顧問業の主な登録要件
総合不動産投資顧問業登録の申請を行うためには、下記の要件に該当しておく必要があります。
⑴会社要件
- 宅地建物取引業の免許取得会社であること
- 株式会社であること
⑵人・組織要件
・役員又は重要な使用人のうちに「判断業務統括者」を置き、当該判断業務統括者が下記知識・経験を満たしていること
①知識についての審査基準
・不動産コンサルティングマスター/ビル経営管理士/不動産証券化協会認定マスター/不動産鑑定士の資格者
・不動産に係る業務に携わった経験のある弁護士又は公認会計士 等
②経験
・数十億円以上の不動産に関する投資判断、助言、売買、貸借、管理等の業務経験を有していること
(登録申請日の前10年以内に2年以上の期間)
・代表者及び重要な使用人(個人の場合は、登録申請者)が他の法人等の常務に従事していないこと
・管理部門(法令遵守部門)の責任者が定められていること
・不動産投資事業(不動産特定共同事業を除く)部門の担当者及びその責任者と、投資一任業務に係る運用部門の担当者及びその責任者が兼任していないこと顧客からの資産運用状況の照会に、短時間に回答できる体制となっていること
⑶財産要件
- 決算が良好であること(今後3年間の収支見込が黒字)
- 資本金5,000万円以上
- 純資産額が、今後3年間5,000円を下回らない水準に維持されていること
⑶その他
下記書類の提出が必要です。
- 投資一任業務に関する管理体制の整備状況を記載した書類
- 投資一任業務に関する苦情処理体制並びに過去2年間に寄せられた苦情及びその処理内容を記載した書面
登録先と必要期間
不動産投資顧問業の登録は、国土交通省へ行います。
管轄するのは国土交通省 不動産・建設経済局 不動産市場整備課投資顧問業係です。
申請において登録手数料などの手数料は必要ありません。
登録までにかかる期間は、国土交通省に書類が受理されてから1ヶ月から3ヶ月ほどとされています。
申請書類の準備自体には、少なくとも2週間程度は必要になるため、予定している事業開始の時期から逆算して準備を進めていく必要があります。
なお、総合不動産投資顧問業は、本申請前に事前審査があります。(審査期間:約6ヶ月)
登録後の手続き
不動産投資顧問業の登録を受けた後も、毎年の事業報告書、登録内容変更の届出、更新手続きが必要になります。
➀ 更新登録 | 登録を受けてから5年ごとに更新手続を行う必要があります |
② 登録事項変更届出 | 役員など登録事項に変更があった場合は速やかに届出を行わなければなりません |
③事業報告書提出 | 営業年度が終了後3ヶ月以内に提出する必要があります |
➀更新登録申請
不動産投資顧問業登録は登録されてからの有効期間が5年間と定められており、有効期限後も引続き事業を継続する場合は、有効期限の30日前までに更新登録の申請を行う必要があります。
更新登録は、新規登録時の書類をほぼ同じだけの書類を用意する必要があります。
②登録事項変更届出
不動産投資顧問業に登録をしている業者は、役員等の登録事項に変更があった場合、期限内に変更の届出を行わなければなりません。
変更の届出を行う必要のある登録事項は下記になります。
主な変更事項 | 期日 |
・商号、名称 ・役員 ・重要な使用人 ・営業所の名称、所在地 ・資本金 ・免許等内容変更 ・役員の兼職状況 | 14日以内 |
③事業報告書提出
不動産投資顧問業に登録をしている業者は、営業年度の終了後3ヶ月以内に事業報告書を提出する必要があります。